第五十一話 ◯◯が増えるよ(2)
第五十一話です。よろしくお願いします。
今回もギャグ回です。まあ、外に出ない場合は大抵そうなりますが。
サブタイトルの◯◯は後で変更します。言い回しから想像が付くかもしれません。
零はセアラと共に家に帰る途中、とある店先で気になるものを見つけた。
そこにあったのは陶器製の小瓶だったのだが口元はしっかりと栓がされ、その上から更にロウで固めてあった。
零はセアラに瓶の中身を尋ねてみる。
「なにこれ? 随分と厳重に密封してあるけど」
「それ? それは魔獣避けの薬よ」
「へぇ、どうやって使うの?」
「封を開けて置くか持ち歩くだけよ。……ただ、それって物凄く臭いのよ」
「どおりで密封してあると思ったら……」
零は嫌そうに顔をしかめて小瓶を見つめる。
その時にふと一体どんな物なのかと思い中身を解析した。
そして、それの結果を確認すると意外な結果がはじき出されていた。
「――うん、これを買おう」
零は結果を見て他のあるものと一緒に購入をすることに決めた。
「……まあ、いいと思うわよ。でも、出来るだけ使わないでちょうだいよ」
臭いと言ってただけはあって、セアラはこれが苦手なようだ。
有効性があるので認めたが、セアラは後で零にこれを買わせたのを後悔することになる。
「ただいま」
「お姉ちゃん、ただいま」
「あ、二人共おかえりぃ~」
買い物を終えて家に帰るとフィオナが出迎えた。
フィオナは零達を見ると、すぐにそれぞれが持つ物に興味を示した。
「ねえねぇレイくん、それってなぁ~に?」
「これは……はい」
零は持っていた物の三つの内の一つをフィオナに見せる。
すると、フィオナは明らかにガッカリした表情を見せた。
「魔獣避けぇ~? フィーこれ苦手ぇ~」
臭い物なので当然なのかも知れないが、フィオナもこれは駄目らしい。
零は自分のこれの使い道を考えると苦笑するしか無かった。
「他のはなぁ~に?」
フィオナは気を取り直して零の持つ残りの物に興味を示す。
零はそれに応えてもう一つの瓶からフィオナに見せた。こちらは大きめの瓶だ。
フィオナはそれから微かに漏れる匂いに気がつくと、零に断って栓を開け中身を指に垂らす。そして、それを一舐めした。
「黒蜜ぅ~? 蜜なら家にあるよぉ~?」
この家には精製後の透明度のある蜜があるのだが、零は今回あえて未精製の黒蜜を買ってきた。
「あと一つはなぁ~に?」
「これは卵だよ」
最後は鶏の卵10個だった。
卵の大きさは日本でのLLサイズとそう変わらない。それがあそこまで大きくなるのだから、その成長率には零は驚いた物だった。
「黒蜜と卵で一体どうするのぉ~?」
「それが、レイったら教えてくれないのよ。あ、でもこの家の他の食材も使いたいって言ってたわよ」
「まあ、どうなるかは後のお楽しみという事で」
「むぅ~、レイくんのイジワルゥ~」
フィオナは不満そうにぷくっと膨れてしまう。
セアラはそれを宥める。
「まあまあ、お姉ちゃんそう言わないでよ。レイもその時はちゃんと教えてくれるんでしょ?」
「うん。今晩に作ってみたいと思ってるからその時に……っと、そうだ! 何ならフィーやサラも一緒に作ってみる? 多分こっちに無い料理だし」
「わ~い、お料理ぃ~! 作る作るぅ~!」
「それって異世界の料理と言う事よね? いいわよ、私もやってみたい」
零は思いつきで提案してみただけだったが、思いの外二人が食いついてきたため少し気圧される。
「あ~、余り期待はし過ぎないでね? 向こうでは一般的で全然豪華な物じゃ無いし、ひょっとしたら口にあわないかもしれないから」
「別にいいわよ。味なんかそれこそ後のお楽しみでしょ?」
「それに豪華じゃなくてもいいよぉ~。フィー達も屋台でよく何か買って食べてるもんねぇ~」
「ならいいのかな? じゃあ、もう少ししたら手伝ってね」
「分かったわ」
「よろしくねぇ~。――じゃあ、今度はサラちゃんの持ってる物はなぁ~に?」
零の持ち物の話題が終わった所で、フィオナはセアラの持ち物に注目した。
「ちょっと待って…………はい、お姉ちゃんの分よ」
そう言ってセアラが袋から取り出したのはブラジャーとパンティーだ。
店での試着時に出された物でセアラはそれを持ち帰っていたのだった。
「新しい服ぅ~! ディアちゃんが着てたのに似てるねぇ~」
しかし、フィオナは目の前に出された物を広げた後は眺め回すばっかりであった。
そして、フィオナはしばらくして一言。
「これって、どうやって着るのぉ~?」
昨日にディアの下着を脱がせた時もフィオナは強引に外して行っただけであり、パンティーはともかくブラジャーの構造的な所はさっぱりである。
