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第二十三話 脅威との遭遇(5)

第二十三話です。よろしくお願いします。


GW中に一話投稿しています。

まだの方は、そちらから読んでやって下さい。


戦闘回の続きです。迫力と説明の表現バランスが難しいですね。

 ラヴァコングは動きだけを見ればそこまで早いものでは無かった。しかし、その巨体のせいで一歩が大きく、ホーンラビットに迫る速度で三人に詰め寄ってきた。

「避けろぉぉぉっ!」

 ラヴァコングの持つ棍棒が縦に振り下ろされるのを見て、三人はその場から飛び退く。

 棍棒は地面に叩きつけられる。その衝撃で土が吹き飛び、痕には小型のクレーターが出来上がった。

「下位とはいえさすがは上級……シャレにならない力ね」

 その光景を見たセアラが思わず声に出す。

「俺らが倒せなければ街に大きな被害が出る。二人共腹をくくれ。セアラ、行くぞ!」

「レイはそこから動かないで! 後ろから援護をお願いね!」

「わ、分かった」

 零は初めて見る巨体に少し尻込みしながらも答えた。

 セアラとギルド員がラヴァコングに向かって行く間に、零は先制でレーザーを放つ。

 しかし、ラヴァコングは少し痛がる素振りを見せただけで、あまり効いている様子がない。命中した部分にも少し焦げた痕があるだけであった。

(……ここまで効かないなんて!)

 ラヴァコングの事については零の読んだ本には書かれてなく、何も知らない状態だった。

 レーザーは光を使った攻撃ではあるが、実際にダメージを与えるのは虫眼鏡で光を集めるのと同じで熱である。

 鉄板の切断も可能な威力のはずだったのだが、溶岩猿(ラヴァコング)の名前は伊達ではないようで、熱への耐性は相当なものだった。

 零の遠距離攻撃の残りはウィルスプログラムでの投石だけ。だが、木をへし折りながら森を進んでいたラヴァコングには、半端な打撃では効果は見込めない。巨大な相手に対して準備不足は否めなかった。

(でも……これならどうだ!)

 零は即座に狙いを変え、威力は落ちるもののレーザーを二発連射した。そして、二条の光がラヴァコングに狙い違わず命中しその両目を潰す。

 熱には強いラヴァコングだったが、光そのものに対しては普通の動物とあまり変わらなかった。許容量を超える光を網膜に浴び、その機能を失わせる。

 ラヴァコングは目を両前肢で覆い、苦悶の鳴き声を上げた。

「レイ、でかした!」

「今のうちよ!」

 動きの止まったラヴァコングにセアラとギルド員が剣や槍で攻撃を加えていく。

 しかし、二人の攻撃は有効なダメージを与えることが出来ず、ラヴァコングにとって浅い傷を与えるに留まっていた。

「皮が硬すぎよ! ミスリルの剣が欲しいわね!」

「無い物ねだりしてる場合か! このままやるぞ!」

 目の見えなくなったラヴァコングは手当たり次第に前肢を振るった。

 二人はそれを掻い潜りながら少しずつダメージを与えていく。ラヴァコングの体表には時間を追うたびに傷が増えていった。

 だが、ただでさえ深くないその傷も更に浅くなっていく。硬いものを切りつけていくうちに刃が少しずつ潰れていっているからだ。

 零は動くなと言われていたものの、二人が攻め(あぐ)ねている様子を見て、邪魔になる実の詰まった袋をこっそりと黒い球体にしまい、自分も前に出る事にした。


 その時、戦況に変化が訪れる。突然、ラヴァコングの動きが止まったのだ。零の感じていた違和感も強くなる。

 突いても切りつけてもラヴァコングは動かない。

 ギルド員はこの隙に辛うじて切れ味の残る槍で心臓を狙うことにした。ラヴァコングの胸部に向けて跳び上がり、全力で槍が突き出される。

 しかし、その槍はラヴァコングに突き刺さることなく、空を切る音を発しただけであった。

 動きを止めていたラヴァコングはまるで目が視えてる(・・・・・・)かの様に(・・・・)後ろに引いて槍をかわし、棍棒を横に振りかぶっていた。

 ラヴァコングの棍棒が横薙ぎに繰り出され、ギルド員をふっ飛ばした。

 棍棒は跳び上がっていったギルド員の脚に当たったようで、脚があらぬ方向に曲がり出血をしていた。落ちた時の衝撃のせいか起き上がる気配もなかった。

「イヤアアアァァァァァァアアッ!!」

 隣で戦っていた仲間の無残な姿にセアラは耐え切れず、悲鳴を上げて立ちすくんでしまっていた。

 しかし、ラヴァコングは構うことなくセアラを次の目標に定め、棍棒を頭上に振りかぶる。

「サラッ!」

 そこにギリギリで零が辿り着き、振り下ろされる棍棒の前に立ちはだかった。

 そして、棍棒は何の抵抗も(・・・・・)無かった(・・・・)かのように(・・・・・)振り下ろされ、地面と当たり土煙を上げた。

 まるで人が愉快な光景を見たかのように、ラヴァコングは声を上げて笑い出した。

 だが、その笑い声は小さな影が動いたかと思うと胸に衝撃を与えられて、中断させられる。

 ラヴァコングの胸部には潰された筈の零が居た。手に持った太刀はラヴァコングの胸に深々と突き立っている。 太刀の刃の硬度はラヴァコングの皮の硬さにも見事に通用していた。

