表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/290

194. 異世界1246日目 サビオニアの貴族?

 王都での滞在もそこまでの意味はなさそうだったのですぐに出発することにした。目指すのはここから北西にある遺跡だ。


 王都を出発してから拠点に泊まりながら車を走らせる。ここに来るまでと同じように途中の町は素通りだ。街道のランクは下がるが、特に魔獣が出るというわけではないので走るのには問題は無い。

 このまま順調に遺跡まで行けるといいなと思っていると、索敵に魔獣が引っかかった。上階位の魔獣のようだが結構数が多そうだ。こんな街道の近くに上階位の魔獣がいるのか?さすがに気がついてしまったのに素通りも気が引ける。


「ジェン、とりあえず近くに行ってみるよ。」


「わかったわ。」


 街道から少し離れたところにある岩場の影に車が止まっており、魔獣が襲いかかっているようだ。ちょっと離れたところに人の気配も感じるのが気になるが、まずはこっちからだ。


「ジェンも気がついているとは思うけど、あっちに変な団体がいるから注意してね。」


「わかっているわ。実力的には自分たちでも十分倒せそうだけど油断はできないわね。盗賊かしら?」


「なんとも言えないね。魔獣ももしかしたらあそこにいる人達の仕業かもしれないよ。」



 車の周りに護衛と思われる人が戦っているんだが、ちょっと押されている感じ。襲っているのは集団蜂のようにみえる。なんでこんなところにこんな魔物が出ているんだ?

 集団蜂はかなりたちが悪い蜂の魔獣で、町や道路の近くで発見されたらすぐに討伐される指定駆除魔獣だ。前に倒したことのある握りこぶしくらいの大きさの大蜂よりちょっと大きいくらいだが、脅威度は良階位である。装甲が固い上に素早いし、さらに毒の威力も高いのである。

 普通は森の奥などにいる魔獣で、普通の蜂のように巣を作って集団生活をしている。大きな巣になれば数千匹の集団で生活しているらしい。大蜂と同じく魔法がかなり有効なんだが、物理攻撃だけだと討伐はかなり厳しい魔獣だ。


 さすがになにかあっても困るので少し離れたところから声をかける。


「大丈夫ですか?手助けがいるなら援護します!!」


「頼む!!!」


 こちらの声に反応した護衛と思われる人が返事をしてきた。


 とりあえず盗賊などと言うわけではなさそうだが、あまり信用しすぎるのも危ないからね。小説みたいに襲われる人が問答無用でいい人という保証はないし。


 近づいていくと集団蜂がこちらにも気がついて襲ってきたんだが、数はそれほどいないようだ。巣が近くにあるというわけではなかったのかな?

 こちらに襲いかかってくる集団蜂を火魔法で焼き払いながら近づいていく。こちらを脅威に感じたのか、残った蜂が一気に襲いかかってきたが、周りに人がいないなら遠慮する必要も無い。風魔法と水魔法でたたき落として火魔法と剣でとどめを刺していく。近づかれて針を刺されたら大変だからね。

 あくまで集団攻撃での脅威から良階位となっているんだが、単発攻撃であれば上階位レベルの魔獣だからね。まあそれでも100匹くらいはいたっぽい。



 岩陰には車が2台止まっていたんだが、蜂の攻撃を受けたせいかかなりボコボコになっていた。タイヤもパンクしているみたい。食事をとっていたのか、あたりにはテーブルや椅子の他、食器や食べ物も散らばっている。食事中に襲われたのかな?

 普通の蜂と同じく巣分けで移動していたんだろうか?それでちょうど休憩していたところにこの人達がやってきて襲ったって言う感じかな?まあこのあたりは正直わからない。

 先ほどの様子をうかがっていたと思われる人達の気配はなくなっていたのでもうどこかに行ってしまったのかもしれない。どういう人達だったのかは不明だけど、とりあえずは大丈夫かな?



