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第四十九話 初めての試験(4)

第四十九話です。よろしくお願いします。


街に帰って来ました。

説明回な感じなので話が大きく動いたりはしないです。

 森からの帰り道で街までもう少しといった頃、鶏達を乗せた馬車の速度が若干落ち始めてきた。

「あれ? ちょっと遅くなった?」

「これは馬が疲れだしておるの。魔獣の端くれとはいえ鶏二羽はちと重かったのじゃろう」

 零は驚いた表情で聞き返す。

「馬って魔獣だったの?」

「そうじゃが? この分では鶏の方が魔獣と思っておるのではないかの?」

 図星を突かれた零は頷いて答えた。

「やはりの。こっちは大きいが普通の鳥じゃ。ここまで知らぬと心配じゃの」

「あはは……」

 笑って誤魔化すしか無い零にセアラが小さい声で話しかける。

「まあ、レイの場合はしかたがないわよ。分からないことがあったらすぐに私に聞きなさいよ」

「分かった、ありがとう」

 それからはペースを落としながらも着実に進んでいきギルドまでたどり着くことが出来た。


 ギルド前に馬車を停めて零はエイベルを呼んできた。

 エイベルは馬車の上を見ると目を丸くしたが、すぐに平常な顔つきに戻して零に問いかける。

「一羽でよかったんだけどね……どうして二羽居る上にヒヨコまでいるのかな?」

「その……見つけたのが親子みたいで、一羽だけ連れてくると森で暮らすのに問題がありそうだったから、つい……」

 エイベルは零の返事を聞いてつい笑い出してしまった。

「ハハハハハ、そう言う理由か」

「そんなにもおかしいですか?」

「いや、笑ってごめん。今までに試験をそういう理由でわざわざ難しくする例は聞いたことがなかったからね」

「そうなんですか……」

「まあ、後の事を考えるのはいいとは思うよ。依頼だけを優先したのかその場が荒れ放題になっていたと言う報告もよく聞くからね」

「そう言う人も居るんですね」

「レイはその点は大丈夫みたいだけどね。さて、じゃあギルド長に報告をしに行こうか」

「馬車や鶏達はどうするの?」

「他の人に頼んでおくよ」

 エイベルの誘導で零達は建物内に入っていく。

 エイベルは他のギルド員に事情を説明して馬車の事を頼むと、零達を再びギルド長室まで連れて行った。


「さて、試験は終わったようだな。エイベル、鶏の様子はどうだった?」

 ギルド長のラッセルが話を切り出すと、エイベルが答える。

「はい、鶏達は無傷で捕らえられて居ました」

「そうか……うん? 鶏達? どういうことだ?」

 エイベルの言い方がおかしい事に気がついたラッセルは、エイベルに説明を求めた。

「はい、捕らえられたのは鶏が二羽とそのヒヨコが三羽です」

「目標より多いじゃないか。レイは何でそんなに捕まえたんだ?」

 ラッセルの疑問に零は先程と同様に答えた。

「――なる程。確かに片親じゃヒヨコ達がうまく育たないか」

「はい、それで全部を捕まえて来ました」

「だが、それを一人で馬車に運べるのか? 手伝って貰ってないよな?」

 さすがに不思議がったラッセルが零に問いただす。

 だが、それに答えたのはイヴァンジェリンであった。

「いや、捕獲から馬車への運搬までレイだけでやり切っておった。その間に手を出してはおらぬ事は妾が保証するのじゃ」

「分かりました」

 ラッセルはイヴァンジェリンの言葉を信用して零に結果を伝える。

「それならレイ、お前は合格だ。条件付きの中級の下として認める」

「ありがとうございます」

「だが、念を押しておくが条件付きだからな? 実力があっても知識や経験はまだまだなんだ。無謀なことはせずに一緒に組む冒険者の言葉をよく聞くように」

「分かりました」

 零の返事を聞き、ラッセルはセアラの方を向く。

「セアラ、多分お前がレイと組むんだろうがちゃんと見てやってくれ。だが、甘やかすんじゃないぞ?」

「勿論よ」

「ではエイベル、レイのギルド証の準備を頼む」

「はい。じゃあ、受付で発行するから付いて来てね」

 零達はエイベルについていきギルド長室を後にした。


 受付につくとセアラ達はテーブル席へ向かい、エイベルは何かをゴソゴソと探し始めた。

 そして、その内の一つを零に見せて確認する。それは下級の下で登録した時に書いた書類だった。

一昨日(おととい)書いた物だからいいとは思うけど、レイについての情報はこれで間違いは無いよね?」

「うん、合ってるよ」

 零は一応内容を確認してから返事をした。

「じゃあ、前のギルド証は返してもらうね」

 零は言われる通りにエイベルにギルド証を渡した。

「ちょっと待っててね」

 エイベルは受付の机の下で何かを動かしていた。

 そしてその後でぱっと見ると充電台とその上にあるスマホの様な物を取り出した。

「これからギルド証の登録をするから、ここに魔力を送って貰っていいかな」

 そう言いながらエイベルはスマホ大の厚みのある金属プレートを指差した。

 だが、魔力を送れと言われても零は勿論そんな事をした試しがない。

 零はどうしようと少し悩むが、問題の有無はともかくプログラムでとにかく魔力を動かすことにする。

 ディアによれば今は零の体にも魔力子はあるそうなので、それを指定した方向に動かすだけのプログラムを急いで作った。

 そして、どうにか()かされる前にプログラムを起動した。

