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「おはようございます、マスター。格納庫がいっぱいで生産は停止中です」

「やっぱりかー」


 昨日、夕飯後にログインしようと思っていたのだが、平日の残業疲れかそのまま寝落ちしてしまい、気づいたら朝になってしまっていた。

 結局、早朝ログインする形になっている。


「それとステーション管理部から返答がありました。該当宙域の使用許可はおりましたが、色々と注意があります」


 シーナがタブレットにステーション管理部からの通達を表示して見せてくれた。


「海賊等の襲撃により戦闘が行われた場合、破損等があっても当局は補填しない……なんかフラグが立ってそうな文言だな」


 基本的にステーションの周辺には他次元生物が嫌がる電磁波的な物が発生しており、安全が確保されている。例外的に超大型の生物だとそれを押し切って特攻してくる事はある。まあ、レイドのクジラとかだからイベントでもない限りないと思いたい。

 で、海賊もステーションの近くは、ステーションからの砲撃があったり緊急任務でプレイヤーに割のいい任務が発令されて撃破させるので、近寄って来ようという海賊はいないはず。


 ただ万が一、宙域で戦闘までいかなくても接近する海賊船がいたら、ステーションからの砲撃はありえる訳で、それが建造中の個人ステーションに命中した日には……おしゃかになるだろう。


「そうならない事を祈るしかない。あとはこの使用料か……こっちの懐を調べたかのような設定だな」

「ぴひゅ〜♪」


 音にならない口笛を吹いているシーナ。ある程度こちらの懐を探られたって事か。1週間のレンタルでちょうど持っている資金コストが底をつくような料金設定になっていた。


「ま、建造できれば稼ぎは跳ね上がるし、絞り取られても取り戻せるだろ。じゃあ早速、使用許可を取って建造開始だ」

「了解です、マスター」




 まずはプレイヤーの視線を遮るための天幕設置だ。まあ、装置というほどのものではなく、大きな黒い布で一定のエリアを囲う程度。後はところどころに星の代わりにライトがつくようにした。

 これで遠目には宇宙が広がっている様にしか見えないだろう。近づいたらモロバレだが、格納庫への発着では通らない場所。わざわざここを目指さなければ近づく事はない。予定の1週間はバレずに過ごしたいものだ。


 俺が天幕で宙域を確保する間、シーナにはカクタスでコンテナを運んでもらう。大量のミサイルを搭載できるミサイル機のコアパワーは輸送船にも劣らない。数珠つなぎになったコンテナを運搬してもらっている。

 ただパワーはあっても機動力はないので、多少時間は掛かってしまう。


 天幕を展開し終えた俺は、蜃気楼システムの宇宙空間に映像を映し出す技術を使って、これから組み立てるステーションの設計図を表示した。

 後はこれに合わせてコンテナを配置し、それぞれの部品を連結していけばステーションになっていくはずだ。


「マスター、1便目、来ましたよ」

「おお、了解。所定の座標に置いてくれ」


 カクタス便の到着を待って、コンテナの1つを展開すると、中には球体に2本のマニュピレーターが生えて、上部には砲身の様に伸びた溶接バーナーを持った作業機械が入っていた。

 それに乗り換えてシーナによって設計図通りに並べられたコンテナへと近づいてく。マニュピレーターを使ってコンテナの外装をパージすれば、中にはステーションの部品が入っている。


 最初に作るのは装甲部分だ。大枠ができてしまえば、多少の攻撃なら弾き返せる。仮に戦闘になったとしても、盾として使える予定。

 巨大な合板を並べて、それぞれを溶接でくっつけていく。こうなるとプラモデルを作っているのと変わらない。

 ただパーツ数が多くて、大きいので全体像は見えてこない。黙々と装甲パネルを並べて溶接する作業を続けていく。まあ、こういう単純作業は好きなので苦にはならないのだが。




「マスター、生産できている分はこれが最後です」

「おお、サンキュー。ってもうこんな時間か」


 気づけばかれこれ5時間ほど作業に没頭していた。それを認識した途端、どんよりと頭が重くなる。


「昼飯を食べてくるかな。じゃあコンテナ並べて、生産の再開を頼む」

「了解です、マスター。ごゆっくり〜」


 ゲームからログアウトして、昼食にする。それと並行して掲示板のチェックを行うと、キーマさんが赤外線探知ミサイルを公表した情報が上がっていた。

 早速、作って検証を始めているようだ。

 攻撃力アップ武器が出回っていたおかげで、パーツ作製用工作機械も普及していたのは大きいかもしれない。


 やはり電波型に比べると誤認識が多く、爆発などで目標を見失うなどがあるらしい。ただ他次元生物も熱源追尾できるようなので、弱点を把握していればレイドでの使用に問題はないという結論が出ていた。

 今は誤認識を抑える為の工夫が議論されているようだ。


 しかし掲示板を眺めるうちに睡魔に襲われ、うたた寝をしてしまっていた。




「遅ようございます、マスター」

「いやぁ、寝過ごした……って、コンテナ一杯!?」

「マスターが来ないから貯まっちゃいましたよ。キリキリ働いてください」

「あいあい……」


 シーナとしては管理の届かない宙域へは勝手に運ぶことができないので、コンテナで埋まっていく格納庫にひやひやしていたらしい。

 まあサポートシステムが勝手に運んで、事故で失いましたとかになると、プレイヤーとしては納得できないから仕方ない。


 まあ、こんなにコンテナが貯まるのは装甲を作り切るまでの話だから、この週末でなんとか片をつけないとな。




「そういえば、プレイヤーに見つかるとかはないよな?」

「はい、レーダーでは接近する機影もありましたが、自動操縦でステーションに入っていく機体ばかりでした」

「休日が大丈夫なら、人の減る平日も大丈夫と思いたい……まあ、バレたらバレたで仕方ないけど」


 シーナの操るカクタスと共に現場へと到着。立体パズルの様なステーション建築作業を進めていく。

 装甲の半分くらいは埋まってきたので、おぼろげながら全体像も見えてきている。今の格納庫より一回り大きいサイズで設計したが、実際のステーションよりは1/100程度だろうか。それでも独り占めできる事を考えれば十分なサイズだ。


「今日中に装甲を貼り終えるのが理想だが……やっていくしかないな」


 繰り返し行ってきた事で、効率化も進んできている。マニュピレーターで寄せて溶接しての作業がスムーズにできていた。溶接が終わりかけたところで、シーナが次のコンテナをパージしてすぐに溶接に移れるように準備していく。

 溶接に掛かる時間も体感できるようになり、細かな操船は元々培ったものがある。特にβ時代に採掘を繰り返していた時の感触を思い出してきた。


 黙々と作業……とはいかず、シーナのくだらないボケにツッコミながら、雑談をしながら作業を進めていくと、なんとか日曜日の間に装甲を張り終える事ができた。


「ひとまずこれで生半可な攻撃、流れ弾程度じゃ壊れないと思うが……」


 ステーションを覆うほどのバリアは維持にエネルギーが掛かりすぎるので、基本的には装甲の厚さで攻撃を防ぐ。

 その他、アクティブシールドの様な移動式のエネルギーシールドを展開する方法があるようだ。


「内装に関しては平日に少しずつ進めて、週末に完成できればレイドに間に合うかな」


 俺は脳裏で計画を立てながらログアウトした。

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