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悩める少女

この物語はフィクションです


すてきなすてきなおうじさま

あなたがくるのをまっています

肌の内側から黒ずんでいた

胸の右辺りに少しだけ、2センチほどのシミがある

「こんなもの...昨日までなかったのに...」

久遠由莉奈はシャワーを浴びている時に鏡に映った自分を見て気付いた

昨日はこんなシミはなかった自信がある

亡き母譲りの白い肌だから、大切にしようと思っていたから肌のことはかなり気にしていた

だから気付く

これが例の“狂痕”だろうか

湯船に浸かりながら考える

『僕達の限界を表す存在だ』

縫家花の言葉が妙に響く

限界とは一体なんなのだろうか


「...あんな技、初めて使ったからかな...」

風呂上がって寝巻きのTシャツと短パンに着替える久遠

鏡に映った自分の姿を見ながらそう思案していた

【アージェント】の背中のパーツが分離し12個の牙で360度自由自在に相手を攻撃できる某ロボットアニメチックなオールレンジ攻撃

未だに実感はないが、あれがかなりの大技というのはよく分かる

再び同じ事ができるのかどうかも分からない

でも使ったら

「広がるのかな...これ」

得体の知れない物にそこ知れぬ恐怖があった

少しはセーブしつつ戦う必要があるようだ

「...まぁ、様子見かな...お風呂でたよー、お湯抜いたらいいんだよね?」

風呂が空いた事をこの部屋の家主である公暁結生に伝える

久遠はタオルを被って居間の方に向かった

そこでソファに座ってテレビでも見てるはずだ

「...?」

が、返事がない

不審になって覗いて見たら既に彼はソファで横になっていた

数学の問題集を顔に乗っけて寝息を立てている

「風邪引いちゃうのに...何してるのかしら」

前の自分も人の事は言えないかったが、呆れながらも笑って公暁の側に駆け寄った

そして、その場にしゃがんでみる

目の前、手の届く距離には公暁結生の身体がある

「....イヤイヤ、なに想像してるの!」

急に顔を赤く染めながら首を横に振った

それにしても無防備だなと

何とか話題を変えようしてあまり変わってない現状に気付かない久遠

「.......」

そう言えば

「公暁くんの狂痕は大丈夫なのかな...?」

彼は今まで目立った大技は殆ど使用していない

しかし、実際はかなりの大技を多用していた

音速近くの斬撃、既に今までの安羅河凍夜戦や数藤鷹彦戦で数回使用されている技だ

公暁結生の【藍色の騎士】故に使える技かもしれないが、大技には違いない

「....目に見える範囲には見当たらないよね...」

一応、衣服からはみ出ている顔や首、腕に脚などには狂痕が見当たらなかった

だとすれば

「....べ、別に変な目的じゃない...変な目的じゃない...」

手も震え、顔の火照りが限界値を更新しつつ彼の衣服を少しだけ掴んだ


「.....」

引き締まった身体、筋肉も適度に付いている

それでいて綺麗な身体、本当に男の子だろうか

「...じゃないのっ!狂痕だよ!狂痕!」

煩悩が全く吹き飛んでないが、この公暁が目覚める前に早く確認しよう

軽く服をたくし上げて探してみよう

待てよ

もし上半身にないとしたら、どうするのだろう

なら、下半ーー

「っっっ!!!」

何考えてるんだ自分は

久遠は寿命が縮むレベルで顔が赤くなっていたかもしれない



一体何があったのだろう

ソファに寝転がって問題集を眺めていたが睡魔に襲われ仮眠途中であったが何かが自分の身体に触れてることに気付いて目が覚めた

「(...え?ちょ、何この状況!?)」

久遠が寝転んでいた自分の服をたくし上げて身体を触りながら何かしている

おそらく数多くの男子高校生にとって寝込みを美少女に襲われる(?)のはきっとラッキーなイベントかもしれないが公暁にはそこまでアタマがまわらなかった

え、これどうしたらいいんですかと

このままじゃ局所的に身体が硬くなりますというかくすぐったい、声が漏れそう

なんて葛藤を何とか押さえ込んで耐えている

「...もしかして、これかな?」

