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第十二話 常識違いで大苦労(3)

第十二話です。よろしくお願いします。

サブタイトルを付けてみました。

今後の話で付いてない場合は、単にまだ思い浮かんで無いだけです。


前話の後書きの通り予定になかった下着の話がメインです。

……あ、ちゃんと物語のメインも一部入れてあります。


一話から二十話までを改稿しました。('15.05.03)

話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。

そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。

また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。

「まず、あれは何て呼んだらいいの?」

 クローシェが零に下着について尋ねる。

「下に穿く物の総称だけど、『パンツ』だね。それ以外の服の下に身につける物も含めての総称は『下着』。個別の名前はまた後で教えるよ」

 零は日本語でそれぞれの単語を伝えた。

「『パンツ』と『下着』ね。それで、パンツは何のために穿くの?」

「穿いた部分の保護のためと他の服が汚れないようにするためだよ。もちろん、隠すためでもあるけど。例えば短いスカートだったらなおさら見えやすいし」

「なるほどね。そう言われると確かに必要そうね。今までは服で隠れていればいいと思ってたわ」

 クローシェは穿く理由について納得すると、さらに言葉を続ける。

「それに短いスカートね。見えないように長いものばかりだったけど、それなら全く問題ないわね。ファッションの幅が広がるわ」

「いやあの、基本的に下着は他人に見せる物じゃ無いんだけど……」

 クローシェの頭の中では服のデザインが浮かんでいるのだろうが、その言い方に何か危ない物を感じた零は釘をさした。

「あら? そうなの?」

 しかし、クローシェは軽い口調で返すのみで気にした様子がない。

「……程々にね?」

 文化の違いでこれ以上言っても無駄だろうと悟った零は、おかしな服が誕生しない事を祈るばかりであった。


 少ししてクローシェはデザインの構想を切り上げ、零に続きを促す。

「次は、教えてくれるパンツの事だけど、一体どんなものなの?」

「教えるのは『パンティー』と『ドロワーズ』で、あとパンツの類じゃないけど『ブラジャー』もだね」

「そんなにも教えてくれるのね」

「僕が使うのはたぶんドロワーズだけだけどね。……本当は今穿いてる『トランクス』が良かったんだけど、構造が男用だしすぐバレるから」

 クローシェはそれがどういう物なのかが分からずに首を傾げる。

「……その、アレを出す穴がある」

 零は恥ずかしがりながら説明した。

「確かに男と分かりやすいわね。じゃあ、パンティーやドロワーズにはそれが無いのね」

「あ、これの前の穴を塞いだだけじゃないからね。デザインも違うからね」

「どんなデザインなの?」

「言葉じゃ伝わりにくいかな? 何か書くものはある?」

「分かったわ。ちょっと待っててね?」

 クローシェは棚から紙束とペンとインクを取り出し零に渡す。紙は灰色掛かっていて厚みがあり、ペンは木の丸軸の先に円錐形の表面に放射状に溝を付けて先端を丸めた物が付いていた。

「あと、絵の具とかを持ってくるから先に書き始めててね?」

 そう言い残してクローシェが部屋を出る。そして、零はそれを見届けるとその場で(うずくま)りだした。


 部屋を出て約10分後、クローシェは画材道具や水を用意して戻ってきた。

「お待たせ……え?」

 クローシェは扉を開けたところで思わず動きを止めてしまった。

 クローシェの目に入ったのは並べられた数十枚に及ぶデザイン画の数々と、すごい勢いで腕を動かしている零の姿だった。

「あ、戻ってきた」

 零は手元の一枚を書き終わるとクローシェの方に向き直った。

「え? これ全部、今さっきの間で書いたの?」

「あ、うん。資料は多いほうがいいと思って。あと、……考える暇もないほど一気に書かないと恥ずかしかったし」

「凄いわね、この早さでこんなに綺麗に描けるなんて、十分に絵だけでも暮らせるぐらいね」

「あはは……」

 もちろん、本来の零にこんな真似が出来る筈がない。

 零はクローシェが部屋から出た後で、頭に思った物をそのまま高速で書き出す為のプログラムを作り、それを使って腕を動かしていったのである。疲れはしないが、ベクトル(力量とその方向性)を与えて強制的に動かしているため若干腕が痛い。

