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第十七話 できることをやってみよう(4)

第十七話です。よろしくお願いします。


忙しいままで修正ができない……。

話は何とかいつも通りの字数です。


一話から二十話までを改稿しました。('15.05.03)

話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。

そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。

また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。

「レイに合いそうなのはこの辺りか」

 ノーマが取り出してきたものは茶色の革で出来た防具だった。

「用意できるのは胸当・手袋・脛当(すねあて)の3つだな」

 胸当ては本当に胸部だけを隠すように作られている。手袋は第二関節より先が無く籠手と一体化、脛当はロングブーツの前面が膝上辺りまで伸びたものだ。

「意外と少ないんですね」

「子供に重装備させても、動けなくなってかえって危険だから、用意してないのさ。まずは付けてみてくれないか?」

 零はそれらを身につけて軽く動いてみる。

「凄い。革製なのに、手首も足首も動かしやすいや」

「実はそこで二つに分かれてるんだ。それを畳んだ別の革で繋いである。だから動かしやすいんだ」

「へえ、工夫されてるんだなぁ」

「いや、さっきも言ったがそれは端材で出来てるんだ。一枚の大きさが足りなかっただけさ」

 工夫したのは確かだが理由が全く違っていて、零は思わずコケそうになった。

「そんな反応するなよ……。で、見たところ問題は無さそうだが、それらでいいか?」

「あ、はい。防具、ありがとうございます」

 零は素直に喜んだが、ノーマは真面目な顔をしていた。

「よし、じゃあ一言忠告。いくら防具を付けたと言っても過信はするなよ。防具だって壊れる物なんだから、防具の上からでも直撃は避けて出来る限り避けるか受け流せよ」

 零は小さいので尚更に受け止める事には向かない。零はしっかりと頷いた。

「……今のは初心者には必ず言うことにしてるんだ。たまに何も考えずに突っ込んで大怪我をするのが居たりするから……」

「あ、やっぱり居るんですね。そういう人も」

「やっぱり?」

「あっちの物語とかで出て来るんですよ。装備だけ新しくしてあっさり倒される人の話とかが」

「悪い見本として聞かせてやりたいな。まあ、そんな話を知ってるなら大丈夫だとは思うが、気を付けてくれよ」

「はい、分かりました。じゃあ、そろそろ――いや、そういえば」

 零は帰ろうとした所で、ふと思いついた。ここなら探しに行かなくても手に入るのではないか。

「すいません。何でもいいのでゴミはいっぱいありますか?」

「はぁ? ゴミ? しかも、いっぱい?」

 ノーマが素っ頓狂な声をあげるのも当然の事だった。


(プログラムは完了っと。それにしても、結構いっぱいあったね)

 零は今ノーマの店と隣の店の間にある木箱の影にいる。人通りがなく危険の少ない場所を聞いたのがここであった。

 零の手には袋が握られている。中に入っているのは頼んだゴミ、修理品の盾や鎧の内でも再利用が出来ない部分が10kg以上入っていた。

(さて、これを――)

 零の目の前に黒い球体が現れる。

「よっと」

 そして、そこにゴミの入った袋を投げ入れてウィルスに取り込ませた。

 ウィルスの稼働にはマナが要る。エネルギーに変わるのであれば何でもマナになるため、球体を外に出しているだけでも光・熱・風等で少しづつ溜まっていくのだが、やはり手っ取り早いのは物体を取り込ませて変換させることだった。ただし、エネルギー効率で言えば変換の手間があり格段に低いのだが。

 元々は街の外に行って適当に落ちている石等を球体に放り込むつもりだったのだが、重量のあるゴミが分けてもらえたため暫くは平気だろう。

(で、取り込んだゴミの一部を――)

 先ほど作ったプログラムを起動する。すると、零のすぐ前に徐々に何かの影が姿を現し始める。そして、約二分後にその全体が形作られた。

 零の眼の前にあるのは日本刀、刀身で85cm程の長めの太刀だ。零は手にとって鞘から少し引き抜いて、ちゃんと刀身も作られていることを確認し、納刀した。

(よし、思った通り出来るみたいだ)

