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第十六話 できることをやってみよう(3)

第十六話です。よろしくお願いします。


名前についてまだ修正出来てません。

直そうと思ったら忙しくなってしまった。ああ、時間がほしい。


本文は普段通りの字数がありますから安心して下さい。


一話から二十話までを改稿しました。('15.05.03)

話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。

そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。

また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。

 零は訓練場の扉を開けて中に入る。訓練場の中は相当に広く、バスケットボールのコートが4つ並べられる程あった。

 ここにも多くの冒険者がいて、それぞれが練習用の武器を丸太に向けて振り回したり、魔法を放ってたり、模擬戦をしていたり、それらの様子を眺めたりしていた。

 零は少しの間眺めていたが、まず武器がなければ始まらないと思いあたりを見渡す。

 武器は零の後方、入口側の壁際にあった。前方に気を取られていたせいで見落としてしまった様だ。

 零は少し気恥ずかしく少し気恥ずかしく思いながら、木剣のある方に向かって行った。


 零は既に使う武器は決めてある。ひとまず今はそれに似た物を探していった。

 零が実際に使おうとしている武器は日本刀。これにはちゃんと理由がある。

 大きくは、零の身体的特徴が問題だった。零が小さく、軽すぎるのだ。

 武器は基本的に腕を水平方向に伸ばして使うことが多い。これは射撃武器・投擲武器ですら言えることだ。

 真っ直ぐ立って腕を水平方向に伸ばした所で手に重い荷物を持つとバランスを崩す。これには荷物を持つ人の力は全く関係がない。何故なら力を出そうにもこの時に足が地面から離れてしまうからだ。

 関係してくるのは体重だ。荷物の重さに負けない位の体重がある、逆に荷物が体重に勝てないほど軽い場合でなければ足が地面から離れてバランスが崩れてしまう。

 脚を広げればバランスが取れるが、それには限度がある。その上そこから振り回すと遠心力が加算されるのだ。持つだけでギリギリでは全く耐えられない。

 零はとにかく軽い為、重い武器は振り回せない。こっちに来てから何故か力が上がっているのを実感している零だったが、それでもまともに使うことは出来ないのは分かっていた。

 槍等の長柄武器や大型武器はどうしても重くなるので使えない。

 ナイフや短剣なら楽に使えるが、ただでさえリーチのない零は完全な密着戦になってしまう。これでは一撃で相手が倒れない限り掴まれたりする可能性が格段に高くなる。そうなったら軽い零には致命的だ。

 中型の武器は武器として振ることが出来るだろうが、片手用のメイス等の打撃武器や刀剣類でも直刀の類は相手に叩きつけて使う事になる。やはり体重のない零に向いた武器ではなかった。

