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第百五話 前人未到の山中(13)

第百五話です、よろしくお願いします。


主人公がいる場面のはずなのに殆ど描写がない……。あれ?

 フェリシアに罰として下されたのは、フィオナにしばらくの間いじり倒されるというものであった。

 フィオナはそれでいいの?とでも言いたそうであったが、子供のような無邪気さでそこかしこを引っ張られたりひねられたりするのだ。やられた方としては完全に拷問の域である。

 フィオナはもともと人形が好きなために小さなフェリシアに対してなおのこと歯止めがきかず、さすがにまずいと周りが止める程であった。


「あ、あたしの(はね)……まだ付いて……る?」

「あ、ああ……付いてる……」

「羽自体も何とか無事……けど、かなり危なかった……」

「よかっだ……本当に……よかっだぁ~~」


 フィオナに翅まで引っ張られだしたところだったので、フェリシアは涙を流して無事を喜んだ。


「お姉ちゃん、いくら何でもやりすぎ!」

(わらわ)もけしかけておいてなんじゃが……あれはちょっとどうかと思うのじゃ……」

「フィー? 相手は人形じゃなくって、生きてるんだからね?」

「はぁい……ごめんなさぁい……」


 一方でフィオナは零達から叱られてしょんぼりとうつむいていた。

 零達も無邪気さの怖さは分かっていたつもりであったが、まだまだ認識が甘かったと思い直した。


 この後でフィオナにフェリシアへ謝りに向かわせたのだが、しばらくの間フェリシアはフィオナの姿を見るだけで逃げ出す始末であった。



――――――――――――――――



(あれ? わたしは……?)


 頭が異様にぼんやりとする中、リリアンはこれまでの経緯をすこしづつ思い出していく。


(えっと……、確かレイを探しに行く筈だったのです。それで空から無理やり谷を越えることになって……途中で鳥に襲われて……わたしが巻物の代わりに足場を作って……)


 そういえば、嬉しい事があった筈。


(……そうだ、その後辛くなってきた時にお姉さまたちからリリィって呼んでもらえて……それから……)


 リリアンはそこから記憶が更にあやふやになっていることに気がつく。


(それから……どうなったのです?)


 リリアンは何度か記憶を辿ってみる。

 そして、そのうちに段々と最後の方の記憶を思い出してきた。


(……そうです……確か嬉しくって疲れも気にならなくなって……それからは順調に進んだのです……それから……)


 リリアンはもっと先を思い出していく。その最中でその身が凍るような記憶が蘇っていった。


(……それから……体に力が、入らなくなって? ……お姉さま達が、傾いて見えて? ……目の前が、真っ暗、に?)


 リリアンはそこで自分の身に何が起きたのかを悟った。


(わたしは……途中で力尽きたのです。それで、お姉さま達共々、道連れに……)


 リリアンは心のなかで自虐的に笑った。


(結局わたしはお姉さまを守れなかったのです……)


 そう考えると泣けてきた。だが、涙を拭おうにも体が言うことを聞かないようだ。


(そういえば私は今どう言う状況なのです? お姉さまを守れなかったのです……少なくともディア()(もと)には居ないと思うのですが……)


 リリアンは恐る恐る目を開ける。すると、結局暗くて何も見えなかった。


(こんな悪いわたしには何も無い所がお似合いですか)


 しかし、意外と居心地は悪くない。特に頭には柔らかな感触があり、いい匂いがしている。


「まるで、お姉さまの様な――――」

「あ、リリィ、目が覚めた?」


 リリアンが思わずポツリと呟いた時、リリアンの耳に聞き覚えのある声が届いた。


「お、お姉さま? なんでお姉様の声がするのです? こんな真っ暗な中に――――」

「真っ暗? あ、そういえば目の前がこれじゃ見える筈がないわよ。えっと、これでいい?」


 リリアンはその場で頭を横向きにされた。すると、リリアンの視界に木々や植物、そして見覚えのある衣類が映った。


「森……?」

「正確には山の中のよ。危なかったけどなんとか着いたわよ」

「着いた……? でもわたしは……途中で倒れたのです……。どうやって……?」

「妖精が危ないところを助けてくれたのよ。ほら、あそこ」


 セアラはリリアンの首を少し動かす。そこでは何故か謝るフィオナに二人の妖精と思われる者たちが嫌がるもう一人の妖精を無理やり近づけている最中であった。


「本当に妖精なのです」

「私もさっきは驚いたわよ。それにほら抑えられてる子はレイの描いてた絵と同じ子よ」

「確かにそのままなのです」


 リリアンは助かった理由に納得すると、先程から視界に映る物に疑問を向けた。


「ところでわたしはどういう状況になっているのです? 先程からお姉さまの服の布が見えるのですが?」

「それなら、単にリリィが膝の上にいるからよ?」

「膝の……上……?」


 この時リリアンはポカンとマヌケな顔をしていた。頭の中で理解が追いついていなかった。


「膝……枕……なのです……?」


 もしそうなら先程暗闇だと思っていたのはもしかしてと、リリアンは落ち着かなくなってきた。


「そうよ。お姉ちゃん達が落ち着くまで、リリィへのちょっとしたお詫びとお礼のつもりよ」

「お詫び? お礼?」


 なぜお姉さまがそんな事をするのか?と、リリアンには訳がわからなかった。


「お詫びの方はリリィに無理をさせちゃったからよ。正直に言ってもう少しで死んじゃうかもしれなかったから……」

「でも、結局そこまでしてもたどり着けなかったのです……」

「ううん、リリィがあの場所までたどり着いてくれたからあの子達が間に合ってくれたのよ? もうちょっと遠かったら拾えなかったって。だからリリィには感謝してるわよ」


 リリアンは無言で小さく(うなず)き、涙を流し始めた。

 膝に感じる物からそれを察したセアラは、(なだ)めるようにリリアンの頭を撫でた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回はほぼリリアンへのご褒美回でした。

リ「後は動ければ文句なしなのです」

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