第三十五話 再会(4)
第三十五話です。よろしくお願いします。
話の切りを考えて若干短めです。
久々に登場のキャラを思い出しながら書くのは若干難しいですね。
よく、「あれ? こんなしゃべり方だっけ?」になったりします。
間違ってなきゃいいけど……。
「一体何でしょう?」
ディアが端末を操作すると二人が見ていた画面が切り替わり、そこにディエウスの姿が映し出される。
その後ろに映る光景は零に見覚えのあるものだ。
「――よう、ディア……と? ……隣にいる嬢ちゃんは?」
何故か日本語で話すディエウスがディアの隣を訝しがる。
ディアもそれに倣って日本語で返事をした。
「レイですよ? ディエウス」
「ん? あ、ホントだ! レイじゃねえか! 何だその格好! ギャハハハハ!」
「好きでやってるわけじゃないよ!」
「そんなに笑う程ですか?」
「だってよぉ、仮にも野郎がそんなヒラヒラした格好なんだぜ? 笑うなってのは無理ってもんだ」
「そういえば……違和感がなさ過ぎて忘れてました」
「ちょっと、ディア!? それは、ヒドくない!?」
「おっとそうだ、二人にも見てもらうとすっか!」
さらりと気にしてることを言うディアに零が憤慨するのもつかの間、ディエウスの口から危険な言葉が発せられる。
「二人って――――ちょっと待って! 止め――」
零はディエウスの言葉の意味が分かった所で止めようとしたのだが、それは既に遅かった。
「おぉ? これは……」
「あらあら、似合ってるじゃない」
画面の向こうが動くとともに、聞き慣れた声が日本語で聞こえてくる。
そこに映っていたのは、逞しい体つきをした青年と少女に見紛うような女性――零の両親であった。
「ウワアァァァァァアアアァッ!! 見ないで見ないで見ないで!!」
慌てふためく零はカメラがある場所を探して動き回り画面に近づいた。
そんなことをすると向こうに零がアップで映しだされるだけだったのだが、冷静さを失った零はそれに気づいた様子はなかった。
「な、ななな、何でディエウスが僕の家にいるんだよ!」
結局カメラが分からなかった零は、原因となったディエウスを問い詰める。
「ああ、お前が両親に伝えてほしいって言ってただろ? その説明にディアも参加してもらおうってな」
ディエウスは礼司の隣に座り直しながら悪びれる事無く理由を話していく。
確かにそれを頼んだのは零の方だった。
「――ってか、逆に聞くが、何でまだレイがそこに居んだよ? とっくに検査は済んでるだろ?」
今度はディエウスの方から質問が来た。
それに答えたのはディアである。
「検査をしたのはつい先程です。今はその結果を見始めたばかりでした」
「お前にしちゃぁ随分と仕事が遅えじゃねぇか? どうした?」
「それがですね――」
ディアはゲートに入った後の事を説明していく。
「――防壁で弾かれた……ねぇ。その時点で影響があるのは確実じゃねぇか」
「それが、そこにも予想外がありまして…………どうやらウィルスと同化しているようなんです。しかも、今回のものとは別の偵察型が」
「はぁ!? 同化ぁ!? んなもん聞いたことがねえぞ!? 間違いじゃねえのか!?」
「それが、どう見てもそうとしか言いようのない結果が出てまして。――その部分を抜粋して送ります」
「ああ、頼むわ」
ディエウスは送られた結果を眺め始める。
その間に零の両親はちゃっかりとこの場を借りて零と会話を始めだした。
「四日ぶりだな零。最初聞いた時は耳を疑ったぞ! 今は異世界にいるんだって?」
「私達心配だったのよ? 卒業式に行ってみたら零が来てないって言われて街中を探したりして」
「うぅ、ごめんなさい」
「謝らなくていいの。零は巻き込まれただけなんだから」
「それよりも今はどうしてるんだ? まさか、野宿とかじゃないだろうな?」
「大丈夫。親切な人達に助けてもらって、今はそこに住まわせてもらってるから」
「そうなの? 良かったわ、その人達に御礼を言わなくちゃ。……でも、世界が違うのよねぇ……どうしましょう?」
「そこはまあ、僕が伝えておくよ」
「スマンな。頼んだぞ」
「よろしく伝えてね」
その頃に、結果を見ていたディエウスから驚きの声が上がる。
「ホントもホントかよ……どうなってやがる?」
「ディエウスもそう思いますか……やはり見立てに間違いは無いようですね」
だが、ディエウスが結果から感じたのはそれだけでは無く、更に別の言葉を漏らした。
「……それにしても、このウィルスどこかで見たことがあるような?」
「心当たりが?」
ディエウスは頭を捻って記憶を呼び起こそうとした。
零の両親はウィルスの同化のことで不安になり、ディアに問いかける。
「はじめまして。零の両親の礼司と玲香です。」
「はじめまして。あの、ディアさんでしたよね?」
「はい、はじめまして。ディアで構いませんよ。レイもそう呼んでますし」
「じゃあ、ディアちゃんで。それで、ウィルスが同化した状態って言ってたけど……零は大丈夫なのかい?」
