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第四十三話 ギルドでの面倒事(2)

第四十三話です。よろしくお願いします。


今回はギルドに到着。サブタイトル通り面倒事が始まります。

予想外の事も含ませるように努力はしているつもりです。


'15.10.6追記

零の目の色を戻す描写を追加しました。これが無いとマズイのに忘れているとは……

 身支度を終えた零とセアラは、ギルドまでの道のりを二人で歩いていた。

 零の目の色はプログラムでカラーコンタクトのように上から黒目の映像を付けて戻してある。でないと周囲から否応なしに崇められる事になるだろう。

 零はようやく発音に慣れて補助プログラムを止めようとしていた所だったので、また余分な処理が必要なことに若干ガッカリとしてしまった。

 そんなことを考えてながら道を歩いていると、途中で後ろから突然声が掛けられる。

「あ、サラ! ……と、その横に居るのはレイ?」

 声の方に振り返ってみると、そこにはエイベルに嫌われたと思いひどく落ち込んでいた筈のリタの姿があった。

 しかし、今はそんな事があったとは思わせない程に喜色満面な笑顔をしている。

「帰ってきてたのね、サラ。……どう? お姉さんを治せそうな人は見つかったの?」

「見つかって、それでもう治して貰ったわよ! さすがにまだ体力は戻ってないけど……もうしばらくしたらお姉ちゃんも復帰できるはずよ!」

「それは良かったじゃない! ところで、病気を治せるような治療師なんて……一体どんな人だったの?」

「それがね……この子なのよ」

 セアラが零の頭に手を乗せながら紹介する。

「レイが? そんな小さい子にそんなことが出来たの?」

 リタは零の見た目から当然のように疑問に思った。

「レイはこう見えても15歳で成人よ? それに、魔法については相当に出来るんだから!」

「えっ? まだ、一桁だと思ってた……」

「ああ……やっぱりそうだったのね」

 零は遠い目をして呟いた。

「それにしてもサラの方と言い私達の方と言い……レイは幸運でも運んで来るのかしら?」

「私達? そっちは何かあったの?」

 セアラはリタの言葉を疑問に思った。

「そうそう、レイにはお礼を言わなくちゃ! おかげで私とエイベルは……付き合うことになったの!」

「あら、そう! おめでとう!」

 セアラはリタ達の事を祝ったが、リタからの報告に零は首を傾げざるを得なかった。

「え? 僕は特に何もしてないけど?」

「実は、エイベルの方も私の事が気にはなってたらしいの。そこに零から私が落ち込んでいるのを聞いて私の家まで来てくれて……そこで色々話してるうちに……」

 リタはモジモジとしながらエイベルとの馴れ初めを話していく。最後の方は恥ずかしかったのか小声になっていた。

「あ~、だからあの時僕に聞いてきたんだ」

「だから、ありがとうね。じゃあ、私は先に行くから」

 そう言ってリタはその場から立ち去っていった。

「レイってこっちに来てから数日でしょ? いろいろしてるじゃないのよ」

「いや、今回のはたまたまだって。僕は単に二人の質問に答えただけなんだから」

「それでもリタは嬉しそうだったわよ? ホント、レイと居ると面白いことばかりよね」

「あはは、じゃあ僕はサラ達が退屈しないようにもっと頑張らなきゃね」

「あ、それは(レイ)が言う事じゃないわよ?」

「っと、向こうだと立場が逆だから……じゃあ、どっちも頑張るということで」

「そうね、私もレイを驚かせてあげるわよ」

 二人はそう言い合いながらギルドまでの道を再び歩き始めた。


 ギルドにたどり着いた二人は零を先頭に建物内に入ろうとした。

 その時、軽快な足音が聞こえてくる。

 なんだろうと思いつつ視界の邪魔にもなっているスウィングドアを押し開けると、リリアンが背後のセアラに向かって跳び込んで来る所だった。

「お・ね・え・さ・ま~~~~~」

 間に挟まれた零は咄嗟にドアから手を放し自分の目の前に出して身をかばう。

 そして、その手は零に気づかないまま飛び込んできたリリアンの鳩尾に綺麗にめり込む。

 さらにそこへ零の手放したスウィングドアが戻ってきてリリアンの背後に当たり、ダメ押しの一撃を与えることになった。

 女性として出してはいけないようなうめき声を出しながら、リリアンはその場で転げまわる。

