21. 異世界53日目 旅の間に何か起こるって小説だからかな?平和です
10日間の移動だったんだが、盗賊に襲われることや強い魔獣に襲われることもなく無事に港町オカニウムに到着できそうだ。宿泊代は出したんだが、食事については結構おごってもらえたのであまり支払いをする機会はなかった。
途中出てきた魔獣は風の翼のメンバーにとってはたいしたことのない魔獣で手伝う機会もなかった。まあ主要街道だろうから、こんなところでそうそう問題は起きないか。
しかし、月に何回か強い魔獣に襲われることもあるらしく、護衛代をケチったせいで被害が大きくなったという話もあるようだ。まあ護衛は保険みたいなものだねえ。盗賊についてはこのルートで出ることはほんとにまれなことらしい。
雨が降っても道路がぬかるんで動けなくなると言うこともないので、そんなにペースは変わらない。道路は防水対策もしっかりしているのか、それほど路面が濡れた感じにはならないのである。逆に魔獣が出ないので走りやすいかもしれないくらいだ。もちろん土砂降りになってしまったら視界の問題でペースは落ちるんだけどね。
風の翼のメンバーには時間が空いたときに訓練をつけてもらった。自己流でやっていただけなのでかなり勉強になったように思う。また倒した魔獣の解体も手伝わせてもらったのもスキル上げにはちょうどよかった。
もちろん解体魔法でやった方が早いんだが、初めての魔獣もいたので時間は少しかかったがせっかくなのでやらせてもらえてよかった。
海岸が近づいてきたせいか、徐々に磯の香りが漂ってきて、夕方近くなって町の城壁が見えてきた。城壁はアーマトと同じくらいだ。農地を抜けてから門に到着し、入口で手続きをしてから町の中へと入ることになるが、人もそれなりに並んでいるので時間がかかるのはしょうがないところか。
簡単ではあるが荷物の検査もされているが、索敵で人が紛れていないかもチェックされているようだ。チェックを受けたところでこの町の滞在カードも受け取る。
町の規模はアーマトよりは小さいが活気はこっちの方がある感じだ。町の作りはそれほど差が無いが、ちょっと顔立ちの異なる人がいるのは別の国の人たちなのかな?港町と言っていたんだがどうやら漁港だけではなく、貿易港も兼ねているようである。
まずは商店に移動して荷下ろしとなった。そのあと護衛の依頼書にサインをもらい、護衛完了の証明をしてもらう。風の翼は往復での護衛依頼らしく、5日後に出発してアーマトの町に戻って完了となるらしい。
ここでオカニウムのカサス商会で支店長をしているフラールさんと少し話をする。もともとは独立したお店だったが、コーランさんと意気投合し、カサス商会の下についたという経歴の持ち主だった。
この日は商店の保養施設に泊めてもらえることになったため、宿代はかからなくてありがたい。明日の朝まではご一緒しましょうと言うことだったので一段落したところで夕食となった。
料理は魚の塩焼きやフライ、照り焼きなどかなりバラエティーに飛んでいて、久しぶりに魚料理を堪能した。しかしながら刺身はないようだ。風習なのか、ほんとに危険なのか分からないが生の魚の話をすると「なにとんでもないこと言っているんだ?」と変な顔をされてしまった。
「たしかに生で食べるという風習がある地域のことは聞いたことがありますが、この国では普通は食べないですね。」
コーランさんは一応刺身のことは知っていたようだ。醤油みたいなものもあるから刺身もあるかと思ったんだけどね。鑑定のレベルが上がって寄生虫とかの問題がなくなったら挑戦してみてもいいかもしれないが、今はやはり怖い。
食事の後はシャワーを浴びてから部屋に戻る。食事の時はみんなと話をしたりするんだが、車の移動中はひたすら本を読んでいたせいか学識系のスキルが上がっていたようで、鑑定を使ってみると今までと違う内容が表示されていた。
学校の時はいやいや勉強していたんだが、なんか目的があると勉強にも身が入るというのはほんとだね。移動中はかなり集中して読んでいたからなあ。
名前:ジュンイチ(大岡純一郎)
種族:猿人(異世界人)
生年月日:998年10月30日
年齢:17歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(並階位)
賞罰:なし
資格:なし
クラス:学者(思考力向上)