セアラはフィオナに一応付け方の説明をする。
だが、やはりと言おうかフィオナは余り理解ができなかった。
セアラはヤレヤレと思いつつも、フィオナのパジャマを脱がして実際に付けさせながら説明をしていった。勿論ながら零には視線を逸らすなとお達しがあった。
その後、十回程繰り返してフィオナはようやく一人でブラジャーを付け外し出来るようになった。
ちなみに、ブラジャーは脱着しやすい筈のフロントホックなのにこの回数であり、これでも理解できただけマシな部類なようである。
「できたできたぁ~!」
フィオナは一人で付けられた為に、嬉しさで落ち着かずその場ではしゃいでいた。
しかし、その格好は未だにブラジャーだけであり、見えてはいけない所が隠れずに動き回る為に、零は別の意味で落ち着けずにいた。
零が悶々としている中、フィオナがある程度落ち着いた所でパンティーを穿いた。
こちらは流石にすぐ分かるかと思いきや一度前後を逆にしてしまう辺りがフィオナらしかった。
「ねえねぇ、似合う~?」
無事(?)に下着を付け終わった所で、フィオナはその場で回って感想を聞いてくる。
フィオナ用の物は本人の好みに合わせてか、試作でシンプルに近いとはいえ全体的に可愛らしさがあるデザインであった。
セアラは手放しに、零は恥ずかしそうに似合ってることを告げる。
「うん、いいと思うわよ。さすがはお母さんよね」
「そうだね……可愛いし……似合ってると思うよ」
「ありがとぉ~! あ、ちょっと部屋に行って鏡を見てくるねぇ~」
フィオナはお礼を言った後でパジャマを持って自分の部屋に向かった。
零はどうせだからそのまま着直すのかと思ったが、フィオナが部屋から出て来て戻ってくると手には何も持っておらず下着姿のままであった。
「ただいまぁ~」
「ブッ! え、ちょ、パジャマは!?」
「置いてきたよぉ~」
思わず吹き出してしまった零に、フィオナは普段通りの調子で答えた。
「いや、『置いてきた』じゃないって! 何で着てこなかったの!?」
「? だって、もう服着てるよぉ~?」
フィオナは下着をよく理解していないようだった。
零はどう言った物かと考えてからフィオナに話す。
「フィー。それらは服の下に付ける防具みたいなものだから、上から服を着ようね」
「そうなのぉ~? こんなに可愛いのにぃ~」
「普段は見えなくても、変なものよりは可愛い方がいいでしょ?」
「そうだけどぉ~、ちょっともったいないよぉ~」
「普通の服だって重ね着したりするんだから一緒だよ。……お願いだから早く着て来て」
「はぁ~い」
少し残念そうにしながらフィオナは部屋に戻りパジャマを着てきた。
そして、零はそれを見てようやく落ち着くことが出来た。
「ふぅ、何か試験の時より疲れたね」
「レイくん、試験がどうしたのぉ~?」
零の口からつい漏れた言葉にフィオナが反応した。
「レイは今日ギルドで、限定付きとはいえ中級の試験を受けたのよ。結果は合格よ」
「おぉ~。レイくんってギルドに登録したばっかりだよねぇ~? すごぉ~い!」
「だから今度からはレイと一緒に依頼を受けることも出来るわよ」
「いいなぁ~。フィーも一緒にいきたいなぁ~」
「お姉ちゃんは体調を戻してからよ」
「むぅ~」
余程羨ましいのか、フィオナは剥れながらセアラを見つめている。
「早く良くなりたいなぁ~。良くなるにはやっぱりいっぱい食べればいいのかなぁ~?」
「まあ、間違ってはないと思うよ。食べ過ぎはかえって良くないけど」
「そうだよねぇ~。じゃあ、さっそくレイくんと美味しいものを作って食べよぉ~」
フィオナの独り言に零が口を出すとフィオナは意気揚々と宣言した。
そこにセアラからの突っ込にが入る。
「お姉ちゃん、意気込みはいいけどまだちょっと早すぎると思うわよ?」
だが、零はちょっと考えて二人にそれを伝える。
「う~ん、今からでもいいかも。一つ時間が掛かりやすいものがあるし」
「そうなのぉ~? じゃあ、早く早くぅ~!」
「あ、ちょっとお姉ちゃん!? もうっ!」
セアラは零をグイグイと引っ張るフィオナを追いかけてキッチンへと向かった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
零の買ったもの。
これらだけでは何を作るかはまず分からないと思います。
料理としては他の材料だけで作る物の方が主な上に、ワザとおかしな物を入れてますから。
フィオナは相変わらずのペースです。
何も考えていないキャラは場を引っ掻き回すには使いやすいので……。