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藍色の使役者

この物語はフィクションです

登場する人物名、地名、団体、宗教など

実際のものとは一切関係ありません

雪の様に美しい少女だった

白く清純そうな顔立ちだが、雪の様にすぐに消える儚さは感じられない

少女の意思を持った赤い瞳はまっすぐ青年を見据えている

そして、そのすぐ側に使役者(ファミリア)と呼ばれる銀色のシルエット

よく見ると青年のそれとは違っていて、青年のシルエットを腹を空かせた獰猛な猛獣とすれば、この銀色のシルエットは機械的な細身の身体

人と機械が合体したような形だった

ピクリとも動かない姿は逆に不安感を感じさせる

「...見つけたわよ、安羅河(あらが)凍夜(とうや)...貴方でしょ?警察も手を焼いてるこの一連の連続殺人事件の犯人...」

先に口を開いたのは少女の方だった

安羅河凍夜というのも青年の名だろう

言われた青年も不気味な微笑で返す

連続殺人事件、この久遠市で最近起きた謎の殺人事件だ

事故とは思えぬ状態で人が死んでいるのが特徴だ

周りは何もないのにまるで巨大な鉄塊に押し潰され中身が溢れ出している死体や四肢が綺麗になくなっている死体、体内の内蔵だけが消えている死体

そして、身体の至るところが食べられている死体

その数は既に40人を超えていた

手際の良さから集団での事件と見ているが、したいの状況からどのように殺したのかさっぱりわからないらしい

公暁自身もさっぱり検討がつかなかったが、今なら分かる

目の前の灰色のシルエット

あの使役者(ファミリア)が関係していると


「んーんーんー?ソコにいらっしゃるのは、これはこれはごきげんようこの久遠市の大地主様の血筋の久遠(くおん)由莉奈(ゆりな)様じゃないですかー?」

青年も少女の方向いて笑いながら答える

抑えた腕を離してその灰色のシルエットを構えた

「久遠」というとこの「久遠市」の大地主だった久遠家の人間だ

莫大な財産を持った大富豪らしい

そこの1人娘だ、思い出せばクラスは違えど同じ学年で同じ学校に通っていたのを思い出す

公暁は話したことは一切ないが

安羅河凍夜と久遠由莉奈

今、この2人が対峙している


「今日こそ決着をつけるわ、これ以上私の街を荒らさないで」

構えた

久遠が左手を前に出すと後方の銀色のシルエットが静止した状態から動き出す

ガチャン!と、久遠の使役者(ファミリア)の左手が変形する

腕の中に仕込んでいるのか手首の辺りから銃口の様なものが幾つも出てくる

手首の周りからまるでガトリング砲の様なものが現れた

その銃口は安羅河の方を向いている

「荒らさないでーってか?かーっかっかっか!何言ってんだよ!コノお嬢様わー!」

一方、安羅河は変わらず笑ってる

しかし、その使役者(ファミリア)は違っていた

口を大きく開け、牙を剥き出し

両手の爪を大きく広げ脚を開き、構えた

両者は睨み合う

これが戦いの雰囲気というのは、今この場で最もド素人の公暁にも分かる

誰が先にどう出るのか、どちらが強いのか

そもそもこの少女は味方なのか

公暁は答えの分からぬ思考を巡らせた


「ひゃーひゃっはーっ!ハッ!!」

先に飛び出したのは安羅河だった

安羅河の使役者(ファミリア)が地面を踏み思い切り蹴った

ドッ!という音ともに足元の地面を砕きながら地面と水平にこちらに向けて飛んできた

「う、うわっ!」

「頭下げて!」

公暁の声と久遠の声が重なる

公暁の服が後ろから引っ張られる

久遠が引っ張り、使役者(ファミリア)が前に出た

ガチャン、と機械的な音が鳴り使役者(ファミリア)の手首の銃口が回転する

「この距離で近接技しかない貴方に勝ち目があると思ってるの!!」

笑みを浮かべて久遠は自分の唇を舐める

「結構うるさいわよ...耳塞いで!」

「え、何...?」

「掃射開始ィ!」

瞬間、ほぼ頭上で銃声が鳴り響いた

火薬が爆発し、銃口内部を掠りながら空中に弾き出される

よくあるシューティングゲームがどれほど耳に優しいか考えさせられる

頭上で鳴り響く音は空気を伝わり聴覚以前に触覚で伝わってくる

意味はなくとも、公暁は思い切り耳を塞いだ


「ハッ!直線的な攻撃が当たるかよっ!」

安羅河は飛んでくる銃弾に一切驚く様子もなく地面を蹴った衝撃で滑る様に水平移動した状態から安羅河の使役者(ファミリア)が再び地面を蹴る

上方向へのジャンプだ

久遠の使役者(ファミリア)が放った数十発の銃弾を全て、いとも簡単に避ける

避けられた銃弾はそのまま空を裂き、路上駐車していた車を飲み込むように砕いた

「(射撃なんて生で見たことねーけど、流石になんだあの威力!?)」

銃弾が当たった部位はその半径30センチ程飲み込んで消えていた

銃弾の回転で跡形も無く消え去ったのだ

それを数十発、最初の20発程でその車は消滅していた

「(何なんだよ!コイツ等バケモンか!?)」