スキル:
体術、片手剣、両手剣、刀剣、短剣、一般魔法、火魔法、風魔法、水魔法、土魔法、治癒魔法、回復魔法、睡眠耐性、演奏、歌唱、絵画、彫刻、工作、料理、裁縫、日本語、英語、ヤーマン語、ライハンドリア公用語、思考強化、鑑定、索敵、商人、採掘、採取、解体
知識スキル:
戦学、武学、防学、魔法学、魔素吸収、魔素放出、魔素操作、算学、自然科学、社会科学、生物学、植物学、地学、神学、医学、天文学、言語学、罠学、ガイド本
今までと違うのは知識スキルが表示されるようになったことだ。ただレベル表示はされていないのでこの辺りは鑑定スキルを上げていくしかないのだろう。
持っていなかったスキルに魔法学や魔素吸収、魔素放出、魔素操作というものがあった。これが魔法を使うための前提となるものだろう。吸収、放出、操作についてはいつでも無意識に使っているのでレベルも上がってくれていると思っている。
名前や種族にも説明が追加されている。名前もちゃんとした名前が表記されているし、種族のところに異世界人の説明が書かれていた。
学識レベルが上がったせいか、クラスに”学者”が追加されていた。思考力向上と言うことは、頭の回転が速くなるのかな?そういえば途中から読む速度とか理解力が上がっていたような気もする。気のせいかもしれないけど・・・。
クラスがつくとその分野の能力が向上すると言われているのできっと補正能力があるのだと思う。
アイテムを鑑定すると、名称だけでなく説明も表示されるようになった。
名称:鉄の剣(低)
詳細:鉄を鋳造して製作された剣。
品質:低
耐久性:低
効果:低
効力:なし
聞いている内容だと、アイテム鑑定は名称と簡単な説明くらいしかわからないらしいので、この鑑定のレベル1~2くらいに相当する感じかな?おそらく名称と詳細くらいがわかるのだろう。
買った鉄の剣はやはり安物だったようで低レベルのものだった。まあそれでも初階位の冒険者にとっては十分だけどね。
品質と耐久性はおそらく作った人の技量と材料に寄るのだろう。鋳造でなければ耐久性も高くなると思われる。効果は付与されている付与魔法に関係しているのだと思うが、このあたりは見てもよくわからない。
それに対してもらった短剣はかなりいいものだった。売ったら結構なお金になるんじゃないか?よっぽどお金に困らない限りは売らないけどね。
名称:鉄の短剣(良)
詳細:鉄を鍛えて作られた短剣。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:強度向上、鋭利向上、耐久性向上
付与魔法は3つも付与されているので結構貴重だと思われる。
硬貨は魔獣石としての鑑定しかでない。まあもともとあったものをお金として利用しているだけだしね。貯まった魔素の量はまだわからないな。
名称:魔獣石
詳細:魔素が貯まった石。
まあこれでとりあえずスキルを得たかどうかについては分かるようになったのでよしとしよう。あとはレベル表示だな。次の段階では見られることになるのを期待しよう。
~コーランSide~
移動中の食事の時にはいろいろと話をさせてもらったが、やはり彼のアイデアはすごい。あらためて気づかされることがいろいろと出てくる。ここまでいろいろなアイデアがあってなぜ自分で商売をやってみないのかと聞いてみた。
「アイデアはあっても実際の販売などについてのノウハウがないので、やっても失敗するリスクが高すぎるし、アイデアはすぐにまねをされることだから、商売に慣れた人と競争しても勝てるとは思えないんですよ。
それだったらやれる人にやってもらった方が自分にもその恩恵が出てくるし、生活ももっと便利になると思うんです。」
たしかに人によって向き不向きはあるのは分かる。言われたアイデアもまねしようと思えばまねされることだと思う。ただこれだけのアイデアを見返りもなく話すというのはどうなんだろうと思ってしまう。
これだけのことをいろいろと聞けてかなりの返礼をしなければならないレベルなのに、一緒に乗せてもらったことに感謝されてしまった。
下手すると悪い奴らに利用されるだけ利用されてしまう可能性もあるので、できればうちに優先して話しておいてほしいと言って他にはあまり言わないように誘導しておいた。うちとしても他に話さないでいてくれた方がありがたいことであるが・・・。