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第四十二話 ギルドでの面倒事(1)

第四十二話です。よろしくお願いします。


ようやく次の日。ここから少しづつ分かりきってる合間を飛ばしたりします。

サブタイトルは書いたものの今回はまだギルドに行きません。

数話合わせてのサブタイトルなのでご了承を。

 ディエウスはとある部屋の扉をノックする。

「アルティア、邪魔するぜ~」

 ディエウスは中からの返事も聞かずに勝手に扉を開けて中に入った。

 広い室内には質素ながら高級感のある調度品と大きな事務机がある。

「誰? 勝手に――って、ディエウス……勝手に入らないようにいつも言ってるでしょう?」

 事務机にいる女性がディエウスに抗議の声をだした。

「こまけえことは気にすんな。それより――」

 ディエウスが言葉を切ると、その瞬間にかすかに聞こえていた部屋の外からの音が一切聞こえなくなった。

「――ちょいとトラブってな、それの報告に来たんだわ」

「直接私の所に来るなんて、いったい何が?」

「ああ、ディアん所にウィルスがな。他を通すわけには行かないだろ、統括さん? 今回は別の理由もあるが」

「……続けて」

 ディエウスはウィルスが来てからの顛末をアルティアと呼んだ女性に話していく。

「――ウィルスが同化!? そんな例は聞いたことがないわ!」

「だから直接報告しに来たんだ。絶対トラブんのが目に見えてるからな」

「このレイという子は今どこに?」

 アルティアはレイの画像を指差して尋ねた。

「ディアん所だ。『私にも責任がある』ってな」

「あの子らしいわ」

「どの道大っぴらには出来ないんだ。場所は悪くねえ筈だ。……それに、あいつもレイを気に入った様だしな」

「あの子は昔から可愛い物には目がないから……」

 アルティアはその様子を思い出して目を細めた。

「私もそれでいいと思うわ。問題が出ない限りはあの子に監視を任せましょう」

 アルティアが賛成意見を出した所でディエウスは言わなくてはならないことを口にする。

「ああそうだ。レイについて言っておかないといけない事があるんだが……」

「なあに?」

「そいつ、男だぜ。正真正銘の」

「え゛」

 アルティアは奇妙な声を出して固まった。

「あと、歳も今いる場所では成人扱いだ」

「な、ななな……」

 アルティアはプルプルと震えだし、突然叫びだす。

「なんでそんな子とディアを会わせるの!? せっかく男を近寄らせないようにしていたのに!!」

「んなこと言っても、先に会ってたんだから知らねぇよ。第一、俺はそれには元から反対してたっての」

「しかも『気に入ってる』ですって!? まさかとは思うけど――」

「ああ、もちろん『男女として』のことだぜ」

「なんてことなの……あの子には私がふさわしい相手を見つける予定だったのに……」

 アルティアはガックリとその場にふせってしまった。

「俺は二人を応援する。邪魔なんてしたら容赦しねぇぞ?」

「うぅ……そんな脅しまでするようになっちゃうなんて……昔は素直で可愛い子だったのに……」

 泣き崩れるような素振りを見せているアルティアをディエウスは白い目で見つめて言う。

「うるせぇ、真面目ぶった変態が。おまえを反面教師にしたからこうなっちまったんだ」

「私のどこが変態なの!?」

「ガキん時の俺に手を出した挙句、ディアまでこさえてよくんなことが言えるな?」

「私がおかしいんじゃなくて、年増の男を愛するような世の中がおかしいんだわ!」

「言い切りやがった!?」

「それはそうと、あの子のことは引き続き任せるわ。私は立場上自由に動けないから」

「急に真面目に戻るな! ……まあいい、もとよりそのつもりだ。じゃあ、俺はそろそろ仕事に戻るわ」

「ええ、あの子にもよろしく」


――――――――――――――――


 ディアの両親がそんなやり取りをしている頃、ディアとアビーはそれぞれ自宅へと帰り、今から庭で零とセアラが訓練をしようとしていた。

 二人はそれぞれ剣を鞘に入れたまま離れた場所でかまえた。

「じゃあ、まずは強化無しからやってみるわよ」

「分かった。じゃあ、行くよ!」

 零は勢い良く走りだし、手始めにセアラの胴をめがけて横薙ぎに脇差しを振るう。

 セアラはそれを大剣で受け止めようとしたのだが――。

「きゃあっ!」

「あ、あれ?」

 二人にも予想外な事に零のはなった一撃で、かなりの体格差があるにも関わらずセアラは受け止めた剣ごと弾き飛ばされ尻もちをついてしまった。

「イタタ……。ちょっと、レイ! 強化は無しでって言ったじゃないのよ!」

「いやいや、してないよ? サラが気を抜いてたんじゃないの?」

「そう? ……いいわ、もう一度試してみましょうよ」

 そして、先ほどのように零が攻撃してセアラがそれを受け止めるのだが、結果も同じ様にセアラが弾き飛ばされ尻餅をついた。

「ううぅ……同じ所を二回も……。本当に強化してないのよね?」

 セアラは涙目になり、お尻を擦りながら零に尋ねた。

「うん、それは間違いなく」

「その体のどこにそんな力があるのよ……」

 零はこうなった原因について考えを巡らしだす。

(力が強くなったり疲れにくくなったのは……ディアが言うにはここにある魔力子……魔力が関係してるんだっけ? でも、それならセアラも同じ条件のはずだよね? いや、同じじゃない所は……)