 零はそれを見てうろたえたが、セアラは自業自得だと言わんばかりの冷めた表情で見つめていた。

「レイ、中へ行くわよ」

「え、でも……」

「アレは放っておけばいいのよ」

 そう言ってセアラは零を建物内に押し込んでいった。

 だが、数歩歩いた所でリリアンが持ち直して立ち上がって零に叫んだ。

「ゴホッ……ちょっと待ちなさい! 何でレイがお姉さまと一緒に来るのよ!?」

「何でと言われても……」

 零が何か言い訳を考えようとしている所にセアラが堂々と言い放つ。

「それはレイが家で一緒に住んでるからよ」

 その言葉を聞いたリリアンは硬直し、その意味が頭で理解されるまで暫く掛かった。

「――な……なな、なんですってぇ~! レイ! それは本当なの?」

「う、うん」

 リリアンは零に掴みかからんとする勢いで迫っていくが、零が同居を肯定するとガックリと崩れ落ちた。 

「な、なんてことなの……お姉さまの純潔が……」

「いや、僕は変なことはしてないからね!」

 零がキッパリと否定するとリリアンは顔を上げ、零を見据えて尋ねる。

「そ、そう? なら、一緒に水浴びをしてあの肢体に体を預けたり、あの豊満な胸に顔を埋めたり、あまつさえ吸い付いたり、更には一夜を共にしたりはしてない訳ね?」

 零は無言にならざるを得なかった。リリアンから出た言葉に思わず引いたのもあるが、零から起こした行動ではない物のどれも合ってはいるからだ。

 零のそんな心情を察してからかリリアンの怒気は一気に膨れ上がった。

「レ~~~イ~~~? アンタって奴は~~~!!」

 そんなリリアンから零を隠すようにしてセアラが立ちはだかった。

「リリアン、いいかげんにしなさい! レイはわざとじゃ無いし一緒に水浴びしたのも添い寝したのも私からなのよ!?」

「お姉さまから!?」

 リリアンはセアラの言葉に大きくショックを受けた。

「そんなぁ~、お姉さまはそんなちんちくりんが好みだったんですかぁ~?」

「そんな事を言うと許さないわよ? 第一、背はともかく胸は(レイ)に完全に負けてるじゃない」

 零は妹の姿の影響か若干膨らんでいた。カップサイズで言うのなら零はAであり、男でも筋肉量やホルモンバランスの影響で十分居たりするレベルなのだが。

 しかし、リリアンはカップサイズの規格の下限AAAにも届いていない、完全に壁のレベルであった。

 リリアンは零が男とは知らないが、幼女レベルの見た目の零にも負けている事をセアラに真向から言われ、暫くの間立ち直れなくなった。

「これでいいわ。レイ、こんどこそ行くわよ」

「良いのかなぁ」

「良いのよ」

 そうしてようやく零達は受付に向かうことが出来た。


 受付に向かうと、書類を書き終わったエイベルが零達を見つけて手招きをするのが見えた。

 周りの人達に断りを入れながらエイベルのもとへ向かうとエイベルから質問が飛んでくる。

「レイ、セアラさん、お早うございます。二人共昨日はギルドに来ませんでしたがどうしたんですか?」

「僕はちょっと用事があって」

「私は戻ってきたばかりだったから一日休憩よ」

「そうだったんですか。実は昨日ギルド長から二人が来たら話がしたいと伝言がありまして、今は良いでしょうか?」

 話があると聞いた零には、それ程の内容について心当たりは一つしかなかった。

「ひょっとして、一昨日(おととい)の森での事について?」

「そうです。どうにも、うちの人間の証言だけでは良く分からない事があったらしくて二人にも話を聞きたいそうです」

 零とセアラは向かわないと帰って怪しまれると思い、お互いに頷き合った。

「私は大丈夫よ」「僕も」

「分かりました。では、案内をしますから付いてきて下さい」

 エイベルは暫く受付を離れることを他のギルド員に伝えると、零達二人を連れて受付の後ろの扉へ二人を案内した。

 廊下を歩いている最中にセアラから零に話しかける。

「レイはギルド長と話したことがないでしょ? 私が主に話すから補足だけ(・・・・)お願いするわよ」

「うん、分かったよ。補足だけ(・・・・)にするね」

 これだけ聞くと何気ない会話のようだが、これは話を合わせるための確認である。

 一昨日ギルド員に報告をしたのはセアラだけで、零はその内容を知っている訳ではない為、セアラが主に話すことで食い違いを防ぐ事を伝えているのだ。

