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第四十四話 ギルドでの面倒事(3)

第四十四話です。よろしくお願いします。


雨にも負けず、風邪にも負けず(中略)そういう者に私はなりたい。

(誤記じゃありません)

風邪を引きました。咳や鼻水が凄いことになってます。

皆さんも気温変動には注意して下さい。


'15.10.6追記

第四十三話に零の目の色を戻す描写を追加しました。これが無いとマズイのに忘れているとは……

「その様子なら、伝書鳩は無事に着いたようじゃな」

 ゴブリンの女の子はギルド長のラッセルに向かって尋ねた。

「はい。橋が崩落したと書かれていた事には肝を冷やしましたが……」

(へりくだ)らなくても()いと言うておろうが。普通にせい、普通に。まあ、崩落自体に巻き込まれた訳ではないのだがの」

 ゴブリンの女の子はラッセルに向かって、言葉遣いを指摘した。

 その様子を見たセアラはふと思った事を口にする。

「ひょっとして、貴族?」

 その声が聞こえたのかゴブリンの女の子は眉をひそめる。

「ほれみろ、余計な疑いを持たれてしまったではないか」

「も、申し訳ありません」

「いや……そっちの言葉遣いも問題だと思うけど?」

「ちょ、ちょっとレイ!?」

 さっきから偉そうな言葉遣いをしている少女に対して、零は思わずツッコミを入れてしまった。

「ほう……ほうほう」

 だが、そんな零に対して少女は怒る訳でもなく、かえって興味が湧いたかのように零に近づいていった。

 その子は(つや)のある褐色の肌と、それに対比するような腰元まで三つ編みにした輝く銀髪に真珠のような小さく丸みを帯びた角を一本額に持っていた。見た目は12歳頃で零より少し背が高い程度、体型は子供から抜けきっていないようだが胸は意外とありクローシェ達には負けていない。夜明け前を思わせる紫の瞳は猫の様な縦型瞳孔をしていて、プックリとした桜桃色の唇からは八重歯のような牙が覗き、可愛らしいのだが気が強そうな印象だ。