 ふと仮説が思い浮かんだ所で、零は一つのプログラムを作り始める。

 そして、作り終わったプログラムをまず自分に試してみた。その時、特に違和感は感じない。

「サラ、もう一回やってみよう」

「え? また同じ様になるだけじゃ……」

 サラは自分のお尻をかばうようにしている。

「多分今度は大丈夫だと思うから」

「本当に?」

 セアラは渋々剣を構えると零はそこに脇差しを振るう。

 そして、今度はセアラが動くことはなく余裕を持って受け止めることが出来た。

「今度は大丈夫みたいよ。これで続けるわよ」

「あ、待って。もう一つ試したい事があるから」

「一体何よ?」

 零はプログラムを試す為にセアラに近づいて手を取ろうとする。

 だが、その時に重要なことを思い出して動きが止まった。

(魔力の影響が強いと理術……プログラムは作用できないんだっけ? 脱力させればいいんだよね?)

「ねえ、サラ。力を出来るだけ抜いて欲しいんだけど」

「力を? こう?」

 零はその状態のセアラにプログラムを試してみるが、効果は現れなかった。

「ダメみたい。もっと抜けない?」

「もっとって言われても、もう十分脱力してるわよ? これでダメなら、そうね……」

 セアラはリラックスした時の事を思い出す。

「……それなら、レイの頭を撫でさせてよ。ふわふわして気持ちよかったのよね」

「そ、そう? 分かったよ、ほら」

 零はセアラの目の前に立って、撫でやすいように少し下を向いた。

「うーん、ふわふわ。昨日洗ったおかげでもっと気持ちよくなってるわよ」

 そうしてセアラがひとしきり零の髪を堪能(たんのう)したところで、零は先ほど自分に使ったプログラムと同じものをセアラに使った。

 すると、その途端にセアラは突然撫でていた手を止めて、その場にドサリと音を立てて倒れこんでしまった。

 零が慌ててセアラの様子を見てみると、体を動かすどころか息をするのも難しいらしく苦しそうに(あえ)いでいた。

 零が試したプログラムは単純に体内の魔力を全て抜き取るものであった。

 その為、自分に使った時はほぼ地球に居た時と同じ状態に戻ったのだ。

 だが、セアラの様にここの住人は元から魔力がある状態で生活しているので、その状態に慣れていて魔力がなくなると動きが鈍くなるのではと零は考えた。

 そして、それはどうやら当たっているようだったのだが、まさかここまで衰弱するとは思っていなかったため零は大いに慌ててしまった。

 零はあたふたとセアラに声を掛けながら今度は魔力を取り込ませるプログラムを作り出す。

 そして、それを使ってセアラに急いで魔力を取り込ませていった。

 魔力を取り戻したセアラはフラフラと起き上がって零を睨んだ。

「ケホッ、ケホッ。……レ、レイ……一体何をしたのよ?」

「サ、サラ……ゴメン! まさかここまでヒドくなるとは思ってなくて……」

 零は素直に謝って、セアラに何をしていたのかを説明した。

「――じゃあ、意図的に魔力切れを起こさせたってことよね? でも、前になった時は目眩(めまい)ぐらいでここまでヒドくはなかったわよ?」

「多分、完全に魔力が無くなる前に動けなくなるせいだと思う。それを僕は完全に無くしちゃったから……本当にごめんね……」

「別にいいわよ。ところでちゃんと元通りになってるの?」

 セアラに尋ねられて零は魔力を抜く前後の状態を比較した。

 すると、一部の結果が食い違っていた。

「あれ? おかしいな」

「おかしい? 治ってないの?」

「ああ、ごめん。治ってないわけじゃなくって……魔力の量が抜く前に比べて上ってる……少しだけだけど」

 零は念のためもう一度結果を見比べるが見間違いではなかった。

「本当に? 一体何でそうなったのよ?」

「ひょっとして魔力を全部抜いたから?」

「まさか……」

 とは言いつつも零達はもう一度魔力を全部抜いた後戻すことを試してみる。

 すると、やはり魔力の量は先ほどと同じ比率で上がっていた。

「……効果があるみたいだね」

「ケホッ。……く、苦しいのを無視すれば、これはとんでもないことよ? 魔力の量は成人してしばらくするとそこで止まっちゃうんだから」

「……余裕がある時はやってみる?」

「お願いするわよ。それはそうと、そろそろ訓練を再開しましょうよ」

「そうだね」

 そうして、零とセアラは再び向き合って打ち合い始めた。

 セアラは長年冒険者として剣を使っている事もあり、魔力を意図的に抜いた状態の零では力・速さ・技と負けているため太刀打ちは難しかった。

 だが、零もそれは分かりきった事だったため、身体能力だよりにならないためにもあえてそのまま訓練を続けたのだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ディアの母登場。

統括と書いてますが会社の場合社長みたいなものです。

ディエウスやディアとの関係がバレれば当然大問題です。


セアラの魔力を抜いた時の状態について、魔力が無いとこの世界の生物はまともに動けません。

魔力がある状況に身体が慣れすぎた弊害みたいなものです。

まあ、作中にあるように全部無くなる事なんて基本あり得ないのでまず問題にはなりませんが。

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