表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/290

ジェンside-8. 異世界152~182日目 初めての体験

 このあともなぜか宿泊は一緒の部屋にさせられたけれど、途中から同室でいることが当たり前になって気にならなくなってきた。着替えの時などはイチが気を遣って部屋を出てくれるし、夜に手を出してくることもない。寝る前に二人で色々と話すのは楽しかったわ。



 最初はあまり会話しなかったフェルナーさんとも打ち解けてきて色々と話をするようになった。いろいろな冒険の話は地球ではかなり昔の話や物語の中でしかなかったことなのでとても面白かった。


「なあ、俺の体験談なんか聞いても面白いのか?」


 数日たった頃にフェルナーさんから言われて驚いた。


「普通はあまり聞けない話だから、とても楽しかったわよ。」


「そうなのか?だって、こんな話よりはおいしい店とか服とかの話の方がいいんじゃないのか?」


 どうやら女性と話をするときは女性が興味のありそうな話を頑張って話そうとしていたみたい。


「自分の話せることを話してそれを受け入れてくれる人じゃないとちゃんと付き合えないんじゃないの?無理して話を合わせても結局は話がおもしろくなくなるでしょ?もちろんおいしいお店とかいう話もたまには必要だけど、それは知っている方が話せばいいだけだし、それを聞くだけでもいいと思うわよ。」


 そういうとかなり衝撃を受けていたみたいだった。


「ジェンのその相手がジュンイチなんだな。」


 そう言われてちょっと焦ってしまった。別にそういう関係じゃないわよ・・・いまは・・・。



 アーマトの町はオカニウムよりも大きな町だった。イチが以前も泊まっていた宿に泊まることになったけれど、ここでは部屋は別々に泊まることにしたようだ。今まではこれが普通だったんだけれど、なんか寂しくなったのよね。

 アーマトの町でイチの知り合いにも会ったんだけれど、みんなから「嫁さんか?」とからかわれていた。普通に否定しているんだけど、私と結婚するってつもりはないのかなあ?

 ユータとカナという幼なじみのパーティーにも会っていろいろと情報交換を行った。翌日から近くの森で狩りをしたり、色々と買い物をしたりした。




 ここからサクラまでは蠍の尾という女性だけのパーティーと一緒に護衛業務となった。どうも男性にはかなり苦手意識があるみたいで、最初はかなり警戒されていたんだけれど、途中からは普通に接してくれるようになった。今回は山越えの時に野営もあるというので私たちも交代で見張りをすることにした。



 その後、盗賊に襲われたんだけど、イチが万が一を考えて準備していた催涙スプレーのようなものがうまくはまってこちらに被害もなく撃退できた。でも初めてこの手で人を殺すことになった。もちろん今までも覚悟はしていたつもりだったけれど、やはり実際に人を殺すというのは精神的にダメージがあった。

 なかなか眠れなかったこともあり、イチとずっと話していると落ち着いていった。きっともう大丈夫だろう。やらなければやられる。そういう世界だと言うことを改めて認識することになった。



 この襲撃の後から蠍の尾のメンバーともかなり打ち解けてきて、見張りの時にもいろいろと話しかけてくるようになった。イチのことを聞かれたんだけど、私の気持ちがまだ分からないし、今のままで良いと思っていると伝えると、「がんばって!!」と声をかけられた。


 盗賊退治の報酬はかなりの額で驚いた。蠍の尾のメンバーと話した結果、報奨金はすべて私たちがもらうことになったみたい。今回の討伐の立役者はイチだったことと、手に入れた装備の価格を考えても問題ないようだった。

 イチは無意識にやっているみたいだけど、蠍の尾のメンバーの信頼は格段に得られたと思う。信頼というとても大事なものを意識せずに手に入れているのはすごいことだよね。



 サクラについてからフードコートのようなところを視察することになった。イチと一緒にいろいろと意見を言ったんだけど、お礼といって15万ドールもらってかなり驚いた。

 打算もなく、知っていることを教えているイチにコーランさんもお返しをしたくなったのだろう。もちろん、今後もいろいろと情報が欲しいという打算もあったと思うけどね。


 インスタントラーメンの試作品も食べさせてもらったが、かなりいい感じに仕上がっていた。来月からもう販売し始めるらしい。販売方法についてもモニター販売や新しい商品の開発について色々と提案したので、きっと結構な利益が出るだろう。


 こっちの世界ではまだ一般的でない商売の知識を先駆けて行うことのできているコーランさんのカサス商会は今後さらに力をつけていくだろう。イチはそこまで期待していないかもしれないけれど、きっと今後の生活に大きな力になってくれると思う。




 そのあと上階位試験への実績が貯まったことと、スレインさんたちにも大丈夫だと言われたこともあり試験を受けることにした。ちょっと不安だったけど、無事に受かることができた。やっぱりこういうのはうれしいものだ。「上階位」と書かれたカードを見てニマニマしてしまった。



 上階位になった後、イチと話をしてしばらくこの町で生活しようということになった。冒険者としてだけでなく、いろいろと他のことにも手を出してみたいようだ。

 とりあえず1ヶ月ほどの宿を取ろうと言うことになったんだけど、せっかくだから同じ部屋にしようと説得した。同じ値段でお風呂付きのところに泊まれるというとかなり悩んでいた。日本人ってほんとにお風呂が好きなのね。


 純粋に私自身を見てくれるイチ。もしかしたら好きになっているのかもしれない。でもイチがどう思っているのか聞くのが怖い。とりあえず今のままでいいと思ってしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