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第十一話 常識違いで大苦労(2)

第十一話です。よろしくお願いします。

ブックマークが増えてるとは思わなかったです。有難うございます。

実際の所、オヤジの女装で減るのを覚悟したぐらいですから。


一話から二十話までを改稿しました。('15.05.03)

話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。

そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。

また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。

「レイ、ついて来てちょうだいね」

 クローシェに呼ばれて零は店の中に入る。イーディスは既に荷物整理を始めている。

 店内を歩いていると、クローシェを見た人が店員はもとより、客の人からまでお帰りなさいと挨拶をされていた。かなり人気があるようだ。

 店の奥へ行くと廊下があり、数ある部屋の一つに通された。

 そこには机や椅子が並んでいるが今は誰も居ないようだ。ふと目を横に向けると、服屋の筈なのに何故か食器等の入った戸棚や(かまど)が見える。

「この部屋は何?」

「ここは休憩室で、泊まり込みの警備の台所も兼ねてるわよ。今は仕事中だから誰も居ないわね」

「なるほど。それで竈とかがあるのか」

「今、お茶を入れるからそこに座って待っててね」

 クローシェは水瓶から薬缶(やかん)に水を汲み(かまど)(まき)と火を入れる。そして、その間にポットや茶葉等の用意をしていった。

「結構掛かりそうだね」

「あら。そっちではもっと早く沸かせるの?」

「うん、水を中に入れたらボタンを押して少し待つだけのがあるよ」

 零は椅子に腰掛けながら答える。説明しているのは電気ケトルの事だ。

「へえ、それって一般的なものなの?」

「どの家にもあるわけじゃないけど、珍しい物じゃないよ。物にもよるけど子供が小遣いを貯めて買えるぐらいだし」

「いいなあ。こっちにも似たような魔道具があるけど、中々手が出せるような物じゃないわよ」

「あるにはあるんだ」

 どうやら魔道具はこちらの家電製品に似た物もあるらしい。ディアが零を探していたとしてもどれだけ掛かるか分からないこの状況で、生活が楽になるかもしれない物がある事が分かり、零は機会があったら手に入れることに決めた。

「あっ、だとしたら、レイは竈を使ったことがないの?」

 クローシェがハッと気がついたかのように零に尋ねる。

「うん、竈は使ったことはないね」

 零は料理好きで、家でも色々と作ってはいたが、使っていたのはガスコンロである。

「なら、使い方を覚えてもらったほうが良かったわね。ここだと私達が仕事中は一人になるでしょうしね」

「ここだと?」

 零は気になった言葉を復唱するように言った。

「ええ、レイには数日はここで暮らしてもらう事になるわ」

「えっ? どうして?」

「もちろんその後は私の家に来てもらうつもりだけど、その前にレイが使う部屋を掃除しないといけないのよ。しばらく使ってないから埃とかも溜まってるはずでしょうしね。仕事があるから夜にしか出来ない分、ちょっと待ってもらう事になるわね」

「なるほど。わかった」

 せっかく部屋を用意してくれるのだし、それなら仕方が無いと零は首を縦に振った。

「じゃあ、こっちに来て。使い方を説明するわ」

 零は竈の使い方や食器等の場所を教えてもらい、その後も試しにお茶を入れさせてもらったりした。


「初めて()れたとは思えないわね。凄くおいしいわ。こんな味になるのね」

「向こうで似た物があったから、それの淹れ方を真似(まね)してみたんだ」

「なにか変わった事をしてるとは思ったけど、意味があったのね」

「僕としてはちょっと失敗したと思ってるんだけどね」

「うそ!? この味で失敗なの!?」

「まあ、初めて使う茶葉だったから、加減がイマイチ分からなくって」

 零が真似をしたのは紅茶の淹れ方だ。ポットやカップを火の近くで温めておき、大きな泡が出始めた所で薬缶を火から降ろして、高い位置から茶葉を入れたポットにお湯を注いで3分程蒸らした。

