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通り行く横顔

作者: oku-to

携帯電話の明かりを照らすと、まだ21時だった。


席に隣接せず、ぽつぽつと埋まる日曜の山手線は、池袋、新宿と、絶頂を迎える頃の繁華街を当たり前のように通り過ぎていく。


好きな人はいますか?


たまたま参加した飲み会のあとの帰り道に、唐突に訊かれた。


いまは、いなかったしその人のことを嫌いと思っていた訳じゃないけど、ふいをつかれたので、


いないけど、ちょっといます。


と、面倒な答えをしてしまった。


電車の中で、よくなかったかなと思ったけど、きっとそんな返しをしてしまうその人とは巡り合わせがよくないのだと、なぜか達観的な気持ちが浮かんで、すっと後悔の念が消えた。


ちょうどその時に、池袋の街のネオンがはじまり、まあいいかと思ったころには、電車は新宿に向けて走り出していた。


でも、私が通り過ぎて行く街の中で、一生に一度の選択をしている人や生涯を決める思いを伝えている人もいるかもしれない。私の答えもそうかもしれないけれど、通り過ぎて行く人たちも、同じように成功と失敗を繰り返し、生きている、

不思議と、そんなことを考えた。


過ぎ行く時間は戻らないし言ってしまったことは取り返しがつかない。


新宿に到着した電車は、しばらく停車していた。


東京に暮らして20年ほどになるが、ターミナル駅だと再認識させられる。


センチメンタルな気持ちが私を包んで、通り過ぎてしまった、さっきの男の人を思い浮かべる。


もしも、好きな人はいないし、今日は楽しかったです。


と言えていたら、未来に変化があったのだろうか。


…、でも時間は戻らない。


停車していた電車が再び走り出した。来た道を引き返すように。


予想と違う電車の動きに私の重心がぐらついた。


電車の窓には新大久保の街並みを抜けて、高田馬場を迎える直前だ。


私はセンチな気持ちを速攻で殴り捨てて、

し時間は戻ることもあるかもしれないし、状況によってはなんでもあり。

と、自分に言い聞かせた。


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