 そんな、やり取りをした後で三人はギルド長の部屋の前にたどり着く。

 エイベルが扉をノックする。

「ギルド長、セアラとレイの二人を連れて来ました」

「分かった。入ってくれ」

 返事を聞いたエイベルが扉を開けると、そこには初老のヒューマンの男が座っていた。

「久し振りだなセアラ、そして初めてだなレイ、私がギルド長を務めさせてもらってるラッセルだ」

 零はギルド長が男だという事を意外に思いながらもそれを表情に出しつつ挨拶を返す。

「零です、初めまして」

「久しぶりですギルド長。今日は森での件についてとの事ですが……内容は既に報告したと思いますが?」

「確かにそうなんだが、一度当事者本人にも聞いておく必要があると思ってね。まあ、立ち話をさせる気はないからまずはそこに座ってくれないか?」

 ラッセルはソファーを指して、二人に座ることを促すように自分も対面のソファーに向かった。

「私は居ないほうがいいですか?」

「いやエイベル、君も居てくれ。場合によっては頼みたい事もあるからな」

 そして、全員が座った所でラッセルから話を切り出した。

「まずは、礼からだな。ラヴァコングの奴を食い止めてくれて感謝する。奴がこの街まで来て暴れれば被害は多少では済まなかっただろう」

「いえ、どの道逃げられる状況では無かったので」

謙遜(けんそん)しなくてもいい、助かったのは事実だ。では、本題に入ろう。森での出来事を出来るだけ話してくれ」

 セアラはラヴァコングとの事以外はどうせ知られているため特に嘘を付かず、その部分については通りすがりの人物が解決したと話していった。零もそれに対して盛り上げるような言い回しで同調していく。

「外套で身を隠した人物がミスリルと思われる剣でラヴァコングを切り裂いていった。自分たちはその手助けをしたに過ぎない。そして、その人物がうちの人間の怪我をも綺麗に治していった……と。魔物や動物の暴走以前は詳しく判ったが、その後は全く変わらずか……何か隠していないか?」

「いえ? 何も」

「隠してるのはその通りすがりの人で、僕達が知りたいぐらいですから」

 零もセアラも特に表情を変えること無く返事を返した。

「そうか……分かったこの件はこれで終わりだ」

 ラッセルはこれ以上話してはくれないだろうと話を切り上げた。

 だが、その後に言葉が続いた。

「では、次にレイについてだ」

 零は顔には出さなかった物の、内心でやっぱり来たかと思った。

「まず、ランクについてだが――」

 ラッセルがそこまで口にした所で突然ノックが聞こえてくる。

「どうした、今は来客中だが?」

「申し訳ありません。ですが、お待たせさせる訳には行きませんでしたので」

「いや、来客中なら()いと申したであろう?」

「ま、まさか……」

「はい、到着になられました」

「……悪いがレイへの話は後だ。どうぞお入り下さい」

「別に(へりくだ)らなくても()いぞ? では、入らせてもらおう」

 そう言って入ってきたのは、ゴブリンの女の子であった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


リタ再登場。

重要キャラじゃなくても出来る限りは何度か出していきたいです。


リリアンは一昨日はいつまでセアラを待っていたのか……。

ようやく会えても色々と打ちのめされるという……。

まあ、イジりがいのあるキャラです。


零の胸。

作中でも書きましたが、男でもある程度膨らんでる人はいます。(肥満を除いても)

ちなみにカップサイズで並べるとこんな感じに。

リリアン<AAA<<A=零≒アビー<ノーマ≒クローシェ<リタ≒イーディス≒アルティア<アリスン≒エリン≒ディア<<<玲香=G<<<<<(中略)<<<<<セアラ≒フィオナ


ギルド長は処理能力が買われてなったタイプです。

男ですし魔力が扱えないので戦えません。

荒事は部下任せです。


最後にもう一キャラ登場。

文中で初めてハッキリとゴブリンだと書いたキャラです。

忘れてるかもしれないので念のために書きますが、この世界のゴブリンは見た目は子供に近くちゃんと人に数えられます。

どんなキャラかは次話に書きますので待ってて下さい。

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