園田さんと関口さん。
溺れる夢を見ている。
もがいてももがいても水の中では動きが鈍く、呼吸はままならない。
夢だ、ってなんとなく分かっているから頭の中で起きろ起きろと叫んでいる。
それでも目が覚めない、頭はこんなにも冴えてきているのに。
息がしたいのに息が出来ない、もがいているはずなのに腕も動かない。
身体が重くて仕方が無い、早くさめて、私は今どこにいるの。
「…いい子にしていてくださいね、もうすぐ楽になりますから」
現実の声が私に聞こえた。
穏やかな男の人の声。
けれど、楽になる、そんなことは起こらないと、私はなんとなく分かっていた。
もがく、もがく腕がうごかない。
目の前は、まっくら。
はやく、息を。
はっと我に返ったら、目の前には私を助けてくれたひとがいた。
その人ははをくいしばって、わたしを、みおろしてた。
そのひとの手がわたしのくびをしめていた。
くるしい、はなして、といいたいのに口が、うごかない。
「お薬が切れちゃいましたね、ごめんなさい。寝ている間に死なせてあげたかったのに」
かれ、は私 をみてかな しそうに いった。
からだが まだうごかない おもい。
くる しいの に ぴ く りともう ごか な い。
「総一さん、手伝いましょうか?」
ききなれたこえが した。
おとこのそば に せいじょ がいて かれ にこ えを か けて いた 。
せきぐ ちさ んは わたしを みて おいし そ うね って つぶ や いて
か わい く わ らっ た
血はもうほとんど落ちきった。
残ったのは真っ白な身体。
総一さんは水を止めて死体を下ろした。
それから、のこぎりとか包丁とかを持ち出す。
ここで解体するのかと聞いたら総一さんは頷いた。
「ここが一番いいんです、汚れても洗い流せますから。」
私は手を出さない、お客様だから。
園田さんの身体から腕や足がはずされていく。
関節に沿って、丁寧に、手際よく。
皮はあとではぐって言っていた。内臓の処理が先。
おなかに包丁を差して縦一文字。
出てきた内臓はピンクできれい。でもちょっとくさい。
でも、総一さんはそんなこと意にもかいさずって感じ、本当にてきぱきと内臓を取り出していく。
「消化器の洗浄はさすがににおいますからね、それに、その、汚いので…すみませんけれど出て行ってもらえたら…」
お客様にそんな不潔なものは見せられないもんね。
私は総一さんの考えていることが良く分かった。
その考えは尊重しているので私は頷く。
ほっとした総一さんに、私は、太もものステーキが食べたいと伝えた。
「…ひよこちゃんは美食家ですねぇ」
と言った総一さんはとても嬉しそうだった。
「園田さんはきれいな足をしているのね」
ハンバーグを食べていると関口さんはポツリと言った。
足は自慢のパーツだったから嬉しくなってしまう。
だから私はありがとうの代わりに、関口さんはすごくかわいいよ、と伝えた。
関口さんは照れたみたいに微笑んでいたけれど、それもすごくかわいかった。
「ねえ園田さん。」
そういった瞬間に、関口さんは私の食べていたハンバーグを掠め取っていった。
そして、可愛く笑った。
「隙あり。」
でも食べていくうちにどんどん顔が曇っていく。
どうやら口に合わなかったらしい。
聖女だもの、こんな安っぽい合成肉なんて食べないわよね、と私は一人納得する。
「このお肉おいしくない」
と、案の定そう言って、唇を尖らせた。
「園田さんのほうがおいしそうだわ」
とも。
私は、関口さんに食べられるなら死んでもいい、そう思った。




