第九十二話 前人未到の山(5)
第九十二話です、よろしくお願いします。
投稿しようとしたら何度も何度もサーバーエラーが……。
今回はちゃんと投稿できてるかな?
零はその後もフェリシアにスマホを少し弄らせてみたりした。
フェリシアは零に言われるままにスマホに触っていき、その度に変化する画面に毎回驚きを露わにしていた。
幾つか弄らせたアプリの中ではフィオナ達と同じようにフェリシアもゲームが一番気に入ったようであった。入れているアプリの中では一番リアクションが大きいので、ある意味当然なのかもしれない。
「あはは、これ面白い! ちょうだい?」
相当気に入ったのか、フェリシアは零にスマホを強請ってきた。だが、これは零の数少ない地球から持ってきたものの一つだ。
「えぇっ!? これはダメだよ!」
「え~? ケチ……」
零が断ると、フェリシアは口を尖らせた。
「あ~あ、いいオモチャだったのに」
それでも渋々ながらスマホを返してくれたので、フェリシアも無理強いするつもりはないのだろう。しかし、それでも代わりのものを強請るのは忘れないようだ。
「ん~、何か他に面白いのはない?」
「他のって言われても――――ん?」
零がフェリシアに返事をしようとしていると、フェリシアを見るために起動していたセンサーに見覚えのある反応があった。
「この姿は……」
零は再度反応を確認した。
「どうしたの?」
「……みんなが帰ってきた」
「え? どうして分かるの?」
「僕がフェルを見てるのの延長と言えばいいのかな? それである程度遠くまで分かるんだよ」
零が説明をするとフェリシアは納得しかけたが、そういえばと思い直して零に尋ねる。
「アタシが真上に居ても気付かなかったのに?」
「その時は見ようとしてなかったからね」
「ずっと見えてはいないのね」
「あ、でも視界にいれば居ることは分かるから」
そうやり取りをしている間に、フィオナが一番に宿の入口までたどり着いた。フィオナは振り返って三人に呼びかけているようだ。
「おっと、もう少しでこの部屋に戻ってくる」
「ん~、今は我慢するしかないかぁ」
フェリシアは少し残念そうにしながら、零に飛んで近づいてくる。
零はそれを目で追っていったのだが、フェリシアがほぼ真上に来た時に服の中身が覗けてしまった。無論、下着は零が伝えたばかりで妖精にまで広まっている筈がない。
零は慌ててそこから目をそらした。
「あ、ちょっと! いきなり動かないで!」
フェリシアは零が頭を動かした事について怒りだした。
「う、動かないでって言っても。どうするつもりなの?」
零はフェリシアの方を見ることが出来ずに俯いていた。
「こうするの。えいっ!」
フェリシアは零の頭の上へポフンと仰向けにダイブした。
「ん~、フワフワ~。やっぱり寝心地いいわ~」
「え、フェル、まさかそこに居座る気!?」
「もちろん! どうせ他の人には見えないし、問題ないじゃない?」
フェリシアは図々しく返事をした。
零はフェリシアを帰す理由が思い浮かばずに、「まあ、そうだけど……」と弱々しく言うぐらいしか無かった。
――――――――――――――――
フェリシアが零の頭に乗ったまま夕食の時間が訪れる。
目の前には既に運ばれてきた数多くの料理が並べられていた。
「どうやらここも量が多いみたいよ?」
「美味しそうなのはいいのですが……」
「胸焼けしそうじゃな……」
「どうするのぉ~? 今日はフィー達しかいないよぉ~?」
そんな感想が飛び交う中、フェリシアは零の頭の上でうつ伏せになった状態で零に小声で問いかけてきた。
「ひょっとして余っちゃう訳?」
「そうだね。前の宿でもこれぐらい出てきて、その時は7人で丁度いいぐらいだったから」
零も周りに聞こえないように返事をすると、フェリシアはニンマリと笑った。
「ん~、それならアタシがちょっとぐらい食べても問題ないんじゃない?」
「まあ、多分。……バレないようにね?」
「やたっ! 話がわっかるぅっ!」
フェリシアは感謝を表すかのように、ヒシっと零の頭に抱きついてきた。
その時、2つの柔らかいモノが押しつぶされて形を変えるのが零に伝わってくる。
零はそれがフェリシアのどこの事かに思い当たり、思わず赤面した。
「あれ? レイったら顔が赤いわよ? 何かあったの?」
それに気がついたセアラが心配そうに問いかけてきた。
「う、ううん。何でもないよ。しいて言えばお酒があったから、イーヴァを介抱した時のことを思い出しちゃったくらい……」
零は誤魔化して、イヴァンジェリンに責任転嫁した。イヴァンジェリンは面白いように狼狽える。
「んなっ! レ、レイよ、それはもう忘れて欲しいのじゃぁ……」
セアラ達はそれで誤魔化されたようだった。
だが、零の頭上からボソリと呟く声が聞こえてきた。
「マセガキ」
零はビクッと反応してしまう。
「おねーさんのカラダにこーふんしちゃったかな~? 頭に乗ろうとした時もはずかしそ~だったし~」
少し粘りつくような口調でフェリシアが問いかけてくる。
