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第十四話 できることをやってみよう(1)

第十四話です。よろしくお願いします。


護衛をしていた四人に名前をつけました。(今話に出て来るのはドワーフ、ハーフリングの名前)

これ以前の話については後ほど訂正します。

ドワーフ:エリン

ハーフリング:アビー

ヒューマン(おとなしい方):アリスン

ヒューマン(軽口の方):イーディス


一話から二十話までを改稿しました。('15.05.03)

話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。

そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。

また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。

 次の日の朝、目が覚めた零は寝ぼけ(まなこ)のまま起き上がろうと体を動かす。

 しかし、何故か腕が動かせなかった上、体に重みを感じて上手く起き上がれなかった。零は金縛りかと思って何とか起き上がろうと体を(よじ)ろうとする。

 零が起き上がろうと少しの間身動(みじろ)ぎをしていると、突然背後から声が聞こえてきた。

「……レイ、おはよう」

 零は声に驚いて首を(ひね)り、横目で背後を確認する。するとそこにはアビーの顔が見えた。

「え? な、なんでアビーが?」

「レイは抱き心地がいい。よく眠れた」

 アビーは自分の警備の番が終わった後、零の眠るベッドに潜り込んできたようだった。

 零は起き上がれなかった理由が分かって思わず脱力するが、女性に抱きつかれている事を認識すると今度は緊張し、体が硬直してしまった。

「レイ、昨日も言ったけど緊張しすぎ。少しだけでいいから力を抜いて」

「そんな事言われても、向こうでこんな事は無かったし……」

 零は今まで異性と縁がない生活を送ってきたわけではない。むしろ、その容姿のせいで不必要なまでに触られる機会はあった。

 しかし、()扱いとはいえ、ここまで無遠慮に抱きつかれたりする事は無かったため、さすがに零も困惑していた。

「そう。慣れないなら仕方ない。レイの為に私も頑張る!」

 しかし、アビーの表情には決意ではなく笑みが現れている。どう考えてもその言葉は額面通りではない。

「……本音は?」

「もっと抱きつかせて! ここまでの抱き心地は今まで無かった!」

 興奮気味に本音をあっさりと白状するアビー。

 零はその様子に少したじろぐが、地球での変質者達とは違い悪意も(いや)らしさも無かったので、時間のある時はと言う条件を付けて了承した。


――――――――――――――――


 朝食を終えた後、零はする事がなく一人寝室のベッドで転がっていた。

 アビー達みんなは日中は基本的に冒険者として活動しているとのことで、店員が顔を出し始めた頃に出かけていった。

 冒険者なんて本当にいるんだなと考えていると、扉がノックされる。

 零の返事の後で扉が開かれると、クローシェが顔を覗かせた。

「レイ、おはよう。どう? 一晩過ごして何か問題は?」

「うん、おかげさまで何も……、いや、あると言えばあるね」

 問題があると聞いてクローシェが心配そうな顔になる。

「……その、用を足したい時とかにね」

 零は部屋の隅にある物に目を向ける。そこにあるのは御虎子(おまる)だった。

 個室のトイレは王侯貴族でも無いらしく、どこに行ってもこれで用を足すことになってしまう。

 これに蓋は付いているのだが、それでも匂いが完全に防げる訳ではない。衛生面にも不安があった。

「さらには僕は男とバレたら駄目な訳で……。元々人前でする気はないけどずっと一人でいる訳じゃないし、一人でもいつ人が入ってくるか分からないから。これは着替えの時にも言えるけど」

「私達には当たり前過ぎて問題にしてなかったわね。うーん、布で目隠しを作るのは……。いえ、駄目ね。それじゃ、何かあるのを教えるのと変わらないわね」

 解決方法を思いついたクローシェだったが欠点に気が付き考えなおす。

「隠しても、隠したことを分からなくする。……あ、これなら」

 しかし、それがヒントになり、零はある方法を思いついた。

「ありがとう、おかげで思いついた。……かなり恥ずかしいけど」

 後半は聞こえないぐらいの声で呟いた。

「どんな方法なの?」

 方法を言いたくない零は次の話題に切り替える。

「出来るか分からないからまた後で。それより、他にも相談があるんだけど。いいかな?」

「どんな話?」

「まずは、これを預かってて欲しいんだ」

「これは、エリン達から貰ったのね? ええ、しっかり預かるわ」

 零は昨日貰ったお金を銅貨5枚を除いて袋ごと手渡した。

「ありがとう。次にフィオナちゃんの事なんだけど、病状自体がよく分からないらしいね」

「……それもエリン達ね? ええ、何人もの治療師が診ても分からなかったわ。……ただ、元々あまり期待はして無かったけどね」

 クローシェから出た言葉に零は驚いて聞き返す。

「えっ、期待してない!? この辺の治療師はそんなに腕が悪いの!?」

「いえ、みんな治療師としては腕がいい人よ」

 期待できないなのに腕がいい。零には訳が分からなかった。

 少し考えて零は話がおかしくなった理由に思い至った。前提が違うのではないかと。

「ねえ、クローシェ。治療師って何をする人なの?」

「おもに怪我や毒を薬や魔法を使ったりして治す人ね」

 零はやっぱりと思いつつ、もう一つを尋ねる。

「病気は? 治す人がいないの?」

「病気は、なる人が殆どいないわ。大きな街でも二・三年に一人程ね。だから病気になるとそれが何なのか誰もよく分からないの。病気になっても回復魔法を使って貰うぐらいしかないのが現状よ」

