16話・教えてあげる
「お腹空いたね。今日の晩ごはんは何かなぁ?」
「いま食べたばかりではないか?」
「今のお菓子は別腹だもん。食べたうちに入らないよ」
「おかしな奴だ」
友尊が笑う。讃良も笑った。リビングに下りると母と真部さんは出かけるようだ。
「私たちは買い物に行って来るわ。お留守番お願いね。讃良ちゃん。友尊さん、汗かいたでしょう? 先にシャワー浴びたら? 着がえは脱衣所にあるから」
機嫌よく出かけていった母を見送って、讃良は友尊を振り返った。
「シャワーの使い方って分からないわよね? 教えてあげる。こっちよ」
浴室に友尊を連れて行くと、さっそく讃良は説明をした。
「ここの蛇口を捻ると、シャワーヘッドからお湯が出るわ。温度は設定しておくわね。これでボディタオルを湿らせて、このボディソープをつけて泡立てるの。こうして洗うのよ」
讃良が自分の手を泡立てたタオルで擦って見せる横でおおっ。と、声が上がった。
「うわあ。これはすごい。お湯が出たっ。どのような仕組みになってるのか?」
讃良から説明を受けたシャワーヘッドを上向きにして、ノズルを捻った友尊はヘッドから勢い良く飛び出した湯を、頭からもろ被りながらヘッドを眺める。
彼のとった行動により飛び散った水滴を浴びるはめになった讃良は、友尊からシャワーヘッドを慌てて取り上げようとした。
「何やってるのよ。反対よ。反対。向きが反対よ。下に向けて」
「ああ。こうか? 止めるにはどうしたらいい?」
「さっきとは反対側にノズルを捻るのよ。あと頭を洗うのはよく濡らして、シャンプー液を髪につけて、さっきみたいに泡立てて洗ってね。その後はリンスして……」
友尊の視線が一点で止まっていた。その視線の先を手繰って讃良は赤面した。




