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僕(スマホ)と君の夏の思い出

作者: Holly

君は想いを寄せているあの子よりも大切な親友よりも僕のことを見てくれるね。時間さえあれば訳もなく僕のことを見てくれる。だから僕は君のことはなんでも知ってるんだ。君の好きな歌、大切な思い出の写真、君がよく連絡する人。本当になんでも…だけど、君が見てるのは僕の中にある君の思い出や君の大切な人のことなんだね…君がそんなに僕のことを見るものだから顔に穴が空くかと思ったけれども、実際に穴が空いたのは心の方みたい。それでも僕は君にとって唯一の存在として役割を果たしていけたらと思ってるんだ。


6月に入り庭先の蜜柑の葉が露で湿っている日が増えた。


こんな天候のせいだろうか。僕の心の中もどこか湿っているようだ。そんな湿っぽい日が続いているのに君の顔には雲ひとつない快晴のような様子が見られる。見つめられる僕が眩しいくらいに。僕は君がどうしてそんなに嬉しそうなのかもちゃんと知ってるんだから。


最近、君のアルバムの中にはある子の写真が増えた。クラスで一番の人気者の側にいつもいる少し大人しそうな子。その子は誰に対しても分け隔てなく接している良い子。君はそんな彼女が気になっているんだね… ううん。僕は僕だもの。それ以上でもそれ以下でもない。君が好きになった相手に対してどうこうできるような存在じゃないんだ…僕は僕として生きていくと決めたのだから。君はアルバムの中の写真をお守りに日々を過ごしているんだね。だけれども、なかなかアルバムの中の存在と現実でも関わるのは難しいみたいだね。君は秘めた思いを飲み込んだままなんだ。消化不良にならないと良いけど…


7月になって空に雲がない日が多くなった。


町からはどこか浮かれた雰囲気が感じられるのは、暑さのせいか、それとも夏休みが近いからなのか。君とアルバムの中の子の間には進展が見られたみたいだね。アルバムの中の存在だった彼女とひょんなことをきっかけに話すようになって最近は連絡もよくとってるみたい。 


君の好きな歌、大切な思い出の写真、君がよく連絡する人、君が大好きなあの子、私の中にある君は陽炎のように揺らいで私の知ってる君じゃないみたいだ。僕は君と彼女のやり取りをどのような気持ちで見たら良いのだろうか。僕のなかの雲はまだなくならないようだ。


 8月。夏休みに入った。君とあの子の関係は未だ絶えず続いていた。


君は勇気を出してあの子を夏祭りに誘った。僕はそのやり取りをどのような目で見ていたら良いのか分からなかったな…夏祭りに行くことが決まってから、君は様々なことを僕に聞いたね。お祭りの日程、花火の上がる時間、デートの時の服装、集合時間の何分前に行くべきか。最初は君の質問に答えたくなくて嘘を教えてしまおうかなんて考えたけど、君があまりにも真剣だからおかしくて、つい応援したくなったんだ。不思議だよね、自分でも自分の気持ちがよく分からないや…


 夏祭り当日。とても暑い日でこの夏で最も気温が高い日になったことを僕は知っていたよ。


君は夏祭りは夜からなのに、朝早くに起きて何をするでもなく、ソワソワしては何度も私を見ていたね。私までドキドキしていたよ。結局、君は待ち合わせの1時間も前に集合場所に着いて、また何をするでもなく僕を見つめていたね。君が鼓動が僕にも聞こえてきそうなくらい、僕と君の世界は静けさをまとっていて、君の鼓動が止まるんじゃないかってくらい、君と僕の世界はゆっくり流れていたね。応援しようと決めたのにその時間は私にとってとてももどかしくて、心の中のもやもやが際限なく湧き出てくる感じがしたよ。



どれくらい時間が経ったかな、1日ぐらい経ってしまったのではないかと感じるくらい長い時間の静寂の水面に石を落とすようにあの子は表れた。君は静寂をかき消すように深い深呼吸をして、それから彼女のもとへと行ってしまった。お祭りの間、彼が僕を見ることはもう無かった。花火が始まり乾いた音が響く。花火が終わり、今度は君とあの子の世界に静けさが訪れた。君はその静寂を割るように君の想いを告げた。


 9月になった。あの夏祭りに日の暑さが嘘のように涼しい日が多くなった。最近、君のアルバムにはまたある写真が増えたね。写真の中には君とあの子、2人だけの世界が広がり続けていた。

 

 僕は君が好きでした…


 これはスマホと君の夏の苦くて甘い思い出。


 


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