 零は病気の頻度を聞いて驚いた。病気の種類は数え切れない程ある筈だが、全てを合わせてそれだけなのである。

 しかし、そのせいで病気に対する知識等は全くと言っていい様だった。もし病気になった場合、それが自力で治るもの以外すべて手の打ちようが無いほどに。

「それでも何とかしようとは思ってるの。もう同じ思いはしたくないから」

「同じ思い?」

「旦那も病気でね、死んじゃったの。滅多にならない筈なのにね」

「ごめん……」

「いいの、それはもう昔の話だからね。それより、話はこれだけなの?」

「いや、これからが本題、……だったんだけど話していいのか自信が無くなってきた」

 病気に対する状況が想像よりも遥かに悪すぎて、零は話をするべきか悩んでいた。

 しかし、クローシェは悩んだ零に優しく笑って語りかけた。

「病気の事についてよね? 気を使う事はないわ。今までも治る見込みが無いと言われてたのよ? 少しでも希望が持てるかもしれないならお願いするわ」

「……クローシェ、逆に気を使わせてごめん」

 零はクローシェに一度頭を下げて、本題を切り出す。

「話したかったのは、僕にフィオナちゃんを診せてほしいと言うことなんだ。ただ、僕が間違いなく出来るのは、病気の原因がどこにあってどうなってるのかを調べることだけ。さっきの話を聞くまでは、原因が分かればひょっとしたら治療師が治せるかもしれないと思ってたんだけど、それは無理みたいだし……」

「レイじゃ無理なの?」

「原因が単純な物なら治すことが出来るとは思う。けど、僕も僅かに聞きかじった知識しか無い素人だから、どこまで出来るかは分からないよ」

「それでもいいわ! お願い!」

 本当に手詰まりの状況のようで、零がはっきりと素人と告げてもなお、クローシェは迷わず返事をした。

「分かった。出来る限りはやってみる」

「ありがとう! フィーにも話してみるわね」

 クローシェは零の手を取り何度も振って喜んでいる。零はそれを見て期待に答えられるようにといっそう頑張ることを決意した。


 クローシェが落ち着いた頃を見計らい、零は残りの話を切り出す。

「ねえ、どこかに戦い方を教えてくれる場所はある?」

「そうね、昨日の様な事になった時に少しは自分で身を守れる様にした方がいいわね。なら、冒険者ギルドがいいと思うわ」

「道場とかじゃないの?」

「一つの武器をしっかり習いたいならその方がいいけど、色々な戦い方を知りたいなら冒険者ギルドがいいわね。ただ、訓練の指導者はいないから他の人の動きを見て自分で覚えるのが普通ね」

「技は見て盗めって事? ……まあ、なんとかなるかな」

 今なら一度見てしまえばいくらでも思い出すことが出来る。後はその動きをなぞるだけでいいのだ。

「でも、訓練だけじゃなくて、多分依頼もこなさないといけないんだよね?」

「そこは大丈夫、上を目指さないなら月に一度簡単な依頼を受けるだけでも問題ないわ」

「それぐらいでいいんだ。……あっ」

 零は相槌を打ったものの、ふと気がついた。

「そういえば、暦が分からない……」

「あら、ごめんなさいね。一月(ひとつき)が23日で、一年が16ヶ月、今日は二月五日ね」

「時間は?」

「一日を四等分して朝・昼・晩に三回鐘が鳴るぐらいね。深夜は鳴らさない事になってるわ」

 計算上は一年が368日。零の体感として一日の長さにほぼ違いは無いように思えた。厳密には違うのかもしれないがそこまで気にする程では無さそうだ。むしろ月の区切りが大きく違う方が慣れにくそうだった。

「分かったありがとう。そういえば、随分とギルドに詳しいね」

「私も以前はギルドにいたのよ。あの時矢を受けたので、だいぶ(なま)ったのを実感してるわ。私も少しは動いたほうがいいかもしれないわね」

 クローシェは言いながら体を動かしていた。

「あはは、なるほど。それなら、初めて行く時にいる物とかも知ってるよね?」

「特に何も無いわ。登録自体は無料だし試験があるわけでもないしね。あ、昇級の時は違うからね」

「ありがとう、とにかく一回行ってみようかな」

「場所はこの店を出て左に歩いてすぐね。けど、無理をしないでね? 魔法を使えると言っても、レイは体は小さいし男なんだから」

 零は男だからと心配される事に違和感を感じつつ、クローシェに見送られてギルドを目指した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


次でギルドに入ります。しかし、未だに丸腰&無防備の状態。

粗方は決まってますが、どうやって装備をさせようかな。

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