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空の鏡と聖上の恋人  作者: 朝比奈 呈
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47話・あなたに話さなくてはいけない事があるの

「これってどうなってるの?」


 讃良は浮遊感が失せて、足が触れた場所に驚いた。気がつくと讃良は自分の部屋に戻っていた。馴染みのある家具に囲まれていて、無事に家に戻って来れたことにはほっとしたが、友尊たちと、いきなり引き離されたようですっきりしないものを感じる。

 今何時だろうと時計を確認した讃良は、今日が日曜日で良かったと思う。時間は8時。母はもう起きてる頃だ。


「讃良」

「友尊」


 後を追ってきたらしい友尊が、鬼道の穴から顔を覗かせている。


「今度はそなたが呼び戻されたか」


 友尊の言葉で、讃良も向こうの世界に滞在出来るのは半日だと知れた。他にも友尊に聞きたいことはあったが、大人しく彼の言葉に従った。


「まずは着がえが先だ。その格好ではこちらの生活は不便だからな」


 互いにお互いの着がえを手伝っていると、コンッコンッとドアをノックする音が聞え、讃良と友尊は顔を見合わせた。取り合えず讃良が返事をする。



「はあい」

「讃良ちゃん。起きてるの? 朝ごはん仕度できてるからいらっしゃい。それと友尊さんも呼んで来てくれる?」

「分かった。今行く」

「じゃあ、頼んだわね」



 娘の部屋にふたりが揃っていたとは知りもしない母は、ドアを一枚挟んだ先で用件を伝えると離れてゆく。母の階段を降りてゆく音を確認して、二人はため息をついた。


「あなたが通ってきた鬼道の穴って呪術者しか通れないはずよね? どうしてわたしが通れたのかしら?


 わたしが倒れた時、その穴を通って友尊の世界に行けたのよね? どうして?」



「理由は分からないが、讃良を抱いて飛び込んだ時、道は開いたんだ。もしかしたら讃良は、認められたのかもしれない」

「認められるって? 誰に?」

「とりあえず穴に触れてみてくれ」



 友尊の言うとおり、鬼道の穴に近付いて手を触れると、讃良の手が穴の中に入った。


「入った?」


 驚きを隠せない讃良にやはりな。と、友尊が納得する。



「そなたは知らず知らずのうちに、契約していたのかも知れぬ」

「誰と?」

「それは本人に聞くしかあるまいな。今日はこちらの暦だと、確か四週目の日曜日ではないか?」

「それって真知のこと?」



 友尊は肯いた。昨晩のこともあり来てくれる期待できなかったが、真知はふたりが朝食が済んだくらいに早々と鵜野家を訪れた。


「まあ。今日は早いのね。讃良、真知ちゃんが来たわよぉ」

「これから付き合ってくれない? もちろん友尊さんも一緒に」


 母の声に呼び出されて玄関に行くと、真知が待っていた。讃良も友尊も依存はない。ふたりは真知の後に続いて外に出た。

 真知は、讃良の家の前に広がる竹藪の中に入って目を閉じた。それは心を落ち着かせているようでもあり、これから何か重大な事を話す前触れのようにも思われた。しばし瞑想していたかのような真知は、静かに目を開けて讃良の姿を捕らえた。



「讃良。あなたに私は話さなくてはいけない事があるの。出来ればこの日がもっと遅く訪れてくれればと願っていた。ここでの時間があまりにも居心地が良かったから、聖上にも見つからずに平穏に暮らしていたかった……」

「真知。あなたは友尊と同じ世界の人なのね?」


 讃良は、ふたりが共にいた所を見て悟っていた。真知は肯いた。


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