25. 異世界57日目 のみの市
いつも通りに目を覚ますが、今日の狩りは中止することにした。どうやら毎月の30日にのみの市のようなものが行われるようなのだ。この影響でジェニファーさんはこの日はお昼も仕事となるようである。
市は1時頃から始まっているようなので朝食を食べてからさっそく出かけることにした。いい掘り出し物でもあればいいなあ。
町の中央広場を中心にいろいろなものを売るお店が出ていた。小さなテントのようなものが立てられてそこでいろいろなものが売られている。出されているのはいつもは車が通るところなんだが、今日は車は入ってこられないみたい。
売られているのは日用雑貨だけでなく武器、防具、魔道具、家具、絵画などの美術品など多岐にわたっている。ただ聞いた話だと偽物も多く、ただのガラクタが売られていることもあるので気をつけないといけないようだ。
鑑定スキルがあるから変なものはわかるから大丈夫だろう。手に持たなくて鑑定できればいいんだけど、触らないといけないのが面倒なんだよなあ。
いい武器とか役に立つ魔道具とかあれば使ってもいいし、最悪売ってもうけが出ればラッキーだ。ただ転売するにしても売り先のルートがなあ。あ、カサス商会だったら少々数があっても買い取ってもらえるかな?まあそんなにいっぱい掘り出し物が見つかるとも思えないので、もし見つかったらそのときに考えよう。
武器や魔道具を中心に見ていくが、ほとんどが修復不可能なくらい壊れていたり、値段相応のものだったり、普通の汎用品だったりなので買いたいと思うものはない。一見よさそうに見えるものも調べてみたらただの張りぼてだったりするしね。
かなりのお店があるので、いろいろと話を聞いたりしながら見て回る。おなかがすいてきたんだが、お店はどこも混んでいたので屋台で焼き鳥のようなものを買って食べることにした。なかなかおいしい。
「そういえばこれって鳥じゃないから普通は串焼きって言うんだったな。」とか父がよく話していたローカルなことを思い出してしまった。
お店の中には半分ギャンブルのようなところもあった。10ドールと100ドールの魔獣石が30ドールと300ドールで販売されているんだが、中身は10~90ドールと100~900ドールの価値があるというものだ。
もちろん本当に販売価格以上の価値があるものが混ざっているのか不明だが、選んだ後でお客はその場で追加合成して結果がわかるというものなのであまりに外ればかりだとすぐにばれてしまいそうだ。まあお客がサクラの可能性であるといえないこともないけどね。
見ていると、時々当たりを引く人もいるみたいだが、やはり外れの方がダントツで多い。30個の中からなのでどれだけあたりがあるのかもわからないからねえ。
これって鑑定で価値がわかるようになったら百発百中だなあ。ただ触るのが禁止だから見るだけで鑑定できるようにならないとだめだけどね。
いろいろと回ったんだが、結局買ったものは剣だけだった。やはり基礎的な知識が不足しているのでどれが売れるのか目星がつけられないことや手に取って鑑定しないといけないので思った以上に時間がかかることが大きい。
それ以前に見るだけでも楽しいため、見ていくだけでも時間をとられてしまったこともある。本格的に転売をするならこんなことじゃだめなんだけどね。
買った剣は傘立てのようなところにまとめて売られていたんだが、ざっと鑑定しながら見ていると一つ気になるものがあった。別に魔剣とかではないんだが、ものは良さそうな感じ。ただ手入れがされてないので結構ボロボロのようにも見える。
名称:鉄の剣(低)
詳細:鉄を鍛えて製作された剣。錆びているため真価を発揮できない。
品質:高
耐久性:高
効果:並
効力:強度向上
持ってみると今使っている剣と重心なども大きな差がなく、若干軽い感じのものだ。価格はどれでも1000ドールと投げ売り価格になっている。
今使っている鉄の剣でも4000ドールで買ったものなんだが、売ってもこの値段くらいにはなると思うので十分買う価値はありそうなので購入することにしたのである。
この鑑定結果が合っているのか知りたかったのですぐにドウダンのお店によって買った剣の手入れをお願いする。
「いい剣を手に入れたな。錆びているが、手入れすれば十分に使えるものになるぞ。ちょっと見ただけだとわからないし、鑑定でも鉄の剣(低)としか出ないからな。」
「鑑定だとそのくらいしかわからないんですか?」
「あとは”鉄を鍛えて制作された剣”と説明が出るくらいだ。なので鑑定を持っていても見る目がないと本との価値はわからんことが多いな。」
「そうなんですね。」
詳細の説明も最初の文章くらいしか表示されないと言うことか。
「ある程度知識があれば少なくとも今使っているおまえの剣よりはいいものだと言うことはわかるな。付与魔法はちょっと程度が落ちるが、まあそれでも十分なものだ。」
「よかった~~。のみの市で良さそうな剣が投げ売りされていたので買ってみたんです。」
「そいつはラッキーだったな。今使っている剣なら2500ドールで引き取れるから研ぎ代として1000ドール差し引いて1500ドールで買い取りするがどうだ?」
「それではお願いします。引き取りは明日の朝一でもいいですか?」
「おお、大丈夫だぞ。何だったら1時間くらいもらえればやっといてあげるぞ。」
「それでは夕方にまた来ますね。」
お金ももらえていい剣が手に入るとはかなりラッキーだったなあ。
夕食を食べてからシャワーと洗濯を済ませる。このあと剣を引き取りに行き、かなりキレイに磨き上げられた剣を受け取った。鑑定してみると、鉄の剣(高)となっていた。状態によって効果は下がってしまうんだな。これはある意味ちゃんとした鑑定が使える自分にとってはラッキーかもしれない。
のみの市は月に一回やっているみたいなので機会があればまた回ってみるのもいいかもしれない。それまでにもっと基礎的な知識を身につけておかないと時間ばかりとられてしまうな。触らずに鑑定できるようになったらもっと掘り出し物を見つけやすくなるんだけどね。
今日はさすがに忙しかったようなのでジェニファーさんとの情報交換は中止となった。自分も一日歩き回っていたので思ったよりも疲れてしまったようだ。狩りよりも疲れた感じだった。
 




