第九十五話 前人未到の山中(3)
第九十五話です、よろしくお願いします。
想像以上に話が進みませんでした。
書く際に結構キャラの動き任せなところがあるのが原因なのは分かってるんですけど。
街の方で零を連れ戻す算段を検討しだした頃、零は未だに山の中を歩き通していた。
零の場合は元が魔力のない生活をしていたせいか、この世界の人のように『体力≒魔力』ではなく『総合体力=魔力+元々の体力』の様な物だ。しかも、生命維持にも消費するこの世界の人達と違って、零はその分も体力に丸々使える利点がある。
常時供給される魔力のみを使い、元の体力の方を使わないで済む分ほぼ無尽蔵に近い体力のお陰で、零は山道でも空をスイスイと行くフェリシアになんとか追いついていった。
零がそんな風に追いかけていると、フェリシアは急にその動きを止めて振り返った。
「もうそろそろ着くわ。でも、レイはちょっとそこで待ってて」
「ここでって……どこかも分からないのに置いて行かないでよ」
「『ヒューマンの子を連れてきた』っていったん説明に行くだけ。すぐ戻るわ」
「あ、フェル!」
フェリシアはそのまま零を置いて飛び去ってしまった。
下手に動いて迷うのも困るため、零は仕方なく適当な切り株に座り込んだ。
(――――って、普通に座ったけど『切り株』? 人はこの山に入ったことがないはずだから、妖精がこの木を切ったってこと?)
零は妖精が木に斧を叩きつける所を想像する。
フェリシアは確かに零を持ち上げたのだがそれはあくまでぶら下げての話だ。体に見合わない重いものを持つときは、ほぼ必然的にそうなるのだろう。
その妖精が持てる様な斧を考えると、同想像しても木とサイズが合わなすぎた。
ノコギリで切るにも長さが足りないだろうし、2人で両側を持つ様な物でも途中で木の重みで挟まって動かなくなりそうだ。
(ああ、でも妖精が魔法を使えるならそれで切れば良いのかな? それなら大きさは関係ないだろうし)
などと考えていると、零の耳に声が聞こえ始める。
「遊んでたらお腹すいちゃった~」
ただし、それはフェリシアの飛んで行った方向の逆からだった。
「あ、さっきこんなの採ってきたの。あそこで食べよ?」
「そうだな~……あれ? 何かいる」
零もその時に振り返って確認すると、丁度2人の妖精と目があった。
「…………えっと、こんにちは」
何を言えば良いのか分からなかった零は、とりあえず挨拶をしてみた。
「こんにちは。ずいぶんデカイ子だな? こんなの居たかな?」
「違う、この子妖精じゃない」
「う~ん、一応ヒューマンになるのかな? 零って言います」
「ヒューマン!? あの谷を抜けてきたのか!?」
零が簡単に自己紹介をすると妖精たちは驚いた。まあ、いない筈の者がいたら誰だってそうだろう。
「えっと、僕が谷を抜けてきたんじゃなくって――――」
零はここまで来たいきさつを妖精達に話し始めた。
「あ~、フェルか」
「確かにあの子ならやりそう…………」
「本人は説明しに行くから待っててって、どこかに行っちゃったけど」
「そこにアタイらが来たのか」
「と言うことはレイは被害者、ヨシヨシ」
何やら慰められ出した零であった。
「わたし達もフェルを追って町に戻る?」
「向こうがここに来るって言うなら行き違いになるんじゃ? それでも食べながら待ってりゃいいだろ」
「あなたはただ食べたいだけだと思う」
「バレたか」
妖精達は何か木の実や黒くて丸いものを手渡して食べようとする。それを見た零は、そう言えば今日はまだ何も食べていないのを思い出した。
零はコッソリとウィルスからクッキーを取り出して食べ始める。本来の用途の非常食だ。
すると、気づけば妖精達が零の手元をじっと見つめて固まっていた。
「なあ、その甘い匂いのものって何だ? 美味いのか?」
「あなたはもっと遠慮を覚えた方がいい。でも……ジュルリ……」
