未解決サークル(セリフのみ)
小説を書くようになる前、シナリオライターやってました。その際に使用した台本です。
まさに私の黒歴史素材です。
こんなの書いてたんだ(笑)と笑ってください( ノД`)
とある会館の古臭い、所々からかび臭さが漂っている。
室内には男女3人の姿がある。場の中心で話す小夏と、椅子に座って読書する律子。そして男の瀬戸。
瀬戸はその場に立ったまま女子二人の話を聞いているだけ。
小夏「やっぱ、もう一人メンバーが欲しい!」
律子「……何故?」
小夏「私としては海とか山とかに行くんだったら、逞しい女子がもう一人いた方がいいと思うんだよね。そこの男子。君もそう思うよね? 名前なんだっけ?」
瀬戸「せ、瀬戸です」
小夏「もしかして緊張してんの? 女子が苦手? 会話繋げられないとかありえなくない?」
本を閉じ、無言で小夏に歩み寄る律子。
小夏「何? 言いたいことあるなら言葉を発してくれない?」
律子「どうでもいいけど、何を始めようとしているの?」
小夏「普段つまんない仕事してんだから、サークルでストレス発散! 律子もそう思うでしょ?」
律子「自分の価値観を他人に押し付けないでくれる? 結構苛つくから」
小夏「今って話し合いしてる最中……って意味、分かる?」
律子「私にはただ一人のお子様が喚き散らしているようにしか思えない」
瀬戸「ちょっと落ち着いて……」
律子「瀬戸さんの考えは?」
小夏「そうだよ、キミの意見はどうなの?」
瀬戸「こんなのちっとも前に進まないというか何というか……」
律子「同意」
瀬戸「で、ですよね」
小夏「ふーん、前に進ませる、ね。じゃあさ、君が逞しい女子を探してきてよ」
瀬戸「お、俺が?」
律子と目が合う瀬戸。
律子「……いってらっしゃい」
瀬戸「いってきます」
急いで部屋から出て行く瀬戸。
小夏「あーあー、可哀想」
律子「何故?」
小夏「強制したつもりなんてないのに、律子の目力が半端なかったから慌てて出て行っちゃった」
律子「さぁ」
小夏「まぁ、いいけど。逞しい女子、期待して待ってよっかな」
ロビーに出た瀬戸は辺りを見回す。
館内のロビーは、各講習や、教室があるせいか老若男女が行き交っている。
辺り構わず声をかけまくる瀬戸。
瀬戸「あ、あのサークルに来てもらえませんか?」
女性1「ごめんなさい無理です」
女性2「はぁ? うざ」
瀬戸「で、ですよね。ごめんなさい」
諦めて部屋に戻ろうとする瀬戸に声がかかる。
真生「あの、私、入ってみたいです」
振り返る瀬戸。
マスク姿の女性が立っている。
瀬戸「え、あ、サークル入ってくれるんですか?」
真生「あなたがよろしければ、是非!」
瀬戸「腕の筋肉、す、すごいですね。何かスポーツをやられていたんですか? と言うか、風邪ですか?」
真生「いえ、そういうわけでは。取りますね」
マスクを外す女性?
