第百四話 前人未到の山中(12)
第百四話です、よろしくお願いします。
最近時間が取りづらいです……。もっと時間がほしい……。
巻物を掴み損ねたセアラ達は為す術無く谷に向かって落下する。
落下の恐怖で誰もが目を硬く瞑り、来たるであろう衝撃に身をこわばらせていると、不意に『ボスン』という予想外の感触に当たった。
(木にでも引っかかった? でも、どうせこのまま毒に……)
そうセアラは思ったが、しばらく経っても一向に息苦しくなったり等の不調は感じない。
不思議に思ったセアラが恐る恐る目を開いてみると、そこは真っ暗であった。更に言えば体が何かに包まれ、少し窮屈さも感じる。
(穴にでも落ちたの? でも、そこまで落ちた気はしないわよ?)
不思議に思ったセアラは、片手に抱えたリリアン共々体勢の上下をを戻そうとモゾモゾと動き出す。
そこで不意に聞いたことのない声が聞こえ始めた。
「う~、さすがに2人は重い~。ヤコ~、ショル~、早く来て~」
「お~。アタイも回収したからすぐ行く~」
「こっちも回収完了。合流まで耐えて」
聞こえてくる声の内、一つはセアラの真上から聞こえてくるようであった。
その間に向きの変え終わったセアラが光の見える所から顔を出す。するとそこには下一面に広がる谷の光景が目に入った。
(あれ? ここはまだ空中?)
自分は確かに落ちたはずだとセアラが手をかけている物を見ると、非常に目の細かな布であった。どうやら袋のようなものの中に自分達はいるらしい。
そんなことを考えていると、両側からポスンという衝撃がありすぐ真後ろから先程の声が聞こえてくる。
「おまたせ。よっと……3人で4人を運ぶのはちょっと重いか?」
「まあ、この距離なら平気。でも、フェルがさっき無理してたから早く戻ったほうがいい」
「あ~、翅がつらかった~。2人共ありがと~。さっさと戻りましょ~」
両側の衝撃は何かと思ってみると自分のいる物よりは小さく膨らんだ袋があり、それらがモゾモゾと動いていた。
少しすると、そこからフィオナとイヴァンジェリンがそれぞれ顔を出した。
「あれぇ~? フィーまだお空にいるよぉ~?」
「これは……どういうことじゃ?」
「あ、2人とも……」
「あ~、サラちゃんにイーヴァちゃんだぁ~」
「フィーにサラ、お主らも似たような状態のようじゃな? リリィはどうしたのじゃ?」
「この中よ。……症状はそのままだけど」
「その様子なら、どうやら全員無事みたいね?」
お互いの無事を確認しあっていると、後ろから声が掛けられた。
「間に合ってよかったな」
「任務完了。これでまたあれが食べられる、ジュルリ」
セアラ達は後ろを向いて固まった。
すぐ目の前には袋から出るひもを持った翅の生えた小人――――妖精達が飛んでいたからだ。しかも3人いる内の1人といえば――――。
「ふぅ、危なかった~。これで失敗してたらレイになんて詫びればいいのか分からなかったわ」
零が先日描いていた絵の妖精その物だったからだ。
「「「あぁ~~~~~~~~~~っ!!!」」」
「な、何? いきなり暴れないで!?」
その後、零の元にたどり着くまで騒ぐ事になった。
――――――――――――――――
「ふう、リリアンの魔力は戻したよ」
零は魔力子を操作してリリアンの中に強制的に送り込んだ。
魔力が回復して体の制御が戻ったリリアンの容態は、すぐに安定を取り戻した。
「本当に簡単に戻しおったの……」
イヴァンジェリンは魔力の回復を安々とやってのけた零を驚愕の目で見た。
「リリアンが落ち着いた所で……フェル? 心配させないようにちゃんと書き置きしたって言ってたよね?」
「そうね」
「いやこれ、どう見ても誘拐しましたって思えるよね!?」
零は街に残された4人が持ってきた書き置きを見て怒鳴った。
「おかげでみんなが無理してここまで来て死にかけるし……これなら昨日の内に帰っておけばよかった……。ごめんね、心配かけて……」
リリアンを除いた3人には、既に状況は空で騒いでいる最中に伝わっている。それでも零は謝らなければ気がすまなかった。
「謝らなくても良いのじゃ。レイは問題ないと聞かされておったのじゃろう?」
「それよりも問題なのは勝手にレイを連れて行った上に――――」「フィー達を勘違いさせたフェリシアちゃんだよぉ~っ!」
3人は原因となったフェリシアに詰め寄った。
「さ~てどうしてくれようかの~」
「悪い子にはおしりペンペンしちゃうよぉ~。でも小さすぎてうまく出来ないかなぁ~? 他にはぁ~、ほっぺをぎゅ~っとかお腹をコチョコチョとかぁ~……」
「お姉ちゃん、話がずれ始めてるわよ?」
詰め寄られたフェリシアと言えば、友に助けを求めていた。
「ヤコ~、ショル~、2人から何とか言って~!」
「なんとかって言われてもな~? モグモグ……」
「うん、自業自得。ハグハグ……」
2人は我関せずとクッキーを頬張っていた。4人を助けてもらったお礼だ。当然、原因のフェリシアにはない。
「そんな~っ!!」
その後、罰が下されたフェリシアの悲痛な叫びがその場に響き渡ったのであった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
本当はリリアンが目をさます所まで書きたかったのですが……。
次回にはちゃんと書きます。




