第三十一話 ここが住む場所(4)
第三十一話です。よろしくお願いします。
今回は上手く描写ができてるか……それだけが心配です。
四人のゲーム体験はやはりと言おうかそれぞれが夢中になってしまい、すぐには終わらなくなってしまった。
仕方なく零は隙を見て取り上げ、さっとウィルスの中に仕舞いこんだ。
「「あっ!」」「あぁ~っ!」
「ちょっと! まだ途中だったのに!」
「これはまた後で! 少しって言ったのに……すっかりご飯が冷めちゃったよ!」
零に言われてテーブルの上を見た四人はハッ食事中だということを思い出した。
「……そうだった。すっかり忘れてたな」
「しょうがないわね、後でまた絶対に貸しなさいよ!」
「フィーも、フィーもぉ~!」
「またお願いね?」
それぞれの席に戻っていき食事を再開する。
だが、再開してから少しして興奮が落ち着いたのかクローシェが零に気にかかっていたことを問いかける。
「ねえ、レイ。そういえば、さっきのあれ……魔道具……じゃないわよね? 一体何なの?」
「えっ?」
「以前に魔道具を作る所を見せて貰った事があるけど、どう考えてもさっきのような動きが出来るようなものじゃなかったわ。ひょっとしたらレイの所では出来るのかもしれないけど、それでもちょっと気になっちゃってね。……それで、どうなの?」
クローシェは乗り出し気味に尋ねてきた。
零としては元々一緒に暮らすことになったら世界の事を含めてちゃんと説明するつもりだった。
「うん、魔道具とは違うよ。じゃあ何かと言えば僕のいた世界をもう少し説明しないとね。……ええっと、あっちの世界では――」
零は地球の日本での事を簡単に説明していく。
すると、案の定ある部分で四人が驚きの反応を示した。
「魔法が……ない?」
「え? でもレイは……」
「目の前で何度も使ってたじゃないのよ」
「どうなってるのぉ~?」
零は四人の反応にさもありなんと思いながらも話を続ける。
「ごめん、その説明はまた後で。それで、魔法がない代わりに『科学』というのが発展したんだ」
「レイのことも気になるけど……その『かがく』はどういう物なの?」
「物というか……簡単に言うと、『どうしてそうなるのかを調べる学問』のことだよ。例えば説明は省くけど『物が燃えるのはなぜか』とか。それで、その科学を利用した道具とかが作られていって、その内の一つがさっきの板の様な道具なんだ」
何となく理解したのかクローシェは思ったことを口にする。
「さっきのには『色が変わるのはなぜか』とかが使われているのね」
「そういうこと」
クローシェは想像が当たって喜んだ。
ちなみにノーマやセアラは納得した表情だったが、フィオナは頭を抱えてウ~ンと唸っていた。
「じゃあ、レイが魔法を使えるのはどうしてなのよ?」
セアラが後回しにしていた疑問を零に問いただす。
「……あれは実は魔法じゃないんだ。どういう力かは自分でもよくわかってない所も多いからなんとも言えない。今はこの世界に来るときになぜか使えるようになったとだけ言っておくよ」
ウィルスの話をするとどうしてもディアのことにも触れてしまうため、零は混乱を招かないためにぼかして説明した。
「魔法じゃないのね。それならあの異常さも納得よ」
森での戦いを思い出しながらセアラは頷いた。
「じゃあ、疑問も解決した所で早く食べちゃいましょうね」
クローシェがみんなに食事を促す。
「レイくん、食べたらまた遊ばせてねぇ~」
フィオナが目を輝かせながら零にねだり、それに残りの三人も頷いて同調する。
零はお風呂の時間までだよと釘を差した上でみんなに貸す事を約束した。
夕食を食べ終わり約束通りスマホを貸したのだが、やはり四人とも夢中になってしまい再び零が取り上げる形で強制終了した。
「もうちょっとぉ~」
「だーめ! もうおしまい!」
「「「「えぇ~~~~~~~~!?」」」」
「まったくもう……珍しいのはわかるけど、ちょっとは自制して!」
零は嘆息しながら四人に注意をした。
「だって、ほかに遊べるものなんてほとんどないのよ!? それこそボールを単に投げたり蹴ったりとか、ごっこ遊びぐらいしかないのよ!? そこにこんなのを見せられたら止まらなくって当然じゃないのよ!」
