48話・真知の正体
「私は、讃良あなたと出会えて嬉しかった。もっと一緒にいたかった。そしたら自分の罪も浮かばれるような気がして。そんなの私の勝手な思い込みだったけど」
「真知はどうしてこの世界に来たの? 何かあったの?」
「ここへは…… ある子に頼まれて来たの。そしてあなたに出会った。あなたに会いに私は何度も通い、道を導いてしまった」
真知は歯切れ悪く応じた。讃良は何か思い出せそうな気がして来た。何度も通うという言葉が、頭の中でひっかかった。
「わたしね、思い出したことがあるの。わたしが真知に会う前に出会っていた子。その子はわたしによく似ていたわ。あれって本当は真知? 違うわよね? 何度かその子に会ったことあるもの。どうして忘れてたんだろう? ウノノってわたし呼んでたわ」
「ウノノ? それは鵜野姫のことか?」
讃良から聞いたことを確認するように、友尊は真知を見た。
「そうです。鵜野姫さまは讃良と出会っていました。私が手助けしたのです」
「なぜそなたが鵜野の手助けを?」
「聖上は、私が即位式の晩に、盗まれたように思われていたようですが違います。すでに私は十年前、先帝によって譲渡されていたのです」
「父上が鵜野に?」
「鵜野さまは寂しがっておられました。父上さまの方針で同じ年頃の友達と交流する機会を奪われて、友達が欲しいと願っておられました」
友尊が考え込む側で、讃良は理解出来なくて困惑した。
「あの。ちょっと待って。真知は譲渡されたとか言ってたけど、真知って何者なの?」
「ああ。讃良には言ってなかったな。真知は余が探していた物なのだ。神器のひとつで八咫の鏡だ」
「真知が鏡?」
ますます分からないという顔をした讃良の為、が噛み砕いて教えてくれた。
「私はいま人の形をとっているけど、本当は聖上が扱う神器のひとつで、八咫の鏡なの。讃良が見ているこの姿は、仮の姿だと思ってくれればいいわ」
「えええ? 真知は鏡の精みたいなもの?」
「まあ。そうね。少し違うけどイメージとしてはそんな感じになるかな」
友人から正体を明かされ、驚く讃良だったが、同時にどこか納得していた。友尊に会う前なら信じられなかったかもしれないが、鬼道や他の世界などを見せられた今は、真知が人間ではないと知らされても、そんな馬鹿なとは言えなかった。
「それをそなたが叶えたのか?」
「はい。鵜野さまは大人の傍つきの者達に囲まれ、聖上の后になるべく英才教育を受けられましたが、毎日を無駄に消耗して生きていると仰られて、しまいにはご自分は政治の道具なのだと嘆かれていました」
「そこにそなたも同情したのだな?」
「はい。私の力を貸しました。どこぞに鵜野さまの望まれる友達が、おられるかもしれないと告げて。鵜野さまは、どうせなら自分のことを、まったく知らない世界の友達がほしいと、おっしゃられて見つけられたのです。讃良を」
「だからなのね。ウノノは毎日のように現れたわ。あちらの世界の着物を来た姿で。時々お互いの服を交換して遊んだこともあった。入れ替わって遊んでたこともあるわ。そしたらウノノは喜んでお母さんに……」
「讃良っ」
讃良は母とウノノが寄り添う姿を思い出して、その場に蹲った。その先を思い出そうとしたら目に見えない壁が立ちはだかった。その先には重要な何かが隠れている気がして情報を引き出したいのに、その一方で何かが阻む。その先を思い出すのは困難のようだ。讃良の背を支える手がある。その手は温かくて優しい。友尊が心配していた。
「大丈夫か?」
「うん。なんだかもやもやして…… でも大丈夫。しばらくしたら落ち着くから。ウノノはどうしてこちらに来なくなったの?」
「鵜野さまは亡くなられたのよ。十年前、館から上がった火に巻き込まれて」
「そうだったの…… ウノノにはもう会えないのね。どうしてわたしウノノのこと今まで忘れてたのかしら? 一番の友達だって言ってたのに。わたしって薄情ね」
打ちひしがれる讃良を友尊は抱き寄せて、家に帰ろうと促がした。
「大体の事情は分かった。真知についての処分は保留とする。これまで通りそなたは、讃良の友人として側にいて、讃良を守れ」