零はなんと言えばいいか分からずに、ただ無言でいるしかなかった。
「まだ10歳にもなってない頃からこれじゃ~、オトナになった時が心配じゃない~? このこの~」
心配と言いつつもフェリシアは更に体を押し付けてくる。完全に零をからかっているようだった。
しかし、零には一つ訂正しておきたいところがあった。
「フェル、違うよ。僕はいま15歳だよ」
「またまた~。背伸びしちゃって、かわいいやつめ~。うりうり~」
「本当なのに~」
零としてはもっと反論がしたかった所だが、そこまで言った所でみんなが席につき始め出してしまった。
零も慌てて席につくまでの間、結局フェリシアには良いように言われっぱなしとなってしまうのであった。
食事が始まると、フェリシアは零の頭から離れて周りを見渡しだした。そして、零以外の視線が目標の物からそれたのを見計らってそれをつかみ取り、急いでテーブルの影に隠れて食べだした。その少し後にはフェリシアが持っていたものはキレイに無くなっていて、早くも次の目標に目を光らせているのだった。
「あれ? ここにもう一つあったと思うのですが……誰かが食べたのですかね?」
たまに不思議がられる事もあったが、他の四人が食べたのだろうと零以外の四人は勝手に納得していく。そうやってフェリシアは気づかれないようにドンドン皿の上の物を奪い取っていき、ついには全員で全ての料理を食べ尽くしてしまった。
「あれ? もう残ってないわよ?」
「本当じゃ。全部食べてしまったのじゃ」
「でも、そこまで食べた気はしないのですが……」
「フィーもまだまだ食べられるよぉ~。あれぇ~?」
四人が不思議がる中で、零だけがその原因を見つめていた。
テーブルの上で仰向けに寝転がる極小さなソレは、常人の2人分以上を食べても尚体型に何の変化も生じさせずに、満足そうに笑みを浮かべていた。
ソレはムクリと起き上がると、苦しさを少しも感じさせずに悠々と零の頭に飛び乗ってくる。
「ん~、美味しかった。でも、まだあの甘いものも食べたいかな」
夕食で食べた量は明らかに当人自身の体積の十数倍に及ぶ。それでもまだ追加でクッキーを追加で食べようとするその食欲に、零は驚きを通り越して感心を覚えるのであった。
「で、寝るのも一緒なの?」
「こんなに広いんだからいいじゃない」
「はあ……」
体を水で拭いた後、パジャマに着替えて眠る頃になってもフェリシアはまだ零と一緒にいた。
ちなみに、零が体を吹いている間にフェリシアは水の入った桶の中で水浴びをしていた。その際にフェリシアは突然零の目の前で服を脱ぎ、零の反応を見てからかうのも忘れなかった。
フェリシアはベッドに転がると少し愚痴を言う。
「ん~、人の作る布はやっぱりゴワゴワね。これはまだマシな方だけど」
「そう? 結構良い手触りな方だと思うけど」
こちらの高級品に対して零の評価が低めなのは文明の利器の影響の有無による品質の差があるのだが、フェリシアが酷評をする理由が分からずに首を傾げる。
「ああほら、私達妖精って人に比べて小さいから、人にとっていい布でも糸が太いし目も荒く感じるの。アタシの服を触れば分かるかな?」
「へぇ~、ちょっとごめん……」
零は遠慮がちにフェリシアのワンピースの裾を触って確かめる。すると、確かに地球でも触ったことのないような繊細でなめらかな布の質感を感じられた。
「なる程。普段からこんなのを着てるんだったら、このベッドで不満なのは納得だよ」
「ねっ? いいでしょ」
「こんな物が作れるなんて……ちょっと妖精の暮らしに興味があるかな」
「え、どんな風か知りたい?」
「うん、教えてくれるの?」
「それぐらいなら構わないわ。……でも、それなら……うん」
フェリシアは一人でうんうん頷くと零に条件を言う。
「じゃあ……明日になったら色々と教えてあげる!」
「え、明日?」
「そう、明日。だから早く寝ちゃって? その間に準備するから」
「準備がいるの? まあ分かった、早く寝ることにするよ」
零はそう言って部屋の明かりを消し、ベッドの中に潜り込んだ。
「そう、じゃあアタシは準備をしてくるから。レイ、お休み」
フェリシアはそう言って窓から飛び去っていった。
――――――――――――――――
「――――ん、朝?」
朝の陽射しを浴びて、零はゆっくりと目をさます。周りからは小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
零は寝ぼけ眼を擦ろうとする――――が、何故か腕が動かない。朝なのに金縛りかと思い、零は焦ってそのまま目を開けた。
そこで零が目にしたのは――――
「ナニコレ?」
――――木々の間から見え隠れする、よく晴れた青空であった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
フェリシアの胃袋は、作者の中で完全にブラックホールと化しました。
さて、零はどうなったでしょうか? 分かる人のほうが多い気もしますが。