 零が行ったのは零の記録内の物体の再現であった。この世界に、地球上でも特殊な部類の刃物である日本刀が存在する可能性が低いため、自分で用意することにしたのだ。

 以前に博物館で見た実物の刀。ガラス越しではあったが確かに記録は存在していた。

 そのデータを元に取り込んだ物質を改変・再構成して、全く同じものを作り出したのだ。

 ちなみに、これを使えば防具もできる――筈だったのだが、零に合うサイズのものを直接眼にした事はなかったので断念していた。

 剣道の授業の時も零には学校に置いてあった防具では大きく、対人戦では仕方なく無理やり着て動きづらかった為、自分に合った物を見繕うことにしたのだった。実際には貰うことになったが。

 勿論、消耗品や日用品も作れるのだが、取り込んだ物を同重量分とプログラム分消費する事になるので、買えるものは買うことにしていた。無制限に作れる訳でも無いのだ。

 零は立ち上がり、腕を真横に伸ばして刀を鞘ごと延長線上に向ける。その状態でもまだバランスは保てているため使うことはできそうだ。

 零は刀を()こうと思ったが、背の関係上でかなり斜めに挿しこむ必要があり、人通りの多いこの場所では人に引っ掛ける恐れがあった。

 仕方なく零は黒い球体を出し刀を中に入れた。中に入れてもすぐに消費される訳ではないし、今までに入れた分はまだ多く残っている。万が一消えたとしても材料さえあればまた作り出すこともできる。

 そして今度は代わりの脇差しを作り出した。刀身の長さは50cm程の為、これなら余り邪魔にならない。

 零は肩にかけていたショールを帯代わりに腰に巻き付け鞘を差し込み、下げ緒とショールを絡ませて栗形で止める。さすがに正しい方法は知らないため、ちゃんと止まって不格好にならない程度ではあったが。

 こうして少し装備を整えた零はギルドに戻っていった。


 ギルドに戻った零は再び訓練場の中に入り、今度は木剣を取りに行かずに開いている場所に向かった。

 零は下げ緒を解いて鞘ごと刀を帯から外し、今度は下げ緒を柄に巻きつけて結んだ。これで振り回しても鞘は抜けることはない。

 零はまずその状態で刀を振るう。鉄の鞘付きのため抜身の太刀と同等以上の重さだが、振り回される程ではなくまず問題は無さそうだった。

 零は簡単に動きを確認した後、先に作ったもう一つのプログラムを起動した。すると、零の目の前に立体的な棒人間が現れた。

 しかし、そんな異様とも言える物が現れても、周りからは何の反応もない。

 何故なら、この棒人間は零の眼にしか見えないAR映像なのである。これなら周りから騒がれる事はない。

 何故棒人間かといえば、表示が簡単だったことと、周りの人との区別のためである。

 零は棒人間に向かって刀を構え、スタートを選択した。すると、棒人間の両手に短剣が現れ、零に向かって切りかかってくる。

 零は右手側の短剣をかわし、左手側の短剣を弾いた反動でそのまま開いた細い胴体に一撃を入れる。弾く時と叩いた時に、刀にしっかりと()()()()()()()

 叩かれた棒人間が後ずさると、いつの間にか短剣は消え代わりに()()()()()。すると、今度は連続で突きを放ちだした。

 零はそれをかわして受け流しながら前進する。しかし、捌ききれずに一撃が肩に当たってしまい零は()()()()()()()

 AR映像なのになぜ手応えがあったり飛ばされたりするかといえば、零自身や棒人間に当たり判定を付けた上で、それに合わせて当たった時にそこに力を発生させているせいである。

 いくら練習とは言え本当にただの映像に対して刀を振るだけでは効果が低いと思って付け足してあるのだ。

 また、突然武器や動きが変わったのは、昼前に見た訓練風景からランダムに動きを拾いその動きに合わせた武器を表示させているからである。

 動きの種類は訓練風景が目に入ってる今も現在進行形で増えている。もちろん攻撃だけではなく防御の動きも入っていてしっかりと防いでくる上、そこからの反撃もあったりする。

 しかも、零が若干プログラムの手を抜いているため、攻撃動作から突然防御できたり、逆に防御動作から突然攻撃されたり、斧を振りきった次の瞬間に短剣が振るわれたりと人外の動きまでしているのだ。