「大丈夫ですか?」


 あたりを警戒しながら確認すると、護衛と思われる男性が2人と女性が2人がいて、車の中に護衛対象と思われる人が乗っているようだ。


「すまなかった。協力に感謝する。」


 リーダーと思われる男性が声をかけてきた。


「いえ、困ったときはお互い様です。怪我はありませんでしたか?」


「ああ、大丈夫だ。結構刺されたりしたが、薬を持っていたからな。ただしばらくはまともに戦えないかもしれない。」


 たしかこの蜂の毒は遅効性なので徐々に効果が強くなっていく感じだったかな。治療してあげてもいいんだけど、変なことになってもまずいのでやめておいた方がいいかな。まあ薬を飲んでいるのなら死ぬこともないだろう。



 話を聞くと貴族に雇われている護衛らしいが、火魔法を使える人がいなくてかなり手こずっていたらしい。こんなところに集団蜂が出るなんて聞いたことがなかったようだ。数がまだ少なかったから良かったけど、あのままだったらやられていたかもしれないと言っていた。


 話をしていると、車の中から人が降りてきた。少し年配の女性と10歳くらいの子供が二人だ。


「助力感謝いたします。危ないところでした。」


「「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとー!」」


 男の子と女の子らしいが、顔がかなり似ているので兄妹なんだろう。貴族の奥さんと子供らしいが、貴族にしては護衛とか車がお粗末だなあ・・・。

 こちらも貴族と言うことは言わなかったが、ヤーマンから来た冒険者と言うことだけ話をしておく。遺跡に興味があり、いろいろと見て回っていると言うことを説明するとかなり不思議そうな顔をされてしまったよ。意味が無いかもしれないが、遺跡の調査許可証も見せると、一応は納得してくれたようだ。



 よく小説で高位貴族が盗賊や魔獣に襲われているところを主人公が助けるという展開があるけど、普通に高位貴族が盗賊や魔獣に襲われてやられそうになるレベルってどれだけ国がヤバイ状況なんだと思ってしまう。

 それに魔獣はまだしも盗賊もそんな高位貴族を襲った場合のデメリットはわかるだろう。特に王族を盗賊が襲うなんてあり得ないからね。なにかあったら国の威信をかけて速攻で討伐されるよ。貴族を襲うにしても対価が大きすぎるよ。よほどの兵力を持っていない限りはあり得ない話だ。それか貴族や後継者争いに巻き込まれているくらいしかないよな。

 さらに助けられたからと言ってすぐに信用されるというのはもっとあり得ないことだろう。わざとけしかけてそれを救ったと見せかける話なんてよくあることだからね。


 ってことは、今の自分たちがその立場ってこと?魔獣をけしかけて助けた風を装っていると勘違いされてもまずいからそうそうに立ち去った方がいいよな。



 それでは先を急ぐのでと出発しようとしたんだが、この先の町に移動中だったのでそこまで同行してくれと頼まれてしまった。どうやら護衛の二人が結構刺されたみたいでこのあとの護衛が少し不安らしい。

 いくら助けたと言ってもすぐに信用して大丈夫なのか?と思ったんだが、さすがにほおっていくのもかわいそうだと思って町まで同行することにした。

 車のパンク修理を終えてから簡単に昼食をとったあと、移動を開始する。1台はリーダーが運転し、もう一台に負傷者2人を乗せて走るようだ。自分たちはその後ろを付いていくことになる。まあ一緒の車に乗って移動とかじゃないから信用しているかどうかは別問題かもね。



~魔獣紹介~

集団蜂:

良階位中位の魔獣。森の奥に多く生息している蜂の形をした昆虫型の魔獣。大きさは握りこぶしより二回りほどの大きさで、動物や魔獣を餌としており、人間にも襲いかかる。

1匹でも上階位の強さがあり、通常は数百~数千匹の集団で襲いかかってくる。お尻にある針には大蜂よりもさらに強い毒が含まれており、一度に複数個所を刺されてしまうと死に至ることがある。このため戦闘中であっても解毒剤を服用しながら対応した方が良い。

体が小さいため、剣や弓での攻撃は難しく、魔法攻撃が最も有効。体が油に覆われているため、特に火魔法が有効であるが、延焼には注意が必要。

もし巣を見つけることができれば女王蜂を退治することが望ましいが、地中に巣を作るため見つけるのは難しい。

町や街道の近くで発見された場合はすぐに討伐依頼の出る駆除指定魔獣に登録されている。

女王蜂以外は素材としての買い取り対象はない。巣で育っている幼虫を食べる地域もあるため、地域によっては買い取りも行っている。女王蜂の瞳は宝石として流通しており、かなりの高値で売買されている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