久遠は自分の首筋というか鎖骨の辺りを見ながら言った

そこには確かに不自然に黒いシミがあって自分の物と同じ、おそらく狂痕だろう

公暁には何のことか分からなかったがこれで終わったのかと頭の中で安堵するが


不意に、その部分を触られた

「っ...!」

「く、公暁くん!?」

くすぐったくて息がつまり、声が漏れ

顔に乗っかってる問題集を取っ払って久遠の顔を見た

久遠も気付いた途端、座った姿勢のまま後ずさり

「ななな、何してんだよ久遠さん!?」

「ごごごごめんなさい!!」

「謝るってなんなんだよー!?確信犯!?」

暫く二人が顔合わせるたびにいろいろ気まずくなるのはまた別の話



「んでー、何で図書室に来てるんだ?」

退屈そうに欠伸をしながら篁は言った

場所は私立久遠高等学校図書館棟

この学校は中途半端な地方都市にあるにしては異常にデカい

この私立久遠高等学校についても語らねばなるまい

それもまた、別の話

「...ファミリアって使い魔って意味らしいんだ関係ないとも言えなくてね、神話の本とかファンタジー系の本とか参考になるのかと思ってな」

「...前者はあっても後者はないだろ」

情報収集だ

この摩訶不思議な能力が何なのか

公暁の藍色の騎士と篁の【鳥神星(スザク)】久遠の【アージェント】

使えるだけでなく、正体も知る必要がある

久遠から聞いた“狂痕”

自分の身体でも改めて確認できたし、篁の身体にも背中に小さいが確認できた

例の縫家花という男性にも聞くべきだろう


「...神話、神話...」

篁と別れてそれっぽい本がありそうな場所を歩いて神話の本を探していた

ファミリアという横文字で日本神話はないな、と西洋系の神話を探していた

「...ケルト?北欧?よく分からないが...」

一応、それらしい本を本棚から見つけ手を伸ばした

「あ、...」

「ん...?」

手が触れ合った

同じ本を取りに来ていた少女と手が当たったのだ

まっすぐに伸ばした黒髪

名札の色から察するに後輩の女子生徒

整った顔立ちだが、先輩の公暁に少々戸惑ってるようだ

「す、すみません...!」

「いや、構わないよ。同じような本なら何処かにあるだろうし、その本持ってっていいよ」

別にこの本だけが情報を持ってるとは限らない

別の本があれば十分だろう

「あ、ありがとうございます...!」

何故か少し目線を外しながら少女は頭を下げて言った

公暁も新しい本を探そうとその場を離れようとした時

「...きゃっ!」

本棚から本が数冊、思い切り先ほどの少女へ崩れていた

先程の本を取ろうとした時に一緒に落ちてきたのだろう

少女は軽く本に埋れていた

「大丈夫?立てるか?」

「は、はい...何とか」

苦笑いしながら答える

公暁から差し出された手を見て少し恥ずかしそうに握って起こしてもらった

「ありがとうございます...!」

「別にいいよ、それより本戻さないと」

「そうですね!先生に怒られちゃう前に!」


見えた

彼女を起こす時に見えてしまった

変なものではない、いや変なものが見えたのだけど

彼女の脚、正確には太腿の後ろ側

スカートで隠れていたが確かに見えた

黒く染まったシミらしきものが

公暁はそれが何か知っている

自分の物とは比べものにならないくらい濃く大きい


「これで終わりっと...ありがとうございました!」

「え?...あ、ああ」

本も全て片付けて少女は頭を深々と下げた

今の時代、こんな子は珍しい気がする

「ちょっと、聞きたいことが...」

と聞こうとした時に予鈴が鳴った

「あ、ごめんなさい!私、掃除場所ちょっと遠いから...また今度話しましょう先輩!」

そう言ってこちらの返事を言う前に小走りで図書室を走り去って行った

「あ、公暁くん!」

と、同時に図書館に入ってくる久遠

「何か情報あった?」

「あぁ、とびきりのがな」

公暁はあの少女が走っていた方向を見つめ続けていた

「...で、篁くんは?」

「そこで寝てるよ」

そう言って図書室の本にヨダレ垂らしながら寝てる篁

図書室の先生に怒られる前に篁を置いて行ったのは秘密




一年二組、天音(あまね)雲雀(ひばり)

