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 先週は残業続きだったが、今週は定時であがれるようになっていた。こうして緩急がないと、やっとれんわーってなるからな。

 社員も生かさず殺さずで飼いならされるのがいいのだろう……。


 ひとまず元気があるのでステーション建造を進めていく。装甲部分は出来上がったので、次は内装部分だ。

 内装といっても本当のステーションにあるような公園などの憩いスペースを作る必要はない。基本的に自分が使用するだけなのでロビーなども必要ない。

 要るのは格納庫とパーソナルスペースくらいか。今、ステーションで利用している最低限の機能に抑えて、完成を早めていきたい。


 内装の最初は動力炉からエネルギーを供給するための配線工事だ。といってハンダで線を溶接するような事はなく、装甲パネルのようにコンテナに梱包されたパーツを設計図通りに並べていくお仕事だ。

 ステーション上部の搬入口ハッチから落ちてくるパーツを作業艇で受け止め、所定の場所へと収めていく。


「てってて、てってて、てってて、てってて……」


 シーナはロシア民謡を口ずさみながら、コンテナブロックを落としてくる。それを受け取りコンテナをパージ、中身を取り出す。ステーションのパーツは特に歪ということもなく、立方体なのでそれを設計図通りにはめ込んでいくだけだ。

 ただ配線の関係で向きは合わせないといけないので、くるくると回転させる必要はあった。

 こうなると落ち物パズル感がより強くなる。


 くるくる、ぽん。

 くるくる、ぽん。


「あ、マスター。新しい称号が付きましたよ。『伝説の配管工』です」

「マンマミーア……配管じゃなくて、配線みたいだけどな」

「赤い作業着が届いてますよ。あと極秘情報として、オバケ屋敷を掃除すると緑の作業着が手に入ります」

「このゲームのどこにオバケ屋敷があるんだよ……幽霊船ゴーストシップならありうるか?」

「中には寄生型生物兵器が眠ってますよ」

「アンドロイドの腹から飛び出してくる奴な」

「やはり人気は2ですかね」


 などという事がありつつ、1区画を作製。まだまだ先は長いが、最初に作ったのは生産エリア。工作機械を並べて製造を行っていくための区画だ。

 あとはBJからいただいってきた大きなコアを繋げば、ここで生産が行えるようになる。輸送時間が省けるので、効率は上がるはずだ。

 大きなコアは他次元生物を引き寄せてしまうが、ステーションには妨害装置があるので、その周辺宙域であれば大丈夫だろう。

 工作機械を稼働させつつ一日を終える。




 それから週末にかけてブロックパズルをする感覚で内装を整えていき、金曜日には粗方の建造を終えることができた。

 ファルコンやカクタスなどの各戦闘機が格納庫に収まっている。今までの格納庫では出入り口が一箇所しかなく、カタパルトも一基だったので順番に出撃するしかなかったが、自分専用のステーションとなった事で、それぞれの格納庫から専用ハッチで外へと飛び出せるようになっている。


「そして、本題はここからだな」

「機動用バーニアは作製済みですよ」

「じゃあ、ちゃっちゃと付けるか」


 球体の作業用機械に乗り込むと、ステーションの外壁へと飛び出す。ステーションは初期星系で作られた後、新星系へとゲートをくぐって運ばれる。

 ステーション自体にも移動能力が備わっていた。

 なのでその能力を高めるように機動力アップのレア鉱石を使用した機動用バーニアを作製。それをステーションへと接続し、コアからのエネルギーラインを構築する。


「うう〜ん、まだコア出力が足りないか」


 BJの鳥籠で使われていたコアだけだとステーション機能だけなら問題はないが、移動を考えると少し足りない。


「そこはマンタで補っとくしかないか」


 要塞砲の運用からマンタは輸送船というよりは、補助電源的な役割になりつつあるな。ただステーションを小惑星帯まで運んだ後は、採掘にも頑張ってもらう予定だ。まだまだ活用の機会はあるだろう。




 ステーションの外観は分厚い小判というか縦に短めのコンテナ船の様な楕円形になっている。格納庫からリフトでステーション上部へとせり出し、甲板に敷いたリニアカタパルトで打ち出せるようにした。

