番外VDSS
間に合った。
劇中は、まだ魁人が地球に居た頃のお話です。
咲流が部室を訪れた時、魁人は長机に突っ伏していた。眠っている……と言う訳では無く、ただ、体を休めているのだ。
(そう言えば、家に帰ると、まともに休めないとか言ってたっけ……)
前に魁人に聞いた事を思い出し(武道家のお家は大変だよね~)等と思いながら部室内に入る。大学のワンゲル部の部室は6畳程度の広さで、正面に大きく開いた窓が有り、その左横の壁には予定を書く為にホワイトボード、逆の壁にはスチールロッカーが6つ、中央に長机2脚とパイプ椅子が置かれている。
他の部員は居ないらしく、魁人只一人が部室の中には居た。
「……咲流……か?」
ゴロンと、魁人が入り口側に顔を向ける。半目に成っている為、ただでさえキツ目の表情が、更に凶悪さを増していた。
「はい! 可愛い後輩の咲流ちゃんです!」
「……そうか」
魁人が上半身を起こし、軽くストレッチをしていると、咲流は魁人の正面に座った。
「……何?」
咲流が机の上に置いた板チョコを見て、魁人がそう言う。
「チョコです」
「……登山用の備蓄食料なら、後ろのロッカーに……」
「……今日は2月14日ですよ?」
「うん、2月14日だね?」
咲流の言葉に、何を当たり前のことを……と言った感じに魁人が返す。
「……バレンタインデーって知ってます?」
「知ってるけど?」
質問の意図を掴みかね、魁人が困惑の表情を浮かべる。咲流は長い溜息を吐くと、もう一度、魁人に訊ねる。
「バレンタインデーは、何日ですか?」
「2月14日だろ?」
どうだ!とばかりに魁人を見る咲流だったが、当の魁人は「だから?」と言う表情を崩さず、彼女を見返す。
「~~~~~~!! だ~か~ら~!! 今日がバレンタインデー何ですってば!!!!!」
「あー……あぁ、成程……」
ようやっと得心行ったと言う表情の魁人に、咲流は溜息を吐く。
「バレンタインのチョコレートって事か」
「そうです!! 何で気が付かないかなぁ?」
肩眉を上げ、腕を組んだ魁人が「そうだね……」と考え込む。と、しばらくして「多分……」と、続けた。
「あまりに、自分と関係ない事なんで、関連づけて思い浮かばなかったのかな?」
「何ですか? それ?」
あまりと言えばあまりな回答に、咲流がガックリと肩を落とし、溜息を吐いた。
「で?」
「はい?」
「これは、俺が貰っても良いのか?それとも男性部員一同に?」
「……」
咲流は不機嫌になって「好きにしてください」と言うと、部室を出て行ってしまった。
後に残された魁人は……
(少なくとも、個人的には、お返しをした方が良いな……)
と、考えていたのだった。