だが、それに対してセアラが捲し立てるように言い返してくる。余程娯楽に飢えているようだった。
「はぁ……別に今日しか貸さないわけじゃないんだから。次はまた明日」
「明日ぁ? せめて寝る前にもう一度」
「だめ! そんなこと言ってると貸さないよ!」
「ぅぐ……分かったよ……」
零が貸してくれなくなるのは困るため、ノーマは声をつまらせ不承不承従った。
「それにしても厳しいわね」
頑なに拒む零を見てクローシェが呟く。
「あっちでもゲームのやり過ぎで身を滅ぼす人が出てるからね……。みんなの反応を見てるとそれの典型過ぎて心配なんだよ……」
「そ、それはマズイわね……。みんな、気を付けましょうね……」
零の事実でもある半ば脅しのような言葉にクローシェは危機感を持ったようだ。
他の三人もそれは同様だったらしく、真剣にうなずいていた。
「じゃあ、遅くなっちゃったけどお風呂にしましょうね」
「レイ、こっちだ」
クローシェとノーマが先導して零は浴場に向かった。
フィオナとノーマは別の部屋に向かって行ったようだった。
「ここが浴場さ」
「今から入れるから待っててね」
広い浴場の中には脚のついたそこそこの大きさのバスタブが置かれ、扉近くの壁際にはいくつかの篭の入った大きな棚とそれとは別の位置に小物が置かれた棚があった。
脱衣所のたぐいは無いようで、篭のある棚の場所で脱いで服を入れるようだった。
ノーマが棚から大きめの手ぬぐいを幾つか取り出し、クローシェはバスタブの前に立って意識を集中させ始めた。
クローシェがバスタブの方に両手を向ける。
すると、クローシェの目の前に滝のような水流が発生し、見る間にバスタブの中を満たしていった。
その様子を見た零は思わずパチパチと拍手をした。
「ふふ、ありがとうね。後は――」
「お待たせー」
「持ってきたよぉ~」
「――はい、ありがとうね」
途中で入ってきたフィオナとセアラの手には服があった。おそらく着替えだろう。
ただ、その量がどう見ても多かった。
具体的に言えば軽く五人分はありそうな量だ。
零はおかしいと思いながら、隣にいるノーマに聞こうと思って目を向けた。
しかし、そこにはすでに上の服を脱ぎ始めたノーマの姿があった。
零は急いで目を逸らした。
だが、そこにも既に上半身裸になったクローシェがいた。
「ちょっ! なんで脱いでるの!?」
「お風呂だからに決まってるでしょ?」
「レイくんもはやくぅ~」
フィオナとセアラは遅く来た筈だが、ノーマやクローシェより服が簡素だったせいか既に何も身に付けていなかった。
うっかり声のする方向を向いてしまった零はそれを真正面から直視してしまった。
これはマズイと思った零は急いで浴室から退場しようとした。
「ぼ、僕は後で入るから!」
だが、そこにセアラが回り込んだ。
零は身長差のせいで顔面をちょうどセアラの胸にぶつけてしまう。
「わっ! ……っぷ」
「ひゃっ! ……んっ!」
零の口の動きでセアラの口から艶かしい声が漏れる。
セアラはさすがに赤面して零の肩を持って胸から引き剥がした。
しかし、その体制では零の目の前に胸がさらされることになり、先ほどの弾力と先端の感触も合わせて今度は零が更に顔を紅潮させる事になった。
セアラはそのまま零を見据えて窘める。
「だめよ。レイも一緒に入るわよ」
「ど、どうして?」
零は極力セアラの目だけを見るようにして聞き返した。
「早くしないと水が消えちゃうのよ」
「へ? 水が消える?」
零は思わず首を傾げてしまった。
「そうよ。魔法で作った水はその内消えちゃうのよ。だからいつもみんなで一緒に入るのよ」
零も水を出せるし、こちらは消えることはない。
だが、出した分だけ取り込んだものを水に変換する事になり、風呂にするには量が全然足りていないのでその手は無理であった。
「うぅ、分かったよ。僕のためだけに水を出させる訳にも行かないだろうし、一緒に入るよ……」
観念した零は渋々服を脱ぎだした。
四人からの視線が集中して非常に脱ぎにくかったが、一応全て脱ぎ終わる。
