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第八話 街を目指して(4)

第八話です。よろしくお願いします。

新しくブックマークしてくれた方、お気に入り登録してくれた方、本当にありがとうございます。


一話から二十話までを改稿しました。('15.05.03)

話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。

そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。

また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。

「――い! おい! レイ、しっかりしろ!」

「――ぅ、……えっ? あ、あれ? 僕は……、うっぷ!」

 零は呆然と座り込んでいた。エリンの呼びかけで気を取り戻したが、また盗賊の死体が目に入り顔が青ざめ胃液がこみ上げてしまう。

 その様子を見てエリンは死体を零から隠すようにして話しかける。

「あっちに居た盗賊は片付けたんだが……もう一人いたのか。レイ、お前は無事なようだな。何があったか分からないが、怖い目に合わせて済まなかった」

「……うん。……ありがとう」

 気遣いのお陰で零は少し立ち直ることが出来た。だが、考える余裕が生まれた事で零は重要な事を思い出す。

「っ、そうだ! 大変なんだ! クローシェが矢を受けて倒れたんだ!」

「なにっ!」

 零は御者台に案内する。クローシェは肩に受けた矢の場所から血を流して倒れていた。意識はなく顔面蒼白で、息も浅く乱れていた。

「傷自体はそこまでのものじゃない……ちいっ、毒か!」

 ドワーフの人がクローシェの様子からそう判断すると、盗賊の後始末をしている三人に向かって叫んだ。

「おい、クローシェさんが毒を受けた! 毒消しをこっちにくれ!」

「ええっ!? わ、分かった! すぐに行く!」

 作業を中断して三人共が御者台に駆け寄った。

 クローシェに刺さっている矢が引きぬかれ、木で出来た容器の蓋を開けて中身を傷口に直接塗りつける。しかし、少したっても毒の症状が改善される気配はなかった。

「くそっ! ただの毒じゃないのか!」

「そんな! 毒消しはこれしかないのに!」

「おい、このままじゃクローシェさんが!」

「街まで急いで……。でも、この様子じゃ間に合うかどうか……」

 毒が治らない事に護衛の四人は狼狽えていた。その中で零はふと思ったことを口にする。

「ねえ、昨日僕に向かって飛んできた炎って魔法なんだよね? 魔法で解毒とかって出来ないの?」

 零の疑問に対してアビーが答える。

「確かに解毒の魔法はある。でも、私には使えない。治療系の魔法が使える人自体が珍しいから……」

 零は答えを聞き思い悩んだ。このままではクローシェの命が危ない。方法ならある、でも――

(――いや、躊躇(ちゅうちょ)してる場合じゃない。クローシェは異世界から来たなんて得体のしれない僕でも受け入れてくれたんだ。ここで動かなきゃ絶対に後悔する!)

 零は決意を固めると引きぬかれて捨てられた矢を拾い、先端を解析し始める。何度かシミュレートを繰り返し、毒の成分を突き止めていった。

「矢なんか見つめて、どうしたの?」

 解析をするために矢を見続けたのが変に思われた様だが、気にしてる場合ではない。零は解析の結果を踏まえてプログラムを作り始めた。

 プログラムを作るときの違和感は今もまだ慣れてなく、零はその場で(うずくま)ってしまう。

「おい! しっかりしろ! お前も矢を受けたのか!?」

「……ち、違うよ。……少し気分が、良くないだけだから」

「血のついた矢なんか見てるから……」

 誤解を受けるものの、今は詳しく説明が出来る状態でもないため我慢をする。そして、そうこうしている内にプログラムが完成した。

「レイ! 落ち着いたなら馬車に乗れ! 間に合うか分からないが街まで急ぐ!」

 違和感から開放されて零が立ち上がると馬車に乗るように告げられる。だが、零はそれを断った。

「待って!」

「どうした! 早く!」

「毒なら、僕が治す!」

 零はそう言い放つと御者台の上に飛び乗った。みんなが一体何をと思う中で零はクローシェに向かい手をかざし、プログラムを起動した。

 プログラムを起動した途端に零の手の先から光が発生する。実際は光らせる必要は無いが自分で効果範囲を確認するためにあえて光らせた。魔法だと誤認させる狙いもある。魔力が分かるとしたらそれまでなのだが。

 プログラムの内容はもちろん解毒である。ただし、今回は急いでいたため解析した毒のみを強制的に水や二酸化炭素等に分解することしか出来ない。他の毒に対応するのは今後の課題だ。

