番外SS
ふと思いついただけのお話です。本編とは一切係わりません。
パシャリ……と水が跳ねる。両手で上半身に水を掛け、身体の火照りを鎮めると、逆に、やけに熱を持った自らの手を意識する。
二度三度と手を開いたり閉じたりした後、もう一度、小川に身を沈める。流水が心地よく体を包み「ほう」と、吐息が漏れた。
川縁の藪の中から、シャゼムはその様子を眺めていた。息を殺している事もあってか「ゴクリ」と言う自らの唾を飲み込む音がやけにハッキリと聞こえ、慌てて口元を押さえる。
しかし、流石に距離が有る事もあり、川中の相手にはその音が聞こえた様子は無かった。その事に安堵しつつ、シャゼムは再び観察を開始する。
何と無く気拙い為、こうして、こそこそと隠れる様に見ているのだが、その実、魁人からは「覗くなよ」等と言われた訳では無い。果たしてそれは、信頼なのか、シャゼムがその様な行為をする等とは思っても居ない様子であった。
やや日に焼けた肌に水が伝う。掬い掛けられたそれは、鎖骨から胸へ、胸から腹部へと流れ落ち、そしてまた川へと返る。
その様子に艶めかしさを覚え、知らず、再びシャゼムは喉を鳴らした。
(!!)
と、鉄錆の様な臭いを感じ、シャゼムは焦る。
(血の臭い!? 油断した!!)
余程、眼前の光景に集中してしまっていたのか、その血の臭いがハッキリと分かるまでに接近を許してしまって居た事にシャゼムは舌打ちをする。
取り急ぎ、警戒する為の構えを取り、視線を血の臭いの元へと走らせ……
『…………………………………………………………………………………………………………………………エルニ?』
川の中を凝視し、鼻血を滴らせるエルニを見つけ、脱力した。
「……何やってんだ? あいつら……」
小川の中、練習後の汗を洗い流していた魁人は、岸辺で隠れている、シャゼム達の気配を感じ、呆れた様に、そう呟いたのだった。