 しかし、起動した途端にギルド証になる金属プレートから煙が上ってしまう。

「わぁっ!! レイ、魔力を流しすぎだよ!!」

「えっ!? あぁ~……」

 零は急いでプログラムを止めるのだが時は既に遅く、ギルド証は変色してしまい見るからに使え無さそうな有様であった。

「これ、どうしよう……弁償?」

「……そ、そうだね……お願いするよ」

 戸惑う零にエイベルは若干引きつった表情で答えた。

「……いくら位掛かるの?」

「再発行時には大銀貨1枚掛かるね」

 日本円で約10万円である。

 零は現在手持ちには無かったので、セアラから借りる事でその分のお金を支払った。

「はぁ、ギルド証を壊すような人を始めて見たよ……」

 とエイベルに言われても零は魔力について扱うのはこれが初めてであり、どれ位が適正量なのかが分からなかったので仕方が無い。

「はい、もう一度やってみて。……今度は壊さないでね?」

 エイベルはギルド証を新しいものに付け替えて、もう一度零の前に差し出した。

 零は今度は壊さないようにと先ほどの0.1%の流量から少しずつ上げて行くように魔力を操作して流し始める。

 すると、今度はギルド証がほんのりと光を帯び出した。

「もう大丈夫だよ、手を離して」

 零がギルド証から手を離すとエイベルは台ごとギルド証を机の下に戻し、少し手を動かした後でギルド証を零に手渡した。

「はい、これがレイのギルド証だよ。これで先に説明したように中級の中以上の人と組んだ時はレイも中級の下として扱われるからね。後は普通なら下級の上までは登録したギルド支部以外では評価がされないけど、このギルド証なら他の街でも評価が出来るようになるよ」

「普通はダメなのに、なんでこのギルド証ならいいの?」

「下級までのギルド証は紙でできているし、評価は対になって保管されている紙の方に書くから他の支部じゃそれが分からないんだよ。その点さっきのギルド証は魔道具で依頼の評価がそれに記録されるからどの支部でも使えるんだ」

「なら下級のギルド証もそれにしないの?」

「下級の依頼はその街からあまり離れないものが多いし、さすがにそこまでは用意しないんだ。それに高いしね」

「一つで5万アルムじゃ全員は難しいか」

 零は理由に納得して頷いた。

「ああ、あとそのギルド証はレイ以外には使えないからね。レイ以外がそれに魔力を流しても反応はしないようになってるから」

 そう言われて零は魔力を送ってみる。

 すると、ギルド証が先ほどと同じようにほんのりと光りだした。

「そうそう、それでそのギルド証が本人の物かが分かるから覚えておいてね」

 零はギルド証を一通り眺めた後でしまいこんだ。

「注意する点はそれぐらいかな? また分からない事があったら聞いてね」

「分かった。ありがとう」

 零は受付を後にするとセアラ達の方へと向かった。

「お待たせ、さっきはお金貸してくれてありがとうね」

 零は席に着くと早速先ほどのお礼をセアラに言った。

「別にいいわよ。お母さんに預けてあるんでしょ?」

「うん、帰ったらちゃんと返すから」

「それにしても、レイは魔法が上手いのか下手なのかよく分からんの。ギルド証はほんの少し魔力を流すだけで良いのじゃぞ?」

「それについては単に知らなかっただけだよ。おかげで痛い出費だよ……」

「まあ、でもギルド証は作れたんでしょ? 見せてもらっていい?」

 落ち込む零を気遣ってかセアラが話を変える。

 零は言われた通りに二人にギルド証を見せた。

「条件付きのギルド証ってこうなってるのね、初めて見るわよ」

「あくまで本来は下級の下のようじゃ。『下級の下』の下に注記で中級の下の条件が書かれてあるしの」

「僕は別に急いでランクを上げたい訳じゃないから、そのままでも良かったんだけどね」

「おや、何故なのじゃ?」

「登録した理由が、身が守れるくらいになれば良かっただけだからね。むしろ急に上っても困るだけだよ。まあ、今回は限定付きで一人で動く分には変わらないから試験を受けたけど」

「そうじゃったのか。レイならもっと上を目指せると思うのじゃが……」

「出来る事が増えるの自体は嬉しいから、全く上げないとは言わないけどね。地道にやって行くつもりだよ」

 自分に合わない物を引き受けて、身を危険に(さら)しては本末転倒なので零はそう答えた。

「まあ、とにかくレイが条件付きとはいえ中級の下になった事だし、お祝いしましょうよ。前の勝負の分も含めてレイの分は私が(おご)ってあげるわよ」

「ふむ、ならば妾からも出すとするかの」

「いいの? 二人共ありがとう!」

 そして三人はギルドを出て零のお祝いを兼ねた昼食を取ることにした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


魔獣と言っても全てが人と対立はしていません。

そのへんは普通の動物にも言える所です。

でも、魔獣のほうが力が強いものが多いのは確かです。


ギルド証について。

魔道具であり評価の記録はされますが、倒した相手が記録されていくのではなく、依頼に対しての評価点をギルドで書き加えるのみです。

それだけで約10万円は高い気がしますが、工場で大量生産しているわけではないのでこれぐらいはかかるんじゃないでしょうか。

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