 このお茶も紅茶と似たような色や香りをしている。この茶葉の特徴から味が出やすいのか単に茶葉の入れすぎかは分からないが、味はこのお茶の方が若干渋みがある。そこは何度か試すしか無い。

 飲み方も紅茶に似ているのかクローシェは何かの蜜のような物を入れていた。ちなみに零は味の確認もありストレートだ。

「今度ちゃんと教えてほしいわね」

「いいよ。見ての通りそこまで難しくはないし」

「本当!? ありがとうね!」

 クローシェは席から身を乗り出して喜んだ。

「ねえ、レイってお茶でこれだけできるなら、もしかして料理も出来たりするの?」

「家では結構作ってたね」

「やっぱり! なら、あの子も喜ぶわね」

 零は娘さんの事かなと思って頷き返した。

「ところで、そろそろ本題に入りたいんだけど」

「あ、ごめんなさいね。お茶が美味しかったからつい話がそっちに行っちゃったわね。えっと、馬車でも聞いた話だけどもう決まったの?」

 別方向に進んだ話を戻し、クローシェが零に尋ねる。

「男って言うか言わないかだよね」

「そう、その話しよ」

「僕は……言わないことにする」

 零が答えを返すとクローシェは少し驚いたような顔をしていた。

「ちょっと意外ね、あんなにも女と間違われるのを嫌がってたのに」

「男って言ったとしても結局あの格好しなきゃいけないんでしょ? しかも、ヘタすると毎回調べられなきゃいけないし」

「服については、男もあれが普通だからね」

「あと、一番の理由としては自衛の為かな。盗賊とかもそうだし魔物もいるんでしょ? その中であれらが使えないんじゃ危険そうだし。それに多分、保護されてるといっても男は盗賊から狙われ安いんじゃない?」

「確かにその通りね……。分かったわ、こっちもレイが男ってばれないように気をつけるわね」

 男が少ないと言うことから何となく予想をしていた事だったが、やはり男というだけで拐われやすくなるらしい。予想が合っていたことで零は更にバレないように気を引き締めた。