 デザインについては、記憶が異様なまでに鮮明に思い出せる様になっているために苦労はしなかった。テレビコマーシャルで見えた物や、デパート等でランジェリーショップの前を通った時に少し目に入った物でも十分だからだ。

 実は、中には零が女装を頼まれた時に渡された下着も3割近く混ざっているのではあるが、もちろん零にそれを言うつもりはなかった。もちろん、その時の服や下着は突き返した。


 零は画材を受け取ると先ほどのデザイン画に色を塗っていく。やり方は先ほどとほぼ同じだが、色をYMCKの色情報の様に分けて黄・マゼンタ・シアンを黄・赤・青で代用して重ね塗りをしていった。もはや人間プリンターである。

 クローシェはその光景に驚きつつも、出来上がった順にデザイン画を見ていく。

「これがパンティーで、それがドロワーズ、あれがブラジャーなのね。形状からしてブラジャーは多分胸に使うみたいね。シンプルなものと装飾が多いものとあるけど、一般向けと貴族向けなの?」

「いや。これらは全部一般的に売ってるものだよ。高めの物も混ざってるとは思うけど」

「これで普通なの? どの装飾も素晴らしいわね……」

 クローシェは驚いた様子で呟いた。

「ねえ、レイ。これらのもうちょっと詳しい構造はわかるの? 画だけで分からない所があったら教えて欲しいわ」

「うーん、これは見たことがあったものを書いただけで、詳しい構造……まで……は?」

 クローシェの質問に出来る限り答えようと思い、どうなってるかを考えた途端に零の脳裏におかしな物が浮かび上がった。

 それはどう見ても下着の構造だった。ドロワーズ以外パーツの数はどれも飾りを抜いてもかなり多く、パンティーの股下の二重構造やブラジャーのカップ部と脇下部のワイヤー等の分解でもしないと分からない事から、各パーツの材質・物性等の普通は全く分からないはずの事までが一つ一つ詳細に描かれている。

「レイ? どうしたの?」

「……えっと、構造、分かるかも」

「本当に!? 教えて! お願い!」

 零は絵を書きながらクローシェに構造や材質、フリルやレース等の装飾の作りを教えていく。

 しかし、零の頭の中では別のことを考えていた。

(なんで下着の構造が浮かんできたんだ? 分解なんかしたこと無いし、材質なんて分かるわけがない。しかも、見ただけの物なのに、まるで思い出したかのように浮かんでくるなんて……。第一これじゃ記憶してたんじゃなくて記録でもしてたように――)

 そこまで考えたところで川で目覚めた時の事を思い出す。

(――そうだ、記憶が戻ったきっかけのあれに書かれてたのは)

()()情報を確認 接続を開始します》

(つまりあの時に()()が僕の頭に入ったんだ。多分それが僕の記憶と同化して、思い出す形で出力された。記録だから曖昧(あいまい)な部分がなくて、感触や痛みとかまで再現されてるんだ)

 そう考えると、この世界に来てからの、思い出す行為への異常さに説明がつく。

 しかし、今度は別の疑問が浮かんでくる。その記録はどうやって作られたのかである。

 その場で作られたとは思えない。メッセージにも記録情報を確認と書かれていた。だが、それでは地球で何かが常に零と共に行動して記録を取り続けた事になる。

 さらに、それは零が見ただけの物の構造を全て抜き出して記録しているのだ。普通はそんな事は不可能である。

 でも、今の零には一つそんな事が可能な存在に心当たりがあった。

 ――そう、ウィルスの存在である。

 もし、記録・解析をするウィルスが存在していたら。そして、それが零の保持するオルタレイションウィルスと同様に常に一緒に居たとしたら。さらには、それがここに来る遥か以前から存在していたとしたら。

 地球で暮らしている時から零の中で記録や解析をしていたのなら鮮明すぎる記憶や知らない筈の構造についての説明がつく。

 また、もし零とウィルスが以前から一緒なら、ディアの作った仮想空間に入ってしまった事の説明がつく。ウィルスを閉じ込めるための空間だったのだから。

 そして、食料確保の際に毒等の解析用プログラムを作る際に競合するプログラムがあることが表示されたことにも説明がつく。同様のものを既にウィルスとして持っていたのだから。