 零は自分も動きながら手をクローシェの頭の方から順に動かしていく。隙間なく出来たとは思うが念の為に二往復させた。

 零がクローシェを解析をすると毒はもう残っていなかった。様子を見ると、意識や傷はそのままだが顔色や呼吸はだいぶ落ち着いている。危険な状態は脱したようだった。

「毒は消えた。でも、もう少し待ってて」

 零はそう四人に伝えたが、信じられない物を見たかのように固まって動かない。どうしたのかを聞こうかと思ったが、零もまだすることがあるので後回しにした。

 零はその場にしゃがみ、肩の傷を治すためにもうひとつプログラムを作り出す。反対側の肩を参考にして組織のつながり方を設定していたため少し時間は掛かった。

 肩に手をかざしてプログラムを起動する。ちゃんと設定おかげもあり傷が綺麗に無くなった。

「よし、これで大丈夫!」

 治療が終わっても四人は固まったままだった。仕方なく零が四人に向かって呼びかけると数度目でようやく反応があった。

「えっ? あれ? 今のは?」

「だから、クローシェの治療をしたんだけど」

 四人は御者台に集まりクローシェの容態を確認する。今は傷も消え、呼吸もゆっくりとしていて、ただ眠っているだけの様だった。

「本当に治ってる……」

 クローシェの確認が終わると四人は一斉に零の方に向き直った。みんな目を見開いた状態だったので零にはその光景が怖く見えて思わず後ずさった。

「なあ、レイ。お前、男って言ったよな?」

「男だけど?」

「私達は確認してない」

「クローシェさんが服の上から確認しただけだしね」

「というわけで……」

「確認させろ!」「確認する!」「確認します!」「確認だ!」

 クローシェが近くにいることもあり暴れられず、四人が一斉に手を伸ばしてくる。零は御者台から転げ落ちるようにして何とか逃げ出した。

「うえぇえええええええぇっ!? ちょっと待って! 昨日は納得してたでしょうが!」

 馬車の周りで逃げ回りつつ零が抗議をする。

「あんなもの見せられて納得できるか!」

「なんでそうなるの!?」

理由がわからないまま逃げまわるが、馬車の周りで逃げているだけの上、四人相手に逃げきれるわけもなく、結局は一番足の早いアビーに掴まることになった。

「じゃあ、見せてもらう」

「うわあぁぁああああああぁっ!!」


――――――――――――――――


「……ぅ……ん。……あ、あれ? 私は――」

 零達が騒いでいたせいか、気を失っていたクローシェが目を覚ました。

 クローシェは少しぼんやりとしていたが、すぐに何があったかを思い出した。

「――あっ、レイ!? みんな!? どこなの!?」

「クローシェ!? ここだよ! たすけて!」

 零の声がする方にクローシェが目を向ける。しかし、そこで見たものは盗賊に捉えられた零の姿ではなく、何故かアビーに組み伏せられ剥かれ掛かった零の姿だった。

「え!? えぇえええええぇっ!? ちょっ、何をしてるのよ!?」

 意味不明の状況に、クローシェは矢を受けたことも忘れてアビーと零を引き剥がしにかかる。そこに残りの三人も合流した。

「おっ。捕まえたか」

「あれ? クローシェさん? もう起きて大丈夫ですか?」

「クローシェさんも協力してくれたのか」

 一人が暴走しているのではなく全員が零を捕まえようと動いていたようで、三人の言葉にクローシェはますます混乱した。

「逆よ、逆! レイが掴まってたから助けようとしてたのよ! って、なんでみんながレイを追いかけてるのよ!? なんで脱がそうとしてるのよ!? 第一、盗賊はどうしたのよ!?」

「盗賊ならもう片付いた。レイを追いかけてた理由は、自分の肩を見て」

 アビーの説明でクローシェは自分の肩を見る。服には穴が開いて血がベッタリとついていた。そこで自分がどうなっていたかを再び思い出した。

「……そういえば、突然矢が飛んできて刺さったはず。なんで痛くないの?」

「レイが治療した」

 クローシェは少し驚いたがこう見えて15歳の零だ、誰かに手当の仕方をを教わったのだろうと思った。

「えっ? そうなの? レイって手当の知識とかもあったの? ありがとうね」

「違う。もっとよく見て」

 しかし、それは否定される。クローシェは仕方なく服をずらして肩を露出させた。そしてそこでクローシェは目を見開いて驚いた。

 肩は血で汚れていた、怪我をしていたのでそれは当たり前のことである。しかし、それ以外がなかった。包帯も、あて布も、血止めの薬らしきものも、それどころか傷口そのものすら見当たらないのだ。

「……これを、レイが?」

「そう。しかも矢には毒があった。持ってた毒消しでも効かなかった」

「まさか、それも?」

「そう。どっちもレイが手から出した光を当てて治してた」

「……そういうことね。分かったわ」

 クローシェは服を戻して納得した様子で頷いた。そして、突然零の肩を掴んだと思うととんでもないことを言い出した。

「レイ! もう一回確認させて! 今度は直接!」

「ちょっとぉおおおおおおおおおおぉっ!? クローシェまでぇええええええええぇっ!?」

 味方が完全にいなくなった零に為す術があるわけもなく、抵抗したもののスボンもパンツも簡単に脱がされていく。零は諦めの境地の中「ああ、またか……」とつぶやいた。

 そして、五人にしっかりと見られた後でようやく開放された。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

追いかけられた理由は次回なんですが……分かる人は分かりますよね。タグにもありますし。

続きは出来次第投稿します。

できれば現状のペースは維持したいところですね。

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