私立久遠高等学校に通う女子生徒

成績優秀、素行も良く教師からも生徒からも一目置かれている

「必要なのはこんなところかな...?」

「それって久遠さんの家が調べ上げたものか...?すげーよそれ」

「あの子が使役者使いねぇ...本当か?」

日付を少し進めての放課後

公暁結生と久遠由莉奈、篁深夜は現在校門をくぐったばかりの少女

公暁が接触した少女、天音雲雀の後を少しずつ追っていた

彼女の脚に見えた“狂痕”

その存在が使役者使いの証拠だ

「バスト84あたりか...俺のスカウターがそう言っている」

彼女の後ろ姿で何故そんなことが分かるのかというツッコミをする前に今は尾行中だ、静かにせねばならない

「うるさいぞ篁、物理的に口縫い合わされたいのか」

「因みに久遠さんは86と読む」

「いい加減に...! 86か...」

「う、うるさいぞ男子!」

もしかして本当に当たってるのか久遠も顔を染めつつ、天音の後を追う

尾行経験なんてないので正直漫画やアニメの真似事っぽく



「うむ...、情報通りに住んでるアパートへ向かってるね」

「途中で買い食いもしてないし、いい子なんだな」

夕暮れの帰り道、天音雲雀の後ろを順調に追っていた

道中にあるコンビニもよらずまっすぐアパートへ向かっていた

「でも...なんか」

少し、不審だった

周りを見回して、少しだけ足が早かった

「気付かれた...?」

「いや、こちらには気付いていな....っ!」

公暁が喋った瞬間、天音雲雀に変化があった



彼女の身体から緑色のシルエットが現れたのだ

周りに通行人が数人いるが、誰も気に留めない

見えていない

「...使役者(ファミリア)っ!」

「公暁の話は本当だな、どうする?」

「...様子見だな」

緑色のシルエットがはっきり見えてくる

それは蝶だった

10、20、まだ増える

増えに増えた蝶の数は50匹

天音雲雀の身体の周りを舞っていた

「群体型...?」

久遠はその蝶を見ながら呟いた

群体型

名の通り複数の個体が集団で集まり、その全体で一体の(タイプ)