 さらにそこからランダムな数と位置で追加の棒人間が乱入してきたり、何種類かの弾が突然飛んできたり、ブロックやボールによる足場の妨害があったりと、難易度は練習と言うには異様なまでに高いものであった。

 こんな無茶苦茶な練習をしていれば、体力が上っているとはいえ当然疲れが出て来る。

 そして、ランダム発生した弾が零の至近距離真後ろで発生し、零は避ける間もなく当たって前によろめいた。

 疲れのせいか踏みとどまれずに、零は勢い良く前に進んでいく。その後、壁際ぎりぎりの所でようやく踏みとどまることが出来た。

 零は一度棒人間の動きを止めて息を整える。そして、そこから何気なく足を前に一歩踏み出した時、あることに気がついて逆の足を見る。

 零は先ほどよろめいた所からの動きを思い出す。なぜ勢い良く進んだのか。なぜ止まることが出来たのか。そして、どう歩き出したか。

 一つの仮説に思い至り、零はそれを試してみる。すると、明らかに移動速度が上がっていた。

 零がしたのは歩き。ただし、上げた足は前に出さない。その代わり()()()()()()()()()()()()()()歩いたのだ。

 先ほどよろめいた時に零は足が前に出ずに止まれなかった。そして、止まるときには足を前に出して踏ん張った。

 そう、足を前に出すのはブレーキを掛けるのと同じなのだ。

 そして、その後歩こうとした時に零は当然のように足を前に出した。だが、足を前に出すのは止まる時と同じ動作なのである。歩くときに使えばもちろんそれもブレーキになり速度が落ちるのだ。

 それに気がついた零は、しかし足を前に出すことが正解じゃないならどう進むのかを考えた。

 その時、もう片足を見て思ったのがこっちで地面を蹴る、つまりは足を下げて地面を押すということだった。

 試しに零は片足を上げながら逆の足を下げ、上げた足は真下に下ろして歩いた。結果は先程の通りである。

 零はラノベ等で動きの無駄をなくして早く動けるようにすると言うのを目にしたことがあったが、これがその事かと納得した。

 零は休憩しながら他の動作についても反対の力や余分な力がないかを確認していく。この際にウィルスで動きを数値化出来たので、すぐに改善点は見つかった。

 休憩を終えて零はもう一度棒人間を出し練習を始める。今回は動きが改善された分、普通の攻撃はほぼ全て(さば)くことができ、不意打ちのような突然の動作の切り替わりに対しても一部対応ができて、当たっても直撃はなかった。

 一時間近く続けた所で、さすがに限界を感じて切り上げた。

 その時ようやく周りに目をやると、大半の人が呆然と零の方を見ていた。

 それもその筈、零のように小さい子供に見えるのが、本当に誰かが居るかのように激しく剣を振るい、更には本当に攻撃を受けたかのように不自然に飛んだりしているのだ。

 最初の時は数人が見間違いかと思う程度だったが、もう一度現れて同じようなことをすればおかしいと思い周りにも伝わって当然だ。

 零は追求が来る前に急いで訓練場を後にした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ようやく最低限の準備が整った感じです。

下着の時の考察は刀の時にでやる予定でした。


ウィルスストレージとでも言うんでしょうか、物が消えてく欠点付きですが。

実は持ち運びのアイディアとして地味に苦労した場所です。


AR棒人間は何が起こるかわからないと考えて、わざと心折設計に。

しかも、どんどん動きが増えて強化されていきます。

負けなかったとしても勝てる相手ではありません、体力とかは設定されてませんし。


歩き方は作者実験済み。

作者の場合は力まずに歩いても、普通の歩き方での早歩きと言える程スピードが出ました。

それだけブレーキが掛かって脚力を無駄にしているわけです。

走るときにも応用できます。足を前に出さなければ良いだけなので。

足の動きを他の例えで言うと、手の上に棒を立てたまま前進する時に棒を前後へ交互に揺らしながら進む時の棒が普通の歩き方で、直立から前傾の間で進む時の棒が作中の歩き方になります。

どちらが早く前に進めるかはすぐ分かるはずです。

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