15. 異世界10日目 今後のことを考えてみる
泊まるところがないと最悪な状況になりかねないので、とりあえず前に泊まった安めの宿カイランに予約を済ませる。これで今日の宿泊はいいんだが、正直いつ戻れるようになるのか分からないからなあ。
まずはダメ元で教会へ行き、神様に祈ってみることにした。
「異世界からやってきて今日で戻る約束だったんですが、どうなっているのでしょうか?もしこの声が聞こえるのでしたら応えてください。」
・・・
・・
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反応はない。
まあ当然か・・・。
神様と今回の対応してくれた人は別みたいだからなあ。普通に考えても神頼みとかやってもそうそう話は聞いてくれないか。いくらもとの世界より神様が身近になっているとは言ってもね。
でもこのくらいしか確認する方法もないので教会通いは続けることにするか。それとも教会でなくても声は届くのかねえ?それともなにか特別な場所でないと声は届かないのだろうか?
公園に戻ってから今後のことを考えてみる。
元の世界に戻る時間を過ぎていると言うことはいつになったらもとの世界に戻れるのか、本当に戻れるのかは分からない。もしかしたらあの説明は建前でもともと戻ることができないのかもしれない。そう考えるとこの世界で生きていくことを考えておかなければならないということだ。
この世界での知り合いと言っても10日間に知り合った人たちだけなので手助けを頼むわけにもいかない。異世界からやってきたと言ってもそもそも信じてもらえるかも分からないし、信じる人がいたとしても手助けしてもらえる可能性は低い。
下手すれば知識だけとられて一生飼い殺しという状況で人生終わってしまうかもしれないという可能性もある。ササミさんもそんなことを言っていたし・・・。
まさしく八方塞がり・・・。
・・・そういえば、一緒に説明受けていた彼女はどうなったんだろうか?
彼女がどうなったかを確認したら何かの手違いで帰れなくなっているかも分かるかもしれないし、自分と同じように帰っていなくてもなにか協力し合えることがあるかもしれない。まずは彼女の情報を集めることを目的とするか?
ササミさんに聞いた話では彼女がいるところはこの町から南西方向にある港町オカニウムで、前に調べたときに確かバスを乗り継いで15日くらいかかるという話だったはず。
普通のバスで3千ドール、指定席のあるバスだとたしか3倍で9千ドールくらいかかったように思う。高速の直通バスだと5日くらいで到着するらしいが、金額が2万5千ドールくらいだったかな。
途中の食事代や宿代もかかるから1日最低でも500ドールかかるとして15日間で7500ドールなので普通のバスで移動するにしても1万ドールは必要と言うことか。何かあったときのことを考えるとできれば15000~20000ドールはほしいところだな。
まあ歩いて行けば移動費はただなんだけど、歩くと順調にいって50日くらいかかるし、宿泊代とかも考えると逆に高いような気もする。しかも野営とか無理だし・・・。魔獣に襲われる危険性も否定できないし・・・。
彼女の方も戻っていなくてこちらのことを気にしていたとしたらすれ違いになってしまう可能性もあるが、それを言い出したら何もできなくなるから、そこは割り切るしかないだろう。
方針は決まったところで一番の問題はお金をどうやって稼ぐかだ。こんなことなら最後に贅沢とかしなければ良かったよ。あれだけで1万ドールくらい使ったからなあ。
異世界ものの知識チートはここ10日間で見て回った限りでは簡単に使えそうなものはない。大体のものは魔道具であるし、それ以上のものはとてもではないが自分で作ったり構造を説明したりは無理なものばかりだった。作るにしても売るにしても伝もないしなあ。商売をするにはそれらの知識がなければ意味がないし。
いろいろと金儲けには使えそうなスキルはあるが、まだスキルを手に入れるまでには時間がかかってしまうから実質は無理と考えた方がよさそう。まあスキルもあまり公にするのも怖い気もするからそれも厳しいか?
働き口があれば月に15000~20000ドールは手に入るようだが、見習い期間もあるし、そうそうそんなよい働き口があるようには思えない。ずっと務めるわけでもないからねえ。
以前役場でも職業斡旋はしていたので少し見てみたが、求人数がそんなに多くない上に競争率も高そうなのですぐに決まる可能性は低いように思う。短期的なバイトのようなものはある程度経験していることが前提のものがほとんどだし、自分はすぐれた技術があるわけでもないからなあ。
冒険者として狩りをするとしてもそんなに割がいいわけではなく初階位レベルだと1日頑張っても500ドールくらいらしい。しかも怪我とかした時点で収入が途絶えてしまうと言うリスクもある。
効率よく狩るとなるとパーティーになってしまうし、それだと分配になるからさらにいっぱい狩らないといけなくなってしまう。まあそれ以前にパーティーメンバーを集めるのが大変そうだし、いろいろ不都合も出てきそうだ。
とはいえ、他に方法もないし、とりあえず目標の稼ぎを一日500ドールとしてスキルのアップも併せてあげていくことで頑張ってみるか。怪我をしても治療は一応できるわけだし、お金はかからないはずだ。
治癒魔法で稼ぐ手もあるかもしれないが、これに関しては教会関係のことがあって怖いからねえ。宗教が絡んでくるといろいろとまずいことがあってもおかしくないからこれはやめておいた方がいいだろう。
今後生きて行くことを考えると戦闘に関する能力は身につけておいた損はないだろうからまずは地道に稼いでいくかな。まあまだゲームや異世界小説みたいな感覚が抜けていないせいかもしれないという気がしないでもないが・・・。
今の全財産が8000ドールくらいなのであと7000ドールとなると一日100ドールずつためて70日かかる計算だが、スキルなどを手に入れてペースが良くなればその分短縮はできるはず。
