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エレベーター・エスケープ

作者: しゃん
掲載日:2020/01/24



午後12時30分。ランチへ向かうサラリーマンの波がおさまる時間だ。

いつもこの時間を見計らってエレベーターに乗る。


一人でいるにはちょっと広めな定員15名のエレベーター。長辺が成人女性の歩幅3歩分、といったところ。

いや、もうちょっとかな。その日の服装でも違うかもしれない。


私服OKな今の職場は逆に何を着ればいいのかわからなくなる。

波風立たずそれでいて地味過ぎない服を選ぶのは案外大変だ。これならスーツだった頃の方が良かったかも、と思いながら個性を消されるのもちょっと辛い。



お洒落なスーツを買えるほど給料も高くなかったからなおさらだ。給料は家賃と奨学金で半分くらいなくなる。

そんな夢のないことばかり考えてしまっている、ということに気づかせてくれるのはこの空間だ。



複数のオフィスが入ったこのオフィスビルはどこもかしこもサラリーマン、ウーマンばかりでなんだか息苦しい。

トイレでは怪しい噂話、デスクでは言葉にならない嫌味な目線が飛び交う。

PCを開けば、溢れんばかりのメールが溜まっている。




仕事以外にすることがない、それが職場だ、とは思いつつもここにいるべきではない。ここよりもっといい居場所があるはずだ、っとここ最近頭や胃が叫んでいる。


職場でこうやって我に返れるのは誰もいないこのエレベーターだけだ。



14階から1階まで降りるのに、途中どこも止まらなければ1分もかからないその僅かな時間だげがほっとできる。



乗った瞬間に誰もいないと、それまでどこに入っていたんだと言わんばかりの空気が口から溢れる。そして勢いよく吸う。


毎回誰にも合わないようにと祈りながら乗る。


その祈りだけは毎回叶う。

だからきっと神様はいるかも、とそのときだけ願う。


でも今日は違った。

5階から4階の間あたりで、身体が揺れた、と同時にジェットコースターにでも乗っているかのようなあの内臓が浮く感覚に陥る。

その刹那、頭と腰に衝撃が走る。

視界も変わった。


腰を抑えながらなんとか壁によりかかりながら立った。


どうやら止まってしまったらしい。






































まさか神様、ここまでのことをしてくれるなんて。

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