短編でβでの様子を上げてましたが、ここからでも問題ない……はず。
短編の方も見ていただければ幸いですが。
Spaceship in Tempest Galaxy。
宇宙開発が徐々に発展しつつあった地球に、突如飛来した謎の物体。それは火星軌道上辺りで発見され、そのまま地球に接近。観測された姿は大きな傘から無数の触腕が伸びた、まさにクラゲ。その全長は10mほど。
そのまま仮称宇宙クラゲは、大気圏に突入。燃え尽きると思われたが、そのままの姿を保ったまま太平洋へと落下した。
公海上へ落下した事もあり、アメリカをはじめとする多数の国が殺到。その存在は南極条約に近い扱いとされ、多国籍の調査チームで解析される事となった。
その生態を調べるべく解剖を試みたが、その体はメスはもちろん、チェーンソーですら傷つける事ができず、バーナーやウォーターカッターなどでも切り開く事ができなかった。
らちがあかないと意を決した研究者の一人が、表面を切り開く事なく、体内を調べるべく口から中へと侵入していった。
体表と同じ様に体内も傷つける事はできなかったが、その中で捕食されたらしい物体を確保して持ち出す。
それが人類を新たな次元へと押し上げる物質となった。それは圧力をかけると電子を放出したのだ。
更に詳しく見るために電子顕微鏡で観察しながら圧力をかけると、何もないはずの箇所から電子が放出される。周囲の物質がイオン化されたわけでもなく、帯電していたわけでもないのに、どこからともなく放出される電子。
地球のエネルギー保存の法則から逸脱した物質を調査するうちに放出される電子量が、想像を越えて継続する事も分かってくる。
スマホのバッテリー程度の欠片で、電気自動車が動かせるほどの電圧が確保でき、さらには500km走行しても電圧降下が見られない。どれくらいの量の電力が蓄えられているのか、簡単には計測できなかった。
そんな謎の詰まった素材ではあったが、使用するのは簡単だった。圧力量によって放出される電力が変わる。それだけで利用するには不自由しない。
やがて様々な分野で使用が開始された。
特に乗り物の分野でその能力が発揮される。今までの蓄電池では重すぎたり、電力量が足りなかったりした問題が一気に解消されていく。
ただ宇宙クラゲから採取できた量だけで地球の需要を満たす事はできない。しかし、そうした物質が存在するという事実が、宇宙進出を後押しした。
やがて小惑星帯の中に、同じような宇宙クラゲの死骸が発見されて、エネルギー塊が採取されるようになっていく。
そうしたサンプルが増えるうちにエネルギー塊の研究も進み、これが3次元にとどまる物質ではないと結論付けられた。
3次元よりもっと高次まで存在する事で、3次元でエネルギーを取り出しても、高次から補填されるので一向に内包するエネルギーが減る気配を見せなかったのだ。
しかし、それも無限という訳ではなかった。
大量の電力を引き出すと限界を迎えて、電子を発する事は無くなる。小惑星帯にある宇宙クラゲが無くなると、手にした技術が使えなくなってしまう。その焦りから人類の目はどんどん外宇宙へと向いていき、宇宙での活動能力も増していく。
元々宇宙クラゲは地球に落下してきたのだ。生きたままのそれと出会うのは、活動範囲を広げていけば必然だった。
小惑星からクラゲを回収していた宇宙船が襲われた。長い触腕で絡め取られ、エンジン、動力部を食われてしまう。宇宙クラゲは、エネルギー塊、多次元化合物のみを狙って襲って来るようだった。
しかし、動力源を失えば自力航行はできなくなるし、生命維持も難しい。助けにいけば更に被害を増やす。
何とか撃退すべく兵器の開発も進められるようになった。
多次元化合物を利用することで、かつては夢の兵器だったレーザー兵器や粒子砲、レールガンといった武装が実用化され、宇宙クラゲの死骸を利用して装甲の強化なども進み、宇宙でも戦えるようになっていく。
そうして小惑星帯に居座ったクラゲに攻撃して、撃退することに成功した。しかし、そこでまた人類は新たな可能性に気付かされる。
傷つけられた宇宙クラゲは、何もないはずの空間を開いて、その中へと逃げ去ったのだ。それが高次元を用いた移動法である。
映像資料と、エネルギー塊の研究から高次元へのアクセスを解析し、光速を越えて宇宙を移動する手段を手に入れるに至った。
ただ宇宙クラゲの様に自由に開け閉めする事はできず、特定区間を繋ぐに留まっている。しかし、今まで全く方法がなかった他の星系にも進出できるようになった。
新たな星系に拠点となるステーションを建設し、そこを軸に周囲の惑星を開拓していく、宇宙開拓時代の幕開けである。
こうして作られた開拓ステーションの一つに、一攫千金を目指してまた新たに降り立つ者がいた。
「長いな。開拓ステーションからプレイが開始される部分だけでいいだろ」
「ええ〜」
開発主任の大隅の一声により、細々と作られた年表は見たい人だけが参照できるヘルプの奥底にしまわれ、ほとんどのプレイヤーはその内容を知ることはなかった……。