 その為、零に使えそうな近接武器は刃を滑らせて切り裂く曲刀の類しか無かった。

 その中で何故日本刀なのかといえば、刀身が細いため長さの割には軽くて済むためである。

 また、零が受けた体育の授業に剣道があった。あれは殆ど叩くだけで切る動作は無いが、日本刀での動作に使えると零は思った。

 箱の中から零が手に取ったのは柳葉刀(りゅうようとう)(よく青龍刀と呼ばれる刀)の様な木剣、全長90cm程の物だ。

 欲を言えば日本の木刀が良かったのだが見当たらなかった。

 しかし、日本刀は鋼で出来てる事もあり、重さだけはこちらの方が近いと思い直してこれを使うことにした。


 零が武器を選び終わると、隣にドワーフの冒険者が立っていた。

「オイオイ、お前それを使う気か?」

「何か問題がありますか?」

 突然の物言いに対して零は絡まれたと思い、警戒をしながら答える。

「いや、驚かせてすまん。それは木だからまだいいが、本物はもっと重いものだ。お前にはちょっと無理があると思うぞ」

 どうやら合わない武器を持つ零を心配しての言葉だったらしく、諭すような声で語りかけてきた。

 零は警戒を緩めて返事をする。

「いえいえ、大丈夫です。使おうとしてるのは別のもので、これは重さにも慣れようと思っただけですから」

「そうか、それならいいんだ。ところで、使おうとしてるのも曲刀か?」

「そうですけど」

「なら、俺が基礎を教えてやろうか?」

「え? いいんですか?」

 指導者がいないことを聞いていた零は、思いがけない言葉につい聞き返した。

「ああ、構わん。だが、俺は槌がメインで曲刀はサブだからな。基礎以上の事は他から学んだほうがいい。それでもいいか?」

「はい。お願いします」

「よし、ついてこい」

 それから1時間程、零は主に剣の振るい方と捌き方を教えてもらう。剣道の構えを少し不思議がられたがそれ以降は問題なく――いや、なさ過ぎる程に訓練は進んだ。

「よし、基本的な動作はこれで十分だろう。……にしても、上達が早過ぎるだろ! 一動作を両手で足りるぐらいでは覚えないぞ!? 普通は!」

「あはは、記憶力には自信があるからね。多分そのせいじゃないかな?」

 実際に零が使ったのはそれだけである。

 手本の動きを見て自分で動きそれを頭の中で比較する。そして、次はその差分を修正して動いていった。感覚も含めて全て記憶できるからこそ出来る芸当だ。

 勿論実際の体の動きは多少ズレるので、さすがに一回では修正しきれず数回掛かったのだが。

「天才って奴か。お前は入りたての初級だろ? 今でこれなら、将来は特級まで行くんじゃないか?」

「確かに初級だけど。特級って?」

 受付で詳しい話が聞けていない零は疑問に思った。

「ギルドのランクで下級・中級・上級そして一番上が特級だ」

「あれ? 意外と少ない?」

「いや、それぞれ上・中・下で分かれてるからな。結構多いぞ。俺も中級の上だし、まだまだだ」

「初級は分かれてないの?」

「初級は分かれてない。まあ、今はそんなに気にする話じゃないと思うぞ。下級になるのにはまだ六・七年は掛かると思うからな」

 零はそれを聞いて驚いた。天才とか言った割には、下級になるまでそんなに掛かるというのだ。どれだけ審査が厳しいんだろうと思った。

「先の長い話だね」

「まあ、お前ならその後はすぐに上げられるだろ。それまでは焦らずに腕を上げていくといい。……さて、教えられることは教えた! 後はいろいろ試すなり、他の奴に教えてもらうなりしてみるといい! がんばれよ!」

「はい、ありがとうございました!」

 零はお礼を言って別れた。そして、訓練場全体が見渡せる場所に移動する。

 零はそこで訓練風景の出来る限りを眺めていった。


――リーンゴーン――リーンゴーン――


 昼を告げる鐘が鳴り響いて零は一旦切り上げる事にした。

 木剣を戻して訓練場を出る。そして、受付に行きエイベルに話しかけた。

「ちょっと聞いてもいいですか?」

「うん? ああ、レイか。なんだい?」

「食事が出来る所と、防具を売ってる所、後は道具を売ってる所を教えて欲しいんだけど」

「構わないけど、武器はいいのかい?」

「うん。そっちは当てがあるから」

「それならいいけど。じゃあ、店の場所だけど――」

 零はエイベルから店の場所を聞いた。零はさっそく店に向かおうとしたがエイベルに呼び止められる。

「あ、レイ。僕の方からも聞きたいことがあるんだ」

「なんですか?」

「リタさんなんだけど、あの後見かけないんだよ。なにか知ってるかい?」

 エイベルは内緒話の様に零に話しかけた。零も釣られて小声で返す。

「リタさんと言うのは?」

「今朝に入り口で別れたすぐ後にレイと話してた人の事だよ」

「え? えっと、その。言っていい物かどうか……」

「どうしたんだい? 言ってごらん?」

 リタの傷を余計に広げる気がして言い淀む零に、エイベルはなおも問う。何らかの答えを返さないと終わらない気がして零は一部だけを話すことにする。

「その、何かひどく落ち込んだ様子で帰ってしまいましたが……」

「落ち込んで……、そうか……分かった。教えてくれてありがとう」

 何やらエイベルの言葉に感情が(こも)っている

 零はこの判断が悪い方向に向かわない事を祈りつつ、店を目指して歩いて行った。


――――――――――――――――


 最初に向かったのは宿屋だ。昼間は食堂としても開いている所で昼の鐘直後ということもあり多くの人で賑わっていた。

 零も空席ができた所で座り注文をしたのだが、出てきた料理は基本塩味のシンプルな物。クローシェの店の休憩室で食べたものよりは丁寧に作られて味も確かなのだが、零にとってはどうにも物足りなく感じていた。食堂でこれでは食事の文化があまり進んでいない様だった。