 これで一機ずつ発進させていた時間をかなり短縮できる。


「じゃあ第3惑星への処女航海と行こうか」

「アイアイサー、電磁アンカー解除。エンジン始動……」


 シーナがそれっぽい手順を並べながら発進準備を整えていく。実際のところ、コアからのエネルギーがバーニアへと伝わって、稼働可能な状態にするのに多少の時間が掛かる感じだ。


 その間に俺は周囲に展開していた暗幕を回収。恒星からの光にさらされたステーションを改めて確認する。


「まあステーションと呼ぶとややこしいから、もう空母と呼んでもいいか」


 ステルス塗料を塗り込んだ外装は光を反射しにくい黒色で、宇宙空間の中では視覚的にも発見しづらいはず。

 ただ他次元生物はコアの発する何かを嗅ぎとって近づいてくるみたいなので、これらのステルス機能は役に立たない。

 ステーションの持つジャマーの簡易版が搭載されているが、こいつもエネルギーを食うので移動中には使えなくなってしまう。


「この辺はゲーム的なバランスかもしれんがね」

「禁則事項です」


 空母の中へと戻った俺は、艦橋となる甲板上部の操舵室へと移動する。宇宙が見えるように視界を確保した10m四方の部屋に、8人ほど座れる椅子を配置。それぞれ役割ごとに、射撃管制席、操舵席、レーダー席や機関制御席など分けてある。

 そして中央の一段高い席には全機能を簡易に操作できるキャプテンシートを用意した。一人で操作可能とするためのものだが、それぞれに細かい部分までは調整できず大雑把なものになっている。


「ま、半分以上が自動操縦だがな」

「裏で私が頑張ってるんですよ」

「アンドロイドアバターを用意したら艦橋クルーがいるように振る舞えるのか?」

「さすがに処理能力が超えますね。グラフィックの表示は処理が重いので」


 かなり進んだ技術を盛り込んだこのゲームだが、普通に客が買える値段設定にするため、そこまでハイエンドなスペックを持っているわけではない。

 精密なアバターでの表示となると、サポートシステム一人でいっぱいいっぱいなのだろう。

 ステーションの共有スペースでも人がふえてくれば、テクスチャの張られていない影人間表示になっていくしな。


「ま、そこはしゃーないな。とりま、今は航海に出るぜ」

「アイアイサー」


 操縦自体は普段の戦闘機とあまり変わらない。左手の出力操作スロットルと、右手の操舵スティックで行う。ただその巨体なので、レスポンスはかなり重たく舵を切っても即座に回避などはできない。

 ちなみに武装も間に合ってないので、戦闘力は皆無。体当たりすればその質量からかなりのダメージとはなるだろうが、そんなに機動力もないので逃げるのは簡単だろう。

 乱戦に持ち込んだとしても、動く壁程度の代物でしかない。


「とはいえ、レイドにおいてその場で補給が行えるのは大きなメリットのはずだ」


 デフシンは粒子砲が使えない星系なので、武器は実体弾のみ。最大のネックは装弾数の制限による継戦能力になってくる。粒子砲はコアが無事なら弾切れはないからな。

 そして実体弾はそれ自体に重量があるので、弾切れを嫌って目一杯積んでしまうと、機動力が落ちてしまう。

 そうしたマイナス要素をステーションで補えるのはかなりのアドバンテージになるはずだ。


「リスポーンエリアとして使えたりするのかな?」

「同じ連合であれば可能です」

「うう〜ん、一時的にFoodsにお邪魔するというのもありかもしれないが、ポリシーに反するしなぁ」

「どこまでもぼっち……」

「そうじゃなくて、利害でチームに入るって感じがな。気心が知れて、仲良くなって自然というのが理想なんだよ」

「理想を追い求めて、孤高という名のぼっちというわけですね」


 ……否定はできんが。形から始めるってのもあるのは分かるが、やっぱり人間関係ってしんどいしな。程よい距離を保てるほうが楽だ。


「気を取り直して、発進!」

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― 新着の感想 ―
[一言]  それぞれの専用ハッチから発進・・・。某トレイシーさんち宜しく各機体に番号をマーキングしとかんと。
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