 肩には零の背丈程はある鋼鉄製の弓を掛け、簡素ながら質の良さそうな防具や服を身に着けていた。

「お主、名前はレイで()いのか?」

「そうだけど」

「ふむ、我のことはイーヴァとでも呼んで(もら)うとするかの。それにしても、お主は貴族やも知れない者相手でも態度を変えぬが……何故じゃ?」

「う~ん、何故っていわれると……まあ、貴族とか縁の無い地域で暮らしてたからかな?」

 イーヴァの質問に零は簡潔に答えた。もっと言えば地域どころか世界ごと異なるのではあるが。

「ふ~む、知らぬだけじゃったか」

「いや、全く知らない訳じゃないけどね。話では聞いたことはあるし」

 話というのは授業やテレビ等のメディアの事である。

「聞いただけと言う点でならば、大半の者がお主と同様だと思うのじゃが……。まあ()い、それならお主らもレイを見習わぬか」

「いや、だから……自分はいいの?」

 自分を棚に上げて周りに要求するイーヴァに零は再びツッコミを入れた。

 だが、イーヴァは悪びれること無く言ってのける。

「言葉遣いなら既に諦めたのじゃ」

「それでいいの!?」

「こういう言葉は年寄り連中でもよく使っておるしの。どうせ歳など見た目で判断できぬし、(へりくだ)られるよりは問題として些細なことよ」

「そういうものなの?」

「そういうものじゃ」

 イーヴァは胸を張って言い切った。

「そういう訳じゃからの、これ以上周りに詮索されぬ為にも普通に接してもらいたいのじゃよ。分かったかの?」

 イーヴァの頼みに対して零を除いた全員は畏れを混ぜながらも頷いた。

「さて、こちらの用事はこれで済んだのじゃが……ところでレイ達二人は何故ここに居るのじゃ? 差支えが無ければ教えてもらえぬかの」

 特に聞かれても問題は無い事なので、零は一昨日(おととい)の森での話をラッセルに話した通りに伝えた。

「ラヴァコングじゃと? また、おかしなものが現れたの。橋が壊れなければ我もその場に居合わせたかもしれぬな。それにしても少人数でよく倒せたものよ」

「いや、僕たちは足止め程度で……」

「それでもお主のような幼子が対峙出来ただけでも大した物じゃよ」

 イーヴァの幼子発言に零はムッとした表情で訂正する。

「あの、僕は一応15歳なんだけど?」

「――!? そうなのか、キルド長?」

「そのようで――」

 イーヴァは敬語を使おうとしたラッセルに厳しい視線を向けた。

「――そうだ、それで今回ランクを間違えていた件についても話をするつもりだった」

 イーヴァは笑いを堪えながら更にラッセルへと尋ねた。

「ランクを間違う? つまりはアレかの? 幼子と間違え初級で登録してしまったということかの?」

「……その通りだ」

 ラッセルから答えを聞いた瞬間にイーヴァは声を上げて笑い出した。

「――プッ。アハハハハハハハハハ! な、なんだそれは! 成人して、ラヴァコングにも立ち向かえる程の者が初級扱いとは!」

「……だからだレイ、そこで今回お前には条件付きでの中級の下の試験を受けてもらうことにした」

 自分の所のミスを笑われているラッセルは、渋い顔付きで零に今度こそ内容を告げた。

「えっ、中級の下って私の一つ下じゃないのよ」

 セアラが驚く中、それがどれだけのものか分からない零は別の部分を気にしていた。

「あの、条件付きって何?」

「今回のお前の場合で言えば、条件付きのランクより上の奴と組んだ場合に限ってそのランク扱いする事になる。例えば中級の中以上の奴と組んだ場合は中級の下扱いで、お前一人だけなら下級の下扱いだな。勿論、実績が追いつけば条件付きは解除だ」

 そこに、状況をよく知らないイーヴァから質問が飛ぶ。

「何故限定を付けるのじゃ?」

「レイは一昨日が初級の初依頼だった。流石に経験が足り無さ過ぎる奴一人を中級扱いには出来ないんだ」

「なるほどの」

 ラッセルは零の方に向き直り言葉を続ける。

「レイには悪いが試験自体は強制だ。実力を知っておきたいのもあるからな。内容としては一度試合を行って、問題が無いようならある動物の捕獲をしてもらうことになる。試合については今からで問題はないか?」