 零は次に道具屋に向かった。ここは冒険者専用という訳ではなく、一般的な日用品も売っている店だ。

 零は店内を見て回りハンカチや財布代わりの小袋と言った日用品や、採集用のナイフや陶器製の小瓶、そしてポーチ等を手に取っていく。

 店内を見まわる途中で消耗品の置いてある棚を見ると、ゲーム等ではお馴染みの回復薬が目に止まった。

 零は「まさか実物を見る事になるとは」と思いつつ眺めていると、ふと値札が目についた。

 値札に書かれていたのは『金貨二枚と大銀貨一枚』、日本円で五十万円程であった。

 零は驚いてそばにある毒消しの値段を確認した。こちらは『銅貨一枚』、日本円で二千円程だった。

 回復魔法をかけてもらうのが高いのは聞いていたが、回復薬も一般人に手が出るものじゃない。自身に治療手段があるとはいえ、零は出来る限り怪我をしないようにと気を引き締めた。


――――――――――――――――


 零は道具屋で必要な物を買い、今は防具屋に向かっている。武器は置いていない防具専門店だ。零のサイズに合うものだと専門店でないと難しいとの事であった。

「『ノーマ防具店』、ここだね」

 この店は専門店な上に売り物がかさばるだけはあるのか、クローシェの店より更に間口は広かった。こちらの店は正面が開放されておらず、中の様子は見えない。

「お邪魔しまーす」

 零は扉を開けて、声を掛けながら中に入った。

 さすがに一般的な服に比べると遥かに高価なためか、現在中にいる客は二グループの数人程であった。

「あら、お客さん? 店長ー、済みませんがお願いしまーす」

 接客する店員が少ないのか、零の声に気づいた店員が店長を呼び出した。

「え、いや、今回は買いに来たんじゃなくて、値段の下見に来たんですけど」

 零は慌てて言うものの、既に足音が聞こえてきていた。そして、すぐに店長の姿が見えた。

 店長は身長はクローシェより僅かに高く、体つきは似たり寄ったりだ。水色の髪と目をしていて、胸の当たり目である髪を右肩の上で結び体の前に垂らしている。何となく劇で男役が似合いそうなヒューマンの女性だ。

 歳もクローシェと同じぐらいに見える。――というよりも、今までに見た成人の女性が大体同じぐらいに見える。20代後半以降の女性はどこにいるのか不思議だった。

「随分小さなお客だね。いらっしゃい。……あれ?」

「あの、さっきも言ったように――って、どうかしましたか?」

 店長が突然、零を見回し始める。その行動を零は不思議に思った。

「もしかしてクローシェの店で泊まってる子か? 君の名前はレイ?」

「そ、そうです。なんでそれを?」

 零の店で泊まっているのも、名前を知っているのもクローシェ達ぐらいだ。クローシェ達が無闇に他言するとは思えず零は聞き返した。

「それは家族になる子のことだから、クローシェから昨日の内に見た目と名前ぐらいは聞かされたよ」

「? 家族? 娘が居るのは聞いてたけど、……違いますよね?」

 零の知っているクローシェの家族は娘のフィオナぐらいだ。しかし、どう考えても店長は違うだろう。

「当たり前だよ。私はノーマ、クローシェとは旦那と三人で結婚した仲さ」

「え? あ、重婚出来るんですか?」

「……聞いた通り、ほんとに知らないことが多いみたいだね。外を見ての通り男が少ないんだ、当たり前だろう? 男一人あたりで7人ぐらいは普通だよ。私達は極少ない部類さ」

 言われれば確かである。ただし、そう考えると今度はそれでも女性が余りすぎるのではあるが。

「まあ、そういった話は家に来た時にゆっくり話そうか。それよりレイの防具を見繕わないと」

「あ、下見のつもりだったからお金は無いですよ?」

 ノーマにも聞こえてたとは思うが、念のため零は断っておいた。

「クローシェからもその服を貰ってるんだろう? 私からもあげるよ」

「大丈夫ですか? 服よりかなり高いですよね?」

「問題ないさ。子供用のはそんなに高くはないよ」

 ノーマは「端材(はざい)で作ってあるからさ」と(おど)けると、零を店の奥に案内した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ようやく訓練が始まりました。

使ったのはプログラムじゃなくて副次的な能力ですが、見ただけですぐ覚えられるのは十分チートですね。


今回は長めの説明文が入りました。

さすがに一人の時は会話が入れられず、どうしようもなかったです。

見やすさ、分かりやすさには気をつけたつもりです。

武器の重さと体重については、残念ながら事実です。

例え重機並みの力があっても真下や真上から支えない限り、体重に合わない物を持ち続けることは出来ません。重量物が体の横にある場合は、地面から浮いた瞬間にその方向に体ごと倒れ始めます。

重量挙げの選手が一回バーベルを浮かせた後、すぐに体をバーベルの下に来るようにしているのはこのためです。

巨大武器にはロマンがあるんですけどね……。

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