瀬戸「そ、そうなんですね。あ、お名前は?」
真生「まきです!」
瀬戸「あの、声がその、随分低いような。やはり風邪か何か……」
真生「そうですか?」
瀬戸「も、もしかしなくても男性の方とかだったり?」
真生「ふふっ。秘密ですよ? それよりもあなたのお名前、聞かせて」
瀬戸「お、俺は瀬戸って言います」
真生「私のことは、まきって呼んで!」
瀬戸「ま、まきさん、ですね。よ、よろしくお願いします」
真生「瀬戸さん、私のタイプで可愛いらしくて気になって声をかけてしまいました」
瀬戸「へ? そ、それは。あの……と、とりあえず行きましょうか」
真生「はぁ~い! じゃあ、付いて行きますので案内よろしくね」
瀬戸「わ、分かりました。あ、あの…皆には何て紹介をすればいいんでしょうか? ちなみに女子が二人いますが……」
真生「私、見た目、女子じゃないですかぁ。だから、それでお願いしますね!」
瀬戸「はは。そ、そうですね」
真生「着いて行きますね!」
サークル部屋
扉を開き、中へ入る瀬戸。
真生は扉の外で控えている。
瀬戸「も、戻りました」
小夏「おかえり! 意外に早かったね。で、見つかった?」
律子「けしかけてしまってごめんなさい。でも、連れて来れたみたいですね」
瀬戸「あ、はい」
小夏「じゃ、紹介してよ」
扉を開ける瀬戸。
瀬戸「ど、どうぞ」
真生「お邪魔しまーす」
律子「え、この人……?」
小夏「あ、あはは。す、すごいの連れて来た……」
律子「お名前は?」
瀬戸「えーっと……」
真生「まきって言います。よろしくです!」
律子「……」
小夏「マキね。じゃあ、マキはさ海とか山に行ける? っていうか、普段はどんな仕事してるの? 結構筋肉凄いし力仕事とかっぽいけど」
小夏の質問で一同、真生を見つめる。
真生「……引っ越しです」
小夏「え、なに? 聞こえない」
真生「某運送業だけど、文句あんのか?」
瀬戸「……あ」
律子「やっぱり……」
小夏「は? 男?」
律子「いや、最初から気付くって……」
瀬戸と小夏は真生と離れた所で話しだす。
真生「……」
小夏「ちょっと、瀬戸! 逞しい女子! 女子って言ったんだけど? どうやったらあんな逞しすぎる男を女子として連れて来れるか説明してよ!」
瀬戸「い、いや、声をかけられた時には分からなくて。話し方とか見た目では本当にそう思ったから……まさかあんな」
小夏「で、あの人の本当の名前は?」
瀬戸「ごめん、知らない」
小夏「とりあえず、アレは無いわマジで」
二人、元の場所に戻る。
瀬戸、真生を見ながら軽く頭を下げる。
真生「ごめんなさい。さっきのは冗談なので、私なりのジョークというか……」
瀬戸「へ? そ、そうだったんですね」
律子「……」
小夏「あぁ、もういいよ、マキって人。ごめんね、瀬戸が迷惑かけちゃったみたいで」
真生「は? どういう意味?」
小夏「偽名なんでしょ、その女子っぽい名前。別に、格好とか話し方とか否定しないんだけどさ、ちょっと今回の条件に合わないから無理なんだ。本当に、ごめんなさい」
まさお「まさおが俺の名前だけど、悪いかよ? 悪気も何も無かったし、入りたかったから来たのに、その態度はありえなくね? 今回の条件って何だよ?」
律子「……逞しい女子」
小夏「逞しいのは、認めるけど、女子じゃないってことで」
真生「心が女子でも駄目ですか?」
瀬戸「い、いいと思うんですが……」
小夏「あんた、黙ってて」
瀬戸を睨む小夏。
瀬戸「は、はい」
小夏「……納得いかない。と言うか、ムリ」
真生「ヒドイな……」
律子「私はどっちでもいいけど」
瀬戸「ごめん、あの、そもそも何で逞しい女子が必要だったのか聞いていい?」
小夏「山にしても、海にしても荷物持ち、だるいから」
律子「自分勝手すぎ」
小夏「私はか細いし、荷物、持ちたくない」
瀬戸「あの、俺の立場は?」
小夏「男が荷物持つのは当然だけど、華がないっていうかつまらなさそうだから気にしてなかっただけ」
瀬戸「そ、そんな」
律子「くだらない」
小夏「私としては、見た目可愛くて、程よく力ありそうな女子を求めていただけで、私は一つも悪くない」
黙っていた真生が口を開く。
真生「それ、私でよくないですか?」
小夏「え?」
真生「男を出してしまったのは謝ります。見た目は女子ですし、力、あるし。わたし、もっと女子力磨きますから、駄目ですか?」
瀬戸「真生さん」
律子「認めたら?」
沈黙する一同。
小夏「……ごめん、無理」
瀬戸「ううーん」
律子「仕方ない…か」
瀬戸「あの、真生さん。すみませんでした」
真生「ううん、瀬戸さんが気にされることなんて一つもないです。今回は諦めますけど、もっと私…磨いてきます! 誘ってくれてありがとうございました」
頭を深く下げて、部屋を出て行く真生。
瀬戸「ああぁ……行っちゃった」
律子「面白そうな人だったのに残念」
小夏「アレはガテン系の男。だから、無理だし。中身が女子とかそういう問題じゃないっての! 要するに、もう一人女子を増やしたいだけ! 瀬戸は次こそ、本物の女子を探して来ること。分かった?」
瀬戸「ど、努力します」
小夏「まっ、また次考えればいいや」
律子「……解決出来そうにないサークル」
瀬戸「あ、あはは……」
了