 零はセアラに相談する。

「なんかおかしな事になっちゃったね。今日はセアラに色々教えてもらいながら依頼を受ける予定だったけど……セアラは大丈夫?」

「別にいいわよ。元々が息抜きのつもりだったし、私はレイを見守ることにするわよ」

 セアラも問題は無いようなので零はこの話を今から受けることにした。

「分かりました。今からお願いします」

「よし、ではこちらの指定する相手と――」

 ラッセルが試合のことを説明しようとすると、横からイーヴァが口を挟んでくる。

「のう、その相手は我がしても()いかの?」

「なっ、それはなりません! 万が一があっては……」

 その言葉にラッセルは慌ててイーヴァを(いさ)めようとする。そのせいでつい敬語になってしまった。

「なに、我もランクは中級の中じゃ。そこいらの貴族の(せがれ)等と違いちゃんと実力の物だしの」

「ですが……」

「それに、我もレイの実力が知りたいのじゃよ。成長してもなおゴブリンよりも小さきヒューマンの者が如何様(いかよう)にして戦うかがの」

 ラッセルが肩を落としてため息を付いた。

「はぁ~。話には聞いていましたが本当に好奇心の(かたまり)のような方ですね」

「自分で言うのも何じゃが、そうじゃのう。断っておくが、やめる気は無いからの」

「分かりました、お願いいたします」

「うむ、分かれば()い」

 こうして急遽、零とイーヴァの試合が決まるのだった。

「ところで、我が得物はこの弓なのじゃが……レイ、お主のはその棒なのかの?」

 イーヴァは零の腰に()いている二本の刀を見て尋ねた。

「やっぱりこれだけ細いのは一般的じゃないのか……。これは鞘に入ってるけど曲刀だよ。ほら。」

 零は前半の言葉を呟いてから、イーヴァに脇差しの方を差し出した。

「ほう……曲刀とな。鞘でこれだけ細いとすぐにポッキリと折れてしまいそうじゃが?」

 脇差しを受け取ったイーヴァが鞘のまま脇差しを見回した。

「見たことの無い装飾じゃな。柄に糸が巻いてあるのは装飾と滑り止めを兼ねてかの? おそらくこの釘で刀身を止めておるのじゃな……変わっとるの」

 そして、今度は周りに断ってから鞘からゆっくり刀身を引き抜いた。

「……細いだけではなく随分と薄いの。この木目のような模様や波のような模様はなんじゃろうか? ……分からんの」

 イーヴァは刀身を軽く叩いた。すると、澄んだ金属音が部屋中に響き渡る。

「よく澄んだいい音じゃな。ここまでの音を聞いたのは初めてじゃ。それに、他の剣と違って(しな)りおる。じゃが、不思議と折れる気がせぬ…………これじゃ、こういう物に出会いたかったのじゃ」

 随分と熱心に見入っているイーヴァに零が質問する。

「かなり見入ってる様だけど、ひょっとして剣を集めるのが趣味とか?」

「いや、そうではない。これは我が工作師(クラフター)を目指してるからじゃな」

 イーヴァは脇差しを納刀しながら答えた。

「工作師? 鍛冶師じゃなくて?」

 剣だったら鍛冶師だろうと思い、零は小首を傾げる。

「鍛冶だけではなく、作れるものならそれこそ日用品だろうと魔道具だろうと『何でも』扱えるようになりたいからの」

「そりゃ凄い!」

「旅をするのも色々な技術を見る為じゃからの。じゃからレイ、この剣について知っている事があれば後で教えて欲しいのじゃが……()いかの?」

「まあいいけど」

 零はイーヴァにだったら日本刀の造りぐらい教えても問題は無いだろうと思い了承した。

 その途端、イーヴァは破顔して喜んだ。

「おお、ありがたいの。橋が壊れた時は困った物じゃったが、おかげで()いものに巡り会えたのじゃ」

「ところで……イーヴァがこの街に来たのも工作師関連の事なの?」

 今度は零がイーヴァに質問をした。

「そうじゃ。一応今でも一通りの物は作れると自負しておるのじゃが……実はデザインには自信が無くての。この装備も自分で作ったものじゃが、見ての通り装飾が殆ど付けられないのじゃよ」

 確かにイーヴァの身に付けているものは、質はよさ気ではあるがシンプルなものばかりである。

「そこで、この街で人気のある『クローシェ洋裁店』や『ノーマ防具店』でその辺を学ぼうと思ったのじゃが――」

 そこで、店の名前に思いっきり聞き覚えのあるセアラが口を挟んだ。

「あ、そこってお母さん達のお店じゃないのよ」

「――ほう、そうかそうか。ついておるの、まさか遅れた事で目標と目的の両方に出会えることになるとはの。そちらも後で案内してくれぬかの?」

「勿論いいわよ」

「では、頼んだのじゃ」

 試験後の予定が決まった所で、ラッセルにもうそろそろと(うなが)され零達は訓練場に向かった。

 その間、楽しみが増えたイーヴァの顔が緩みっぱなしであったことは言うまでもない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


褐色銀髪のじゃロリ。

まあ、ロリといっても零より歳上なんですが。

ちょっと特徴を詰め込み過ぎ?

胸が気になる方の為にイーヴァも含めてカップサイズをもう一度。

一応≒でも右の方が僅かに大きいです。

リリアン<AAA<<A=零≒アビー<ノーマ≒クローシェ<イーヴァ≒リタ≒イーディス≒アルティア<アリスン≒エリン≒ディア<<<G=玲香<<<<<(中略)<<<<<セアラ≒フィオナ


限定付きの中級の中。

実力だけがあっても純粋にはランクは上がれません。

零の他にも限定措置が取られるパターンはあります。

作中で書くかは現在未定です。


工作師(クラフター)は基本自分の手作業で作り上げます。

一部加工に魔法は使ったりもしますが、なろう発小説の某工学師のように専用の便利な魔法・魔術はありません。(魔法・魔術を作ることは不可能ではありませんが)

この話はそっちがメインのストーリーじゃないですしね。

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