どう見てもどちらも欲しいと言わんばかりであるのは丸分かりだったので、零は更に追加して取り出した。
今回は包装を半分取りきってから渡す。
「はいこれ。一本づつだよ」
ウィルスで収納している分は非常用にそこそこ数を入れてあり余裕はあるのだが、フェリシアという大食いの前例がいるので釘は刺しておいた。
「おっ、あんがとな。モグモグ…………おお、うめぇっ!」
「催促したようで悪いけど、でも貰えるなら貰う。モグモグ…………ん~、しあわせ~」
どちらも美味しそうにクッキーをかじってゆく。想像はしていたが、やはりこちらもフェリシアと同じく、体に見合わないような量がドンドンお腹へと収まっていった。
「こんなのをただ貰うってのは悪いよな」
「見合わないかもだけど、代わりに食べるはずだったこれをあげる」
そう言って妖精達は本来食べる筈だった物を零に手渡した。一種類はそこらでも見かけるような木の実であったが、もう一種類の黒い塊はと言うと…………。
「あれ? これってトリュフ?」
零は一度だけ嗅いだことのある匂いから判断した。
「知ってるのか? アタイらもこの山でしか見たことないキノコなんだぞ?」
「いい匂いのするキノコ。わたしは結構好き」
やはりトリュフで合っているようだった。生物の出入りがほとんど無い土地のせいで、こちらでは山の外には広がらなかったのだろう。
予想外の食材の発見に零は内心でワクワクしていた。
(さすがは未開の山。ひょっとしたら他にもまだ見かけない食材が眠ってたりするのかも?)
時間があったら山自体も案内してもらいたいと、街で残された四人が悩んでいるのも知らずにのんきに考えるのだった。
「ゴメンゴメン、遅くなちゃったわ」
零が待ち始めてからもうすぐ二時間が経過しそうな頃、ようやくフェリシアが戻ってきた。
「もう、本当に遅いよフェル」
零もさすがにここまで掛かるとは思っておらず、すっかりと待ちくたびれていた。
「いやぁ~、レイのこと説明したら『何やってるんだ~』って怒られちゃって。説教が長い長い…………」
うるさかったと言わんばかりに耳に手を当てて、フェリシアは苦言を漏らす。
だが、そんなフェリシアに予想外の追撃が来た。
「あったりまえだろ? 人一人連れてきて問題にならない方がおかしいっての」
「わたしも同感。フェルはいつも考えが足りてない」
零の後ろから2人の妖精がヒョコリと姿を現し、フェリシアにツッコミを入れた。
突然の事に、互いに見知っているはずのフェリシアはうろたえる。
「アナタ達…………なんでレイと一緒にいるの!?」
「フェルがレイをここで待たせてる間に通りかかった、ただそれだけだぞ?」
「ホント、この山でヒューマンの子を見たからビックリした。でも、フェルが原因なら納得」
2人の妖精はウンウンと頷きあった。
「なにかバカにされてる気がするじゃない?」
「気のせ~気のせ~」
「そ~そ~」
「その返事、無性にイラッと来るわ……」
ぞんざいに扱われたフェリシアを置いて、2人は話を進める。
「そんで、出会った後で食事にしようと思ったらレイが美味そうなものを食べ始めてな」
「それをわたし達も分けてもらって、食べながら待ってた」
フェリシアはある言葉に反応して零に詰め寄った。
「美味そうな? レイひょっとして…………」
「うん、2人にクッキーを」
「ずるい、アタシにもちょうだい!」
約束もあるので、零はフェリシアにクッキーを渡した。
「おお、まだあるんだ! アタイにももう一個!」
「だから、あなたはもっと遠慮を……ジュルリ……」
「はいはい、分かったから……」
結局、零は全員にクッキーをあげることになり、食べてる間に再び待つ羽目になった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
妖精が増量中。
メイン以外も含めてまだ増えそうです。書ききれるかな……。