蝶は風に身を任せるように辺りに飛ぶ

その行為にどういった意味があるのか不明だが、天音は何かに気付いたようだ

「...っ!!」

天音雲雀は急に今までの歩いていた方向から逆向きに

公暁達のいる方向に走り出した

「なっ...!?」

「見つかっ...」

「やべっ....!」

バレて襲い掛かられたのだと

全員が全員、三人とも身構えた

が、天音雲雀はそのまま通り過ぎて行く

「えっ...?」

同じ学校の久遠も篁にも

顔見知りの公暁にも一切目もくれず

そのまま走り去っていく

「何が...」

「オイ逃げたぞ!」

と、先程まで天音雲雀が歩いていた方向の先から声がする

居たのは数名の不良集団

恐らく自主的な欠席でもしてるような人達だろう

その全員が走り去って行く天音雲雀を見ている

「チッ!何で居場所がバレてんだ!逃がすんじゃねぇ!追いかけろ!」

リーダー格の人物らしい男がそう指示して他の男たちも天音雲雀を追いかける

男たちはまるであそこで待ち構えていたみたいだが逃げられたようだ

「公暁くん!篁くん!追いかけよ!何か危なそう!」

「ああ!」

「了解!」

事態は飲み込めなくとも危険なのは理解できる

その男たちを追うように、公暁達も走り出した




「っ...はあ!...はあ...っ!」

天音雲雀は入り組んだ路地裏を走っていた

表の大通りはバイクを使われる

警察署か交番まで逃げ切れる自信はない

足を使うことになるこの場所なら勝機はある

この“チカラ”があれば

「...『発信』」

ピーン、と甲高い音が鳴った

この緑色の不思議な蝶から発せられた音だ

これには不思議なチカラがある

この音が鳴ってる間は色々な人の位置が分かるのだ

今は『危ない人』に分類される人達の位置を洗っている

「...手分けしてる...こっちに向かってるのは4人かな...、迷ってるみたいだし、ちょっと走れば...!」


どうして、こんな目に合うのだろう

最初は少々しつこいナンパだった

街中で友達と遊んでいると声を掛けられた事が始まりだ

彼らがいかにも危ない人達で自分に声を掛けたのも何か目的があってに決まってる

実際、声を掛けられた友達が乱暴を受けた

あの人達は証拠不十分で起訴されず、友達は乱暴のショックでおかしくなり精神病院に行った

次は自分の番だ、と悟った

事実、何度も追いかけられている

警察もロクに動かない

その度に使うのがこのチカラ

いつから使えるのかは知らない

ずっと昔の気がすれば、最近かもしれない

このお陰で、今まで無事でいた

病院のベッドで友達は言った

「雲雀は元気でいてね」と

だから捕まれない、友達の為にもーー

「もう一回...っ、発信しとこうかな...っ」

荒い息を整えつつ、壁に手をついてそう言った

あれから結構走った

距離を掴むためにももう一度しておくべきだろう

息を整えて

「...『発し...っ!」

痛みが走った

全身から、身体中に激痛が走った

視界が歪み、聴覚が薄くなる感覚

「はあっ...!...痛い」

最近は頻発に起こるようになった

このチカラを使う度に時々痛くなる

太腿の後ろにも痛みが出るのが同じぐらいから変なシミができている

人には無い、変わったチカラを使い過ぎたのか

そう思えるようになってきた

「...これじゃあ、場所が...!」

「お、見つけた見つけたーっと!ラッキー!」

「こんなところにかよ...手間掛けさせやがって」

後ろから声が聞こえた

見覚えはないが二人の男性

服装から追っ手と同じグループの人間だろう

こちらを見ながらニヤニヤと笑う

ついに、見つかってしまった

と思っても既に遅い

思わず、後ずさり

「いや...っ」

「さーってと、見つけた奴から好きにしちゃっていいんだっけ?」

「あぁ、早い者勝ちだった」

二人の男性は一歩一歩近づいてくる

思うように、逃げられない

この全身の痛みがなければもっと早く走れただろうが

「おーっと、逃げんじゃねぇぞ?」

「っ...!」

すぐに捕まってしまう

手を引っ張られ抱き寄せられる

ただ、不快だ

「なー、この辺で手頃にヤレる場所ってあるか?今ラブホ使える程金ねぇんだけど」

抱き寄せた方の男が笑顔で相方の男に問いかけた

ただ相方の財布も寂しいらしく、どうすればと少し思案して口を開く

「近くに廃工場あるだろ、そこでいいじゃないか」

「あーあそこね...まいいや、背に腹は変えらんねぇし、しょうがねぇか!」

「そこ変わり俺にもヤらせろよ、場所提供したんだからよ」

「了解了解っと!さー行こうぜお嬢ちゃん」

「え!?ちょっ!」

無理矢理引っ張られる

嫌だ、行きたくない

こんな所で、こんな人になんて

そんな少女の思いも虚しく、順調に廃工場の一室に連れ込まれて行った

「皆にはメールしたか?」

「あぁ、すぐ皆でこっち来るってよ。皆コイツ犯したいみたいだからな」

周りはどこも使われない廃墟が立ち並ぶ区画だ

壁や屋根に大穴が空いていて声は聞こえるだろうが周りにそれを聞く人はいない

「さってと...ヤるか、おい腕抑えてろ」

「へいへい、オラ暴れんな...口塞ぐか」

「イヤ!やめてよ!っ...!...っっ!」

口も塞がれ声も出なくなった

いくら暴れても男性の腕力が相手なら無理だ

男の手が少しずつ伸びて行く

胸部に、秘部へ

あぁ、こんな事で崩れてしまうのかと

人の人生はなんともーー脆いのだと


「.....、.....」


最後に自分が何を言ったか覚えていない

いや正確には、覚えているがその後の出来事があまりに衝撃的だっただからだ


「その子から手を離せよ、発情期真っ盛りのドブネズミが」


見覚えのある顔とか、そんなことは気にしなかった

気にできなかった

藍色の騎士を引き連れた少年がそこに居たか立っている

まるで御伽噺の囚われの姫を助け出す王子様のように、その場で立ち尽くしていたからだ


第七話、完

さて、後半予想以上にエロチックになってしまった第7話ですが、いかがでしょうか


どうも自分はこういう文章苦手で書いてる時は終始恥ずかしかったですよ、本当に

べ、別に喜んで書いてなんかry


次回は説明会になるかもですね

ではでは、皆様次回「特例者保護開発研究機関」お楽しみに

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