ジェンside-4. 異世界9~12日目 最後は異世界観光
明日のお昼にはもとの世界に戻るはずなので、今日で実質最後の異世界生活となる。それで今日はせっかくなので町をゆっくり過ごすことにした。こっちに来てから結局講習や狩りばかりでまともに観光していなかったからね。
アキラとマラルには事前に連絡を取っていたので、宿の前で待ち合わせていたので時間になると二人がやってきた。彼女たちもゆっくりとした休みは久しぶりらしく、「今日は一日遊ぶぞ~~!」と叫んでいた。
最初は雑貨屋やアクセサリー、服を売っているお店を見て回る。特に何を買うわけではないが、いろいろと見て回るだけで楽しい。
お昼は私がおごってあげることにしていたのでちょっと豪華なランチをとることにした。事前に予約をしているお店に行くと、二人はかなり驚いていた。
「こんな高そうなお店でおごってもらっていいの?」
「うん、大丈夫だよ。実は明日、他の町に行くことになったんだ。それでこの町にいるのは実質今日が最後になるんだ。だから最後に二人と一緒に楽しみたかったの。」
そういうと二人は悲しそうな顔になっていた。
「せっかく友達になれたと思っていたのになあ・・・。」
「ごめんね。なかなか言い出せなくて。でも最後だからみんなで楽しもうよ。」
そうと言うと、納得したように笑ってくれた。このあとも夕方までいろいろとお店を見て回り、楽しい時を過ごすことができた。
明日見送りに来ると言われたんだけど、やっぱり別れるのが悲しくなるからといって断らせてもらった。とてもうれしいけど、さすがに消えてしまうところを見られるわけにもいかないからね。
翌朝、朝ごはんを食べた後、宿の二人にお礼を言ってからチェックアウトする。そのあとは昨日行っていないお店や港の方まで足を伸ばした。
お昼にはちょっと贅沢して魔獣のステーキを食べてみた。魔獣なんだけど美味しいわね。買い取りをしているくらい需要は大きいんだから当たり前か。食事を終えてから転移してきた港近くのベンチへと向かう。
ガイド本の表紙に書かれている時間がまもなく0だ。せっかくの経験なのに記憶がなくなるのはちょっと悲しいけど、まあしょうがないかな。
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1
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あれ?
あれ?
なんで?
残り時間だったカウントはどんどん進んでいくが、転移される気配がない。
どういうこと?
結局そこで60分ほど待っていたが転移されることはなかった。
いったいどういうことなの?
戻れない?
戻れないの?
気がつくと辺りに夕暮れが迫っていた。
とりあえず宿に戻ろう。
メイルミの宿に戻ると、奥さんのルミナさんが慌てて出てきた。
「あら?ジェニファーさんじゃない?どうしたの?」
「あの、部屋は空いていますか?泊めてもらえますか?」
ルミナさんは何も言わずに部屋の準備をしてくれた。
気がつくと夜明け前になっていた。ベッドにうずくまったまま眠っていたみたい。もとの世界には戻っていないのね。改めてガイド本を見てみたけれど、時間がどんどん進んでいるだけだった。
翌日もトイレに行く以外は部屋に閉じこもっていた。
さらに翌日になると心配したルミナさんが部屋にやってきたので話をすることにした。
「大丈夫?なにがあったのか分からないけど、ずっと部屋に閉じこもっているのはあまり良くないわよ。」
「うん、それは分かっている。でも戻るはずだったところに戻れなかったの。どうすればいいのか分からないの。」
いつの間にか泣いていたみたいでルミナさんが優しく頭をなでてくれた。
「とりあえず落ち着きなさい。何があったのか詳しくは聞かないわ。でも結局はなにかやらないと何も変わらないと思うの。」
しばらく頭をなでられながら整理する。
たしかにこのまま宿に閉じこもっていても何も変わることはない。ほんとに戻れないのであればこの世界で生きていかなければならないと言うことだ。
「もし良かったらうちの宿で働いてみる?そろそろ人を雇おうかと思っていたところなの。あまりお給金は払えないけど、住み込みとしてやってもらってかまわないわよ。」
「いいのですか?」
今の段階で冒険者として生きていくのはかなり厳しいことを考えると、住み込みで働かせてもらえるなら一番いいことだ。
「お願いします!!」
帰る方法を探さないといけないけど、まずはこの世界で生きていく手段を確保することから始めよう。




