115. 異世界498日目 新たな依頼
明日にはこの町を出発することになったので最後にジョニーファン様に挨拶に行くことにした。なにか連絡もあったようだしね。
二人には昨日から朝食の後は自由にしてもらうようにしているのでいろいろと町を回っているようだ。
いつものように受付に行ってから部屋に案内される。
「おお、よく来たな。」
「おはようございます。いろいろとお世話になりました。明日には出発しようと思っています。」
「いよいよ出発か。なにやら護衛で新しい町に行くとは聞いているんじゃが、そのあとの予定は決めているのかな?」
「いえ、いろいろと回ってみようとは思っているのですが、正直まだ確定はしていません。ただ、せっかくなのでハクセン方面に行ってみようかと考えているところです。」
「それはちょうどよかった。」
「ん?」
「もし特に決めていないようだったら、ハクセンまでお使いを頼めないかと思っていたんじゃよ。わしの古くからの知り合いでな。研究内容に関する資料と魔道具を運んでほしいんじゃが、資料についてはいろいろと説明をしなければならないので誰を行かせようか悩んでいたところなんじゃ。
君たちなら十分その説明ができると見込んでの話じゃよ。資料の内容は今回君たちと話した内容が主なのでまさに適任なんじゃ。」
魔道具は説明を書いているので十分に理解はできそうではあるが、資料についてはいろいろと説明できた方がいいようだ。
簡単な話だけなら通信の魔道具で話すこともできるが、さすがに時間的に厳しいという事らしい。
魔道具は結構大きいので収納バッグがないと厳しいものだ。まあバッグは持っているから十分に運ぶことができるけどね。
一度読んでみてくれと言われたのでいいのかと思いながらも簡単に資料の内容を確認していく。さすがに全部は読めないので各章のまとめの部分だけだ。
その間に今度の移住の紹介状を書いてもらえないかお願いすると快く引き受けてくれた。すぐに準備をしてくれるようだ。それを町の責任者に見せれば悪いことにはならないだろうと言うことだった。
資料は今回色々と話した内容と、遺跡の調査内容だった。いくつかは自分たちの報告書を参照している。資料を一通り見てからいくつか気になった点を確認していく。なにかあれば自分たちの考えで話してもいいらしい。
資料の確認や色々と意見を交換していると時間もかかり、この日も結局お昼をごちそうになることになる。結局夕方までかかってしまったよ。
奴隷の見学の件についてはお礼を言うが、残念ながら自分たちのパーティーにあう人がいなかったことを話しておいた。ただよい機会をもらったのでお礼を言っておく。
「まだいろいろと話したいこともあったんじゃが、冒険者としていろいろな見聞を広げることもいいことだ。特に若いうちはな。」
「また来るときには必ず顔を出させてもらいます。それまでお元気で。」
「それはこっちの台詞じゃ。絶対に無理はしないことじゃ。逃げることは恥ではないからな。生き残ることが一番じゃ。」
「はい、お世話になりました。」
帰りに役場に行ってジョニーファン様からの依頼を受けてから宿に戻ると、ミルファーさんたちも部屋に戻ってきていた。
せっかくなので今日はホテルの食堂で夕食をとることにした。ちょっと豪華な料理だが、たまにはいいだろう。二人はかなり感激していた。
ジョニーファン様に紹介状をもらうことができたと話すとかなり喜んでいた。おそらくこれで変な扱いは受けなくて済むだろう。
部屋に戻ってから明日からの荷物の最終確認をする。
「このあと二人を町まで連れて行くけど、そのまま少しその町で滞在しようと思っているんだ。新しい町の周りの魔獣の退治で冒険者を募集しているようなので二人が落ち着くまでは様子を見ようかなと思ってね。」
「町をほとんど出たことがないと言っていたし、少しだけでも力になってあげたいわね。」
これはジェンも同じように考えていたようだ。
「それと魔獣の討伐方法を少し変えていこうと思ってる。」
「どういうこと?」
「素材とかを得るにはもちろん今の戦い方が一番効率的だし、安全性も高い。でもこのままだとなかなか成長できないと思うんだ。」
「まあ、確かにいかに安全に狩りをするかをモットーにしていたしね。」
「今回のことを考えるとやっぱりもう少し戦闘技術を上げておかないと、いざという時にうまくいかないと思ったんだよ。訓練と実践はやっぱり違うからね。
もちろん無理してやられたら意味がないけど、うまく誘導して実戦経験を増やしていこうと思ってね。」
「わかったわ。」
どういう風にやっていくかはまた考えないといけないけど、今回みたいなことにはもうなりたくない。
「そのあとは8月中にはハクセン国に入りたいところだね。依頼の届け先のハクセンの王都は南の方ということと、ハクセンは地域的に雪も少ないようなので少々遅くなっても移動は問題なさそうだけど。」
「届けるだけでいいんだっけ?」
「うん、届けた時点で依頼は完了となるみたい。もちろん説明はしないといけないけどね。」
「届け先は上位爵の貴族って言われたけど大丈夫かな?」
「まあ、ジョニーファン様の知り合いっていうくらいだから大丈夫じゃないかな?一応ジョニーファン様からのお使いと言うことの証明書みたいなものも渡してもらえたしね。
ただ、まだ貴族の権限が強い国という話だから気をつけるに越したことはないけどね。テンプレの展開にはなりたくない。」
「そうね。」
「王都に行ってからそのまま南のタイガ国を経由してヤーマンに戻ろうかと思っているよ。帰りにオカニウムやアーマトにも寄ってサクラに戻る感じになると思う。」
「オカニウムを出てからもう1年かあ。みんな元気にしているかなあ。いろいろ話したいこともあるし、今から楽しみ。」
「ほんとに声がかかるかわからないけど来年にはクリスさんたちの結婚式があるという話だからね。
前聞いたときは今年の建国祭の後に王家から出て、少し落ち着いてから結婚するって話だったから来年の春くらいかなと思っているんだ。」
「それだったらちょうどいいわね。みんな仲良くやっているかなあ?」
この後も色々と出会った人たちの話をしていると夜遅くなってしまったので慌てて眠りについた。
しかし、最近はもとの世界のことをあまり考えなくなったなあ。こちらの世界でどうやって生きていこうかというのが重要だからそっちに集中しているせいもあるんだけどね。それにジェンと一緒にいるというのも居心地がいいのかもしれない。