今回は零が男だと知っている人物しかいない場所なので偽装はしていない。
だが、女性の前で裸になるのはやはり恥ずかしく、零は両手で前を隠しつつすぐにしゃがみこんだ。
「や、やっぱり恥ずかしい……」
「しょうがないな。ほら、いくぞ」
零はそのままノーマに担がれて浴槽まで運ばれていく。
しかし、その際に零の体勢が崩れてしまう。
「……っと、スマン……ってデカッ!!」
「おぉ~、レイくん本当にお父さんみたいだぁ~」
「でも、なにか……お父さんと比べると……こう……」
「……サラ……それ以上はお父さんの為にも言わないでおいてね」
「うわぁぁぁぁあああぁぁぁん!」
結局零の下半身は四人の前にさらされることになった。
そんなことがありつつも五人は浴槽の中に入った。
日本での入浴と違い、こちらではこの中で体を洗っていく。
特別に大きい訳ではない元々四人の為に作られた浴槽に、小さいとはいえ人一人が加わったため、かなり手狭になり洗う度にそこかしこが零に当たってしまう。
零は見た目こそ違うがれっきとした健全な少年である。
これまで何とか落ち着かせてはいたが、さすがに一部が反応を見せてしまった。
「? レイ、それはどうしたのよ? 大丈夫なの?」
本人より先に気がついたセアラが零に尋ねる。
その時視線が零に集中した。
「え? あっ! ご、ゴメン!」
零は謝りながらすぐにしゃがんで隠した。
「レイくんすっごく腫れてたよぉ~? 痛くないのぉ~」
「いや、これは……その……」
セアラやフィオナが心配する中、零はなんて答えるべきかを考えていた。
そこにノーマが口を出してくる。
「あ、ああ、それなら大丈夫さ……。むしろ健康な証拠……なんだが……」
「いくらなんでも……凄すぎるわね」
ノーマとクローシェは完全に引きつった顔でセアラとフィオナに答えていた。
零は二人の感想を聞いて完全にゆでダコのように真っ赤になっている。
セアラもフィオナも男に対しての知識は乏しいのか、ただ素直に安心しているようだった。
「そういえば、お父さんもだったけど……何で男にはそんなのがついてるのよ?」
そんな中、セアラが純粋な疑問を零にぶつけてきた。
零は思わず吹き出してしまった。
「フィーも聞きたぁ~い」
フィオナもセアラに同調して零に訪ねてくる。
零は変な汗を流しながらも一言答える。
「それは……その……、結婚する相手に聞いたほうがいいと思うよ?」
零はこれで質問を回避できた気になっていた。
だが、零はここでの結婚観を思いっきり見誤っていた。
「じゃあ、レイと結婚するから教えてよ」
「フィーも結婚するぅ~」
「……えっ? ……えええっ!!?」
零は慌ててクローシェとノーマに説明を求める。
「まあ、男が凄く少ないからな……少しでも好意を持っていれば十分に結婚の対象なのさ」
「もし結婚しなくても子供だけということも多いわね」
「そ、そうなの?」
零は男の貴重さを完全には理解できていなかった。
「それに私がレイを誘ったのも、フィーとサラの相手にと考えたのも事実だしね」
「最初から!?」
あの時からこうすることは折込済みだったのかと零は戦慄した。
「レイも今までの反応からして、この二人に好意はあるんだろう?」
「それは……えっと…………はい」
零はノーマの圧力に負けて返事をしてしまう。
「それなら、二人をよろしくね。あ、正体を隠したいなら結婚を強制したりはしないからね」
「よろしくね、レイ」
「レイくん、よろしくぅ~」
「その……よろしくお願いします……」
元々おとなしい性格の零は結局押し負けて、フィオナやセアラと婚約することになった。
ちなみに、男の体に対しての質問の答えは、また後日教えることを約束させられることとなった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
はい、肌色成分回です。
今までより多く入れております。
ただ、あくまでも話の流れとして入れられるレベルで無いといけないのでそこが苦労しますね。
表現の限界はどのへんなんだろう? 注意されない限界を目指したいですね。