1年は365日の12ヶ月で一応四季はあるようなので冬は心配だが、今は2月で春と言うことは2ヶ月近くここにいたとしても初夏ぐらいに移動ということになる。暑そうな気もするが、寒くてどうしようもないよりはいいだろう。
ちなみに月の言い方は旧暦に近いのだろうか?500年ほど前にもともとあった暦から理解しやすいように暦を決めた人がいて、基本的に世界中でこの暦が使われているようだ。
1、3、5、7、9、11、12月が30日、2、4、6、8、10月が31日で4年に一回12月が31日になるというわかりやすい暦になっている。微調整はあるようなことは書いていたが・・・。週は10日単位で10の日が休日となっており、31日がある月はその日も休みになる。それぞれ1の日、2の日という感じで曜日という言い方はないらしい。
休みは月に3~4日と少ないが、国や町によって祝日みたいなものはあるようだ。ただ祝日と言っても全員が休むわけでもなく、店によって採用されたりされなかったりらしい。ヤーマンでは建国記念日だけは休みになって祭りが行われるらしいけどね。
1年の長さも地球と同じと言うことはやっぱりパラレルワールドという感じなのかね?大陸の配置も言われてみたらなんとなく地球と似ているイメージがあるし、もう一つの地球なのかもしれない。まあ大気の成分とか植生も似ている時点でそう考えないとおかしなことになるよ。
お金を稼ぎながら自分の能力も上げていかないといけないから手に入れておくべき能力を書き出してみよう。
まず、ガイド本に書かれている現在取得しているスキルはこんな感じだ。
戦学-1、武学-2、防学-1
片手剣-1、両手剣-2、刀剣-1
睡眠耐性-1
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-1、工作-1、料理-2、裁縫-1
算学-3、自然科学-3、社会科学-3、生物学-3、植物学-3、地学-3、神学-1、医学-3、天文学-1、言語学-3
日本語-4、英語-1、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5
思考強化-1
商人-1
採掘-1、採取-1
ガイド本-1
片手剣や両手剣は剣道の関係だと思うし、睡眠耐性は徹夜とかの関係か?あとは学校の授業で得られた知識だと思うんだが、思ったよりもスキルレベルが高いような気もする。漫画とかでの知識も影響しているのかもしれない。あとは趣味とか家でやっていたことなどで大工とかがあるんだろうな。まあ生物学とか植物学とかがこっちの知識とは大分違っているとは思うけどね。
これ以外にこっちに来てから魔法系の知識と一般魔法-1、風魔法-1と治癒魔法-1は取得していると思われる。
図書館で本を読んだときにクラスやスキルを手に入れるための必須スキルが書いてあったんだが、学識系のスキルが書かれていなかったし、スキルのレベルについても記載はされていない点も気になった。このあたりは鑑定を手に入れたら分かるかもしれない。
魔獣狩りに必要なスキルとして武器関係では剣とあとは短剣になるだろう。片手剣で盾というのも一つなんだが、今の筋力では片手剣は厳しいと思う。短剣はサブ武器として最低限使えるようになっておきたい。
剣や短剣については初心者講習である程度基本を習ってあとは実践と自己鍛錬かな?さすがに何回も習いに行くほど金銭的に余裕はない。
魔法に関しては全般的に鍛えていくという感じか?魔法関係は風魔法の習得を考えるとゲームや漫画でイメージしやすいみたいなのでスキルの習得は結構早いかもしれない。まずは自分なりに考えてやってみてだめだったら講習を考えよう。
あとは解体スキルとできれば魔法解体スキルまで手に入れたいところだ。解体に必要な学識系のスキルは十分っぽいので、あとは解体スキルを実践で鍛えていく感じだろう。
治癒魔法は一応できるようになっているが、状態異常を治す回復魔法についてはいったん状態異常にならないといけないので試すのはちょっと怖い。習うにはお金が厳しいからとりあえず薬で対処か?まあ必要になる魔獣にあうこともそうそうないだろう。
治癒のレベルアップはどう考えてもイメージで対応できそうなのでお金を払ってまで習う必要はないと思っている。回復も毒や麻痺の原因の除去なのでイメージはなんとなく分かるんだけど、実践と言ってもなあ・・・。
あと強化系や耐性系、索敵などもほしい気もするが、これは後回しだろう。
是非ともほしいのは鑑定や収納魔法の使える次元魔法なんだが、まずは鑑定からかな?次元魔法は取得条件が今のところ厳しすぎる。どっちも習得方法が一般には知られていないけど、ガイド本に書かれていたので助かった。
次元魔法はある程度魔法が使えるようになってくれば持っていても問題ないくらいだろう。高階位の冒険者とかで持っている人もいるみたいだからね。
人物の鑑定についてはやはり取得しても公にはしない方が良さそうだ。過去には人物の鑑定ができた人がいたらしいと言うレベルなのにそれができるとなったらどうされるかわかったものではない。
スキルのレベルはおおよその目安らしいが、それがあればクラスが得られるという特典があるのでできるだけ早くスキルを手に入れた方が能力補正がかかってよいだろう。
得手不得手はあるらしいが、おおよそレベル1で1~10日、レベル2で数週間~1年ほどで、レベル3は早い人で半年だが、年単位でかかることも多いらしい。レベル4以上は人によってばらつきがあるのでなんともいえない。
学識系のスキルは知識や経験、関係するスキルの使用頻度が影響するみたいなので上がりやすいらしい。
まあどのタイミングで帰還できるかは不明だが、もし帰れなくなってしまうことも考えると生きていく手段は手に入れておかないといけないので行動を起こすしかないよな。