「これが初めてのケースになるので……それについては何も分かりません。ですが、レイの記憶には無いようなので、おそらくレイの物心つくより前からそうなっている可能性が高いですね。なので、そこは今までどおりとも言えます」
「なんとも複雑な気分になる答えねぇ……」
零が今まで問題なく生きてきたのでそこまで心配はいらないのだろうが、それに気が付かずにいたのも確かなのだ。
二人には確認をする術がないが、それでもそんな状態で放置してしまったという思いから表情を少し曇らせた。
そんな時、暫く唸っていたディエウスが突然アッと口からこぼして目を見開き、汗を書きながら顔色をどんどん悪くしていく。
「……ディエウス、まさかとは思いますが……また問題でも起こしましたか?」
ディエウスとは長い付き合いであるディアが、彼の表情の異変に気がついて問いただした。
「あ~、その、なんだ……」
「ハッキリと言って下さい!」
「……これ、俺が監視カメラの代わりに作った奴のうちのひとつだ……まいったね」
苦笑いを浮かべながらそうディエウスが伝えると、残りの四人は唖然とした表情でディエウスを見つめて固まった。
「地球で言う16年近く前だったか? そのぐらいに『ひとつ足りないなー』とか思ってたんだけどな? いやー、見つかってよかった――――」
明後日の方向を向きながらひとり呟くディエウスだったが、そこにディアの鋭い声が響いた。
「良かったじゃありません! 結局これもあなたが原因のひとつじゃないですか!」
「あ、いや、俺もその後探したよ! けど、痕跡が全くもって無くなっててだな……」
「それで済む話しじゃありません! そのせいで零は今回の件にも巻き込まれたようなものですよ!」
「それはどういう意味だい?」
「ディアちゃん、また説明をお願い!」
ディアの言葉にレイの両親が再び質問をする。
「他人を巻き込まないように使った結界はウィルスだけは中に入れて閉じ込める物だったんですが……おそらくウィルスと同化したせいで零は中に入ってしまったと推測できるんです」
ディアの説明を聞いて零の両親の表情が怒りに染まっていく。
そして、それとは対称にディエウスの表情はすぐれない物になっていった。
「ディ~エ~ウ~ス~さ~ん?」
「ちょ~っとこっちまで、来てもらいましょうか~?」
二人はディエウスの腕を掴むと、そのまま引きずるようにして連れて行ってしまう。
ディエウスはその最中に色々とわめいていたが、それらは二人にことごとく無視されることになった。
その光景を見てディアは若干引きつりながら感想をもらした。
「な、なかなかアクティブなご両親ですね……」
「……ハッキリ言っていいよ……変わってるって」
それは紛れも無く零の本心でもあった。
「それにしても……ディエウスがたびたびすみません」
ディエウスのことに対してディアが謝罪するのに違和感を感じて、零は首を傾げる。
「何でディアが謝るの?」
「……まあ、こちらにも色々ありまして」
「言いたくないなら聞かないけどさ」
「それよりも、ディエウスが気になることを言ってましたね。確かウィルスが消えたのが16年近く前だとか」
ディアが強引に話題を変える。
まあ、こちらも零にとっては気になる話だったのでそのまま話に乗ることにした。
「その頃だとたぶん僕がお腹の中にできてすぐぐらいかな?」
「だとするとレイのお母さん……レイカさんの方が知ってる可能性もありますね。でも、こちらでもその辺りの結果をもう少し調べてみましょう」
ディアはそう言うと、今は誰も映っていない通信画面から検査結果へと切り替える。
そして暫くの間、画面を切り替えてはそれを眺めるのを繰り返していく。
その後それがだいぶ続いた所で、ディアの首が大きく捻られることになる。
すると、ディアは画面によく似た2つの物を表示させ、それらを何度も見比べた。
「どうしたの? なにか見つけた?」
「はい。同化に関係するかは分かりませんが、おかしな点が見つかりました」
「……まだあったんだね。……この見た目に始まって、僕はどれだけ異常なんだ?」
零としては単に自虐で言っただけの言葉だった。
「あ、もしかすると、それには直接関係があるかもしれません」
「……へ?」
しかし、ディアから思いがけない返事が帰ってきたことで、零は間の抜けた返事を返すのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
『再会』は画面越しですが両親(ついでにディエウス)も含めてのサブタイトルでした。
両親に女装姿が露呈しました。
散々拒んできた姿をよく知った人に見られるのはいやですよねぇ。
もう少し両親を使って零をイジろうとも思いましたが、話が進まなくなりすぎるので控えめにしました。
ウィルスの出処はディエウスでした。
ディエウスは基本的に引っ掻き回す役回り。
転生物も転移物も神やそれの代わりの役はすぐに消えてしまいがちですが、ディアもディエウスもたびたび出す予定です。