 ラヴァコングは首を動かしそこまで確認したところでゆっくりと後ろに傾き、轟音とともに倒れこんだ。


 零は太刀を通して伝わるラヴァコングの鼓動が無くなったところで胸から引き抜いた。

 零はセアラの方を見て無事を確認する。セアラは何が起こったのか整理ができていない様で、視線を零とラヴァコングの間で(せわ)しなく動かしていた。

 その側には分断されたラヴァコングの棍棒の先が落ちている。

 だが、その長さは異様に短く、ラヴァコングの手元に残る側も握られている部分から僅かにある程度だった。両方を合わせても元の長さには全く及ばない。

 では、残りの部分がどこに行ったのか。

 その答えは零のウィルスの中であった。

 零はウィルスに物を取り込む際に浮いている球体に投げ入れるのではなく、もう少し楽な方法は無いかと考えていた。

 その時に思いついたのが球体の座標を、その場の地面ではなく零の手を基準点にすることだった。

 そうすることで球体を零の手の動きに追従させる事ができ、地面に置いた物に球体を合わせるだけで取り込むことが出来るようになった。

 今回はそれを盾のように使い、棍棒の大半を削りとったのだった。

咄嗟(とっさ)の思いつきだったけど、上手く行ってよかったぁ)

 零はセアラの無事を見てホッと一息をつくと、ギルド員の様子を確認するためラヴァコングの上から飛び降りた。


 零が着地したその時、頭上で何かが空を切った。頭上を見上げると、そこには振り切られたラヴァコングの拳がある。

「レ、レイッ!」

 ヒヤリとする光景にセアラは悲鳴のように声を上げた。

 零とセアラは急いで距離をとり合流した。その際にもラヴァコングの前肢が振るわれ、零のいた場所に叩きつけられる。

「倒しきれてなかったの!?」

「違うよ! 確かに心臓は止まったんだ!」

「じゃあ、なんで動いてるのよ!」

 ラヴァコングはゆっくりと立ち上がった。胸からは血が流れ続けているが気にした様子はない。額からの違和感はさらに強くなっていた。

「ひょっとして額にある、あれのせい?」

 零は額の石もラヴァコングの一部だと思っていた。だが、今はどう考えても違うと感じている。

「額!? そんな所に何があるのよ!?」

 セアラの言葉でそれは確定的になった。ギルド員も額については何も言っていない。

 つまりは零だけが見て感じる事の出来るそれが、目を潰しても見えているように動き、心臓が動いていないにも関わらず動き出した原因だった。

「見えないならいいよ。それより、サラはこれを使って。切れないよりはマシだと思う」

 零はセアラに脇差しを渡した。リーチはあまり無いが、物は太刀の方とほぼ互角なのでラヴァコングの皮にもちゃんと刃は立つ。

「……今は礼だけ言っておくわね。ありがとう、借りるわよ」

 セアラは言いたいことを我慢しながら脇差しを受け取った。

 ラヴァコングが短くなった棍棒を二人に投げつける。

 二人は棍棒を避け、セアラはラヴァコングの元へ駆け寄り、零は額に向かってレーザーを放った。

 レーザーは一瞬額に当たった物のすぐに左の前肢で防がれた。

 だが、やはり重要な部位なのはハッキリした。零は左右に動きながら近づき、なおもレーザーを放っていく。

 レーザーに気を取られている間にセアラがラヴァコングの元にたどり着き、脇差しを振るう。

 セアラの使っていたのはツーハンデッドソードのような全長160cm近い直剣で肉厚な物だ。そのせいで慣れない振り方ではあったが、留守になっていた右前肢は肘のあたりを半ばまで切り込まれた。

 セアラを排除しようとラヴァコングは蹴りを繰りだそうとする。

 だが、その間に零は近づき逆の脚に太刀を振るい足首で切り離した。

 ラヴァコングはバランスを崩して蹴りを外し、そのまま倒れこむ。その隙にセアラは右前肢の同じ部分をを逆から切りつけ断ち切っていた。

 零は額を隠す左前肢へと斬りかかった。ラヴァコングは額を抑えるのをやめて反撃するが、レーザーを放つと額を抑えるしかなくなり切り飛ばされる。

 そして、とうとう無防備になった額に、零は太刀を突き刺した。

 石のような塊が砕けるように消えていく。その途端に違和感は消え、ラヴァコングの全身から力が抜けていった。

「……今度こそ倒せたのよね?」

「……多分そうだと思う」

 違和感やその原因は無くなったが、零にも自信がある訳ではなかった。

 二人は少しの間ラヴァコングを周囲から眺めてまわり、動く気配がないことを確認してようやく一息つくことが出来た。


――――――――――――――――


 とある場所で起き上がる人影があった。

 その表情には若干の腹立たしさが浮かんでいる。

 だが、人影はあっさりと気を切り替え、次のことを考え始めた。

 その顔にはハッキリとゆがんだ笑みを浮かべていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


相手もチート。

状況が何度も覆るのは恐ろしい。

最後は零一人だと手数的に厳しくなります。撃ちながら切るのはやってませんから。

もちろんセアラ一人でも手数は厳しいです。


ウィルスガード、こんな真似もできます。

他にも使い道はあるかも。

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