 零はこの仮説がほぼ当たっていると思った。しかし、それがいつ零に接触したのかが分からなかった。今の零の記憶にすら無かった。

「――イ? レイ! きこえてるの!?」

「えっ!? あ、ごめん」

 どうやら考えに頭をまわしすぎて、いつの間にか止まっていたようだった。

 これ以上は考えても答えが出そうにもなかったため、零はクローシェに教えることに集中した。


「――構造についてはこれでひと通りかな?」

「ありがとう、大体分かったわ。色々と考えられた物なのね。『ゴム』の代わりというのがちょっと難しそうだけどこれも何とかなりそうね」

 構造の説明が終わってクローシェが感想を言う。ゴムやそれに似たものは無いようだがクローシェには何か考えがあるようだった。

「ところでサイズはどうするの? こちらの服だと基本は種族ごとに四種類を揃えてるわ。後は注文になるわね」

「パンティーやドロワーズはそれでいいと思うけど、ブラジャーはもっと分けないとだめだったよ。分け方も特殊だった」

「ブラジャーは一体何の為にそんなことをするの?」

「母さんが言ってたことだと、自分に合ったサイズなら動きが楽になったり胸の形が整ったりして、合わないサイズだと苦しかったり胸の形が崩れたりするらしいよ」

「かなり重要ね。サイズについても分かるの?」

「うん。母さんが下着を買うのにいつも時間が掛かってたから理由を聞いたことがあったんだけど、その時に力説されてね……」

 零はブラジャーのサイズについて説明を始める。カップサイズのAAA・AA・A・B・C……と続くアルファベットはこちらの文字に直して伝えた。

 乳の先端を通る胸囲をトップバスト、乳の膨らみのすぐ下を通る胸囲をアンダーバストとして、トップバストからアンダーバストを引いた値でカップサイズが決まる。そして、その差の値が5cm前後でAAA、7.5cm前後でAA、10cm前後でA、12.5cm前後でB、15cm前後でCとなり後も2.5cmごとにサイズが上がっていく。

 ブラジャーのザイズはカップサイズとアンダーバストの組み合わせで、アンダーバストも5の倍数毎にサイズがあり、合わせてA70やC75のように表記される。

「かなり細かいわね。でも、これだけしないと逆効果になるのね?」

「母さんも合わない物は嫌がってたし、多分そうだと思うよ」

「それで、『cm』は長さを表してるのよね?」

「うん。下に『mm』上に『m』『km』があって、10mmで1cm、100cmで1m、1000mで1kmになるんだ」

「分かりやすくていいわね。他の単位にする時に余りがでたりしないのね。どれぐらいの長さなの?」

「そうだね、実際に描いたほうが分かりやすいと思うから。えーっと、指の太さぐらいの幅の革ベルトとかある?」

「分かったわ。すぐ持ってくるからまた待っててね」

 零はクローシェが戻ってくる間にまたプログラムを作っておく。

 少ししてクローシェが革ベルトを持ってきたのでプログラムを使って巻き尺を作り出した。

 革ベルトにレーザーを使い1mm間隔の決まったパターンで長短を変えた線を焼いて入れていく。前とは違って時間はあった為、レーザーの威力は調整してあるので安全だ。

 さらに、1cm毎に数字も入れていく。これでひと目でも分かりやすい。

 そして、3mの巻き尺が出来たのでクローシェに手渡した。

「さっきの絵も凄かったけど、こっちも線の一本一本が凄く正確ね。……これが1mmでこれが10mmだから1cm、ここが1OOcmだから1m。……うん、実物を見ると本当に使いやすそうね。店内ではこれからこっちにした方がいいわね」

「喜んでもらえて良かった。これでひと通り説明はできたと思うよ」

「ありがとうね。試作品ができたら確認もおねがいね」

「うん、分かった」

 そこで、ぐうぅぅ~と音が鳴り響く。音は二人のお腹から聞こえていた。

「……そういえば、夕食の時間が過ぎてそうね」

「あはは、時間のことをすっかり忘れてたからね……」

「……休憩室に行きましょうか。なにか軽く食べましょう」

 二人は少し恥ずかしそうに言葉を交わし、休憩室に向かった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ダラダラとした説明にならないように気をつけてみたけど、どうなんだろう?

ウィルスを使った物の作成やウィルスの考察部分は、本来はもうちょっと後で出すつもりだったんですけどね。

真面目な話を下着から出す事になるとは……。

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