「そうそう、服といえばレイが着る服を選ばないといけないわね」

 先ほどの話のせいか、クローシェが零に着替えを持ちかける。

「ううぅ、仕方が無いとはいえ、やっぱり抵抗感があるなぁ」

「そこは我慢してちょうだいね。飲み終わったら一緒に決めましょう」

 零は嫌々ながらも首を縦に振り、半ばヤケになって残りのお茶を飲み干した。


――――――――――――――――


「レイはどんな服がいいの?」

「どんなって言われても……、あえて言うならあんまりヒラヒラしてない方がいいんだけど……」

「それはだめよ」

 またもや即答である。

「ばれない様にするんでしょ? そっちの方が誤魔化しやすいに決まってるのに何を言ってるのよ」

「それはその……、馴染みが無さ過ぎると言うか……」

「うーん、好みを聞いてたら駄目そうね。仕方が無いから今回は私が選んじゃうわね」

 クローシェにキッパリと言われて、零はガックリとうなだれるしかなかった。

 そして、ここから零にとって未知の時間が始まった。


「身長からしてゴブリン用の服でも少し大きいから、やっぱり子供服ね」

「あー、うん……。そこは向こうでもそうだったから……」

「じゃあ、まずはこのシャツとスカートを試しましょうね。試着室はそこよ」

「ううぅ……」


「……クローシェ? ……着てみたよ」

「うーん、まずくはないけど、ちょっと地味過ぎたわね」

「ええっ? いやいや、地味でいいってば、地味で」

「却下ね。せっかくなんだから、ちゃんと似合った物を選ばないと」

「ええぇぇ……」

「じゃあ、次の服を持ってくるわね」


「……着替え終わったよ」

「うーん、こんどは派手すぎかしらね?」

「うん、僕もこれは嫌だよ……」

「ごめんなさいね。また別のを持ってくるわね」


「……これ、着るのに凄く手間が掛かったんだけど」

「この近辺の民族衣装に合わせた物なんだけど……。レイが着ると重そうに見えるわね。それは脱いで次のにしましょう」

「またぁ? 苦労したのに……」


「……ねえ、クローシェ? この服はおかしいんじゃないかな?」

「どうしたの?」

「隠す為の服を選んでる筈なのに、なんでこんな露出が多いのを選んでるの?」

「――あら? 合いそうな服だったからつい持って来ちゃったわね」

「……ひょっとして、単に楽しんでない?」

「……さて、次は――」

「ねえ、クローシェ? 返事は?」


「…………」

「これはいいわね。ええ、これにしましょう」

「はぁ……、やっときまったぁ……」

「そうね、これで一着目がきまったわね」

「えっ、まだやるの?」

「当たり前ね、着替えがいるに決まってるわ」

「あうぅ……」

「さて、あと四着は決めないとね」


 零という着せ替え人形が出来てクローシェは喜んで次々と服を選び、着せ替えられた零はそれに反比例するように気力・体力共に消耗していった。

 こんな調子で零の服選びは続き、結局閉店時間近くまで掛かることになった。


――――――――――――――――


「よく似あってるわよ」

「……アー、ソウデスカ」

 店長室の中、どこかツヤツヤとした様子のクローシェとは対照的に、零はやつれた様子でソファーにもたれ掛かっていた。返事にも力がない。

 零の今の格好は白の長袖ブラウスに薄桃色のロングスカート、幼児体型のなのであまり心配はないと思うが念のためスカートと同色のショールを肩に掛けている。

 地球で言う女物の上に、完全に子供用にしか見えないそれらを着ている今、零は二重の意味で恥ずかしかった。絶対に地球の知人には見せたくない姿である。

「ねえそういえば、ズボンの下にまたズボンを穿いてた様だったけど、今も穿いてるの?」

「アー……、って、あれ? これも?」

 零は返事をしようと思ったがある言葉が出てこない。まさかと思い逆に訪ねてみる。

「僕は穿いてるけど、クローシェはスカートの中に何か穿いてたりするの?」

「何も穿いてないわね」

 返事を聞いて零は顔が暑くなるのを感じた。しかし、それと同時にマズイとも思い冷や汗が出て来る。

「確かその服の中も無かったよね」

「ええ、この服だけね」

「それって皆がそうなの?」

「ええ、そうね」

 やっぱり下着が無いようであり、零は危機感を感じた。零はクローシェから来るだろうお願いの前に口を開く。

「ねえ、クローシェ。多分これについて聞きたいんだよね?」

「え? ええ」

「これは男物だから女物を教えるね。ついでに後もう一つも教えるから」

「本当!?」

「うん、それでその二つを流行らせて欲しいんだ」

「作るからにはもちろんそのつもりだけど。随分と熱心ね」

 零の突然の気合の入り様にクローシェは不思議に思った。

「そりゃそうだよ。だって下に穿いてないのが普通なんでしょ? それに合わせたらもしもの時に隠すものが無いじゃんか。この際女物でもいいから全く無いのはマズイよ」

「それもそうね、スカートがめくれただけで見えるわけだしね……。分かったわ、詳しく教えてちょうだいね」

 こうして零は身の安全を確保するために、下着を教えることになった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

紅茶は作中の通り、さらに言えば軟水でよく空気と混ぜた水を使うとうまく行きます。時間は茶葉によるので注意して下さい。

零の着せ替えは、作者が大分遊んでます。

下着については作者も予定外です。でも、ここで入れないと零の服装に違和感が出てしまうのに気がついたので追加してます。

戦闘面(装備の充実等)については最低でも次の日に入ってからですね。


2/28誤字等を一部訂正

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