その圧倒的威力と速度の銃の持ち主は攻撃をやめない

「避ける速さは相変わらずね!だけど、空中に逃げたのは間違いよ!」

ガチャン!と久遠の使役者(ファミリア)は右手もガトリング砲に変形する

「空中でどうやって避けるつもりかしら!」

久遠の計算通りだった

この裏道は廃墟に挟まれた道だ、ある程度入ってくれば移動できる方向は前と後ろだけだ

この状況で直線的な攻撃である銃撃を行えば、避ける為に上方向に逃げるだろう

そう、この空中に逃げるのを狙っている


「ケッ!んなこたー考え済みだってよ!」

空中で安羅河はその使役者(ファミリア)の腕を思い切り振るう

ドバッ!と廃墟の壁が破壊され、大破した壁が安羅河と銃弾を結ぶ直線に間に割り込んできた

「身を守る壁にでも使うのかしら!?そんな壁を使っても弾道一つ変えられないわ!」

事実、先程の車と同じく撃ち込まれた弾丸は全て大破した壁を飲み込んで貫いていく

だが、その壁の向こうに安羅河もその使役者(ファミリア)の姿も無い

「...なっ!?」

「弾丸防げなくてもよ〜、テメーの視界から俺の姿ぐらい防げるよな〜っ!!」

安羅河の声は空中ではなく、地上で聞こえる

既に安羅河は着地しこちらに高速で迫ってきていた

「速...!」

「この距離なら遠距離技しかねぇテメーに勝ち目があると思ってんのか!!」

既に安羅河はその手が届く距離に近づいてきていた

「喰らえっ!血肉喰人(ブラッドイーター)!」

右手の爪による振り上げだった

その肉を喰らい、飲み込むような一撃は久遠の使役者(ファミリア)に直撃した

胸部に当たり、その部位を勢いよく抉っていく

「グッ!ああっ!」

久遠は自分の胸を抑えて跪く

「ケッ!もう終わりか〜!?お嬢様よー!」

振り上げた右手が動く

続いて振り下ろす二発目がくるのは公暁にも分かった

「あ、危ない!」

「分かってるわよ!」

そう言うと、久遠の使役者(ファミリア)の脚部のパーツが開く

パシュッと軽い音が鳴った

撃ちだされたのは4発ほどの小型の球体だった

公暁がこの物体が何か分かる前に球体が真っ白な煙が辺りと公暁と安羅河の視界を埋め尽くした

「チッ!煙幕かよ!!」

「ちょ、何も見え...うわっ!」

白い視界の中、公暁は身体を掴まれそのまま何者かに連れ去られた



正直、道中に何があったか覚えてない

言うなれば、安全バーもない絶叫マシンに乗った気分だ

重力とか遠心力的な何かの力でメチャメチャになって今現在公園のベンチで横になっている

目覚めたら例の久遠がいて事情を聞くと、煙幕で逃げる際公暁を一緒に引っ張ってきたそうだ

出来るだけ遠くに逃げる必要があるのでジャンプでビルの建物の上を飛んでいったらしい

「どーりで...気分悪いわけだ、酔ったっぽい...」

「ごめんなさい、そうでもしなきゃ貴方を連れて逃げれなかったの」

久遠は多少申し訳なさそうに言っている

公暁も「生きて帰れたら儲けもんだ」と特に気にしなかった

「...で、それは何?」

公暁は目線を“それ”に向ける

使役者(ファミリア)と呼ばれるそれだ

さっきまでかなりアクティブに動いていたが今はピクリとも動かない

「貴方をにも使役者(ファミリア)が見えるの?使えない?」

「使えるかっ!」

そんなバケモノみたいなチカラが俺にあるかよ!、と公暁は指を指して言った

対して久遠は首を傾げる

「それはおかしいわ、だって使役者(ファミリア)使役者(ファミリア)を携える者にしか見えないのよ?」

「じゃあ、俺がその使役者(ファミリア)とやらを扱えると...?」

「そゆこと」

なんとまービックリな展開だ、と公暁は思う

自分にこの摩訶不思議なチカラがあると、

全くを持ってバカバカしい

「そんなん知らねーよ!?生まれてこの方16年!そんな経験ありませんけど!?」

「なら何故かしら....」

久遠は腕を組んで考える

全く訳がわからない公暁としてはさっさと家に帰りたいのだが、ここが何処なのかさっぱりわからない

ここ「久遠市」は地味に広い

迷えばかなり面倒だ、と少々自室のベッドが恋しいと公暁が思っていると


「見ィつけたーッ!」

っと聞き慣れた男の声が響く

上方向から、まっすぐこちらに

「安羅河!?速すぎる!!」

久遠がその使役者(ファミリア)の銃を構える前に安羅河の使役者(ファミリア)爪が届く

ズバッ!と肩から腹部にかけて久遠の使役者(ファミリア)を一気に引き裂いた

痛みが、走る

「っ!...きゃあああああああっ!!」

耐えられる痛みではなかった

全身の痛みに耐えかね、久遠はその場に倒れこむ

「だ、大丈夫か!?」

公暁が駆け寄ったが、久遠は動かない

呼吸はしているが、荒く苦しそうに息を吐いている

「おうおう...イテェイテェ!肩から腹まで一気だったもんなー!そりゃ痛いわー!キャッハッハッハ!!生きてますかーって、本当に死んでんじゃねーの!ハッハッハ!」

狂い笑う

安羅河は動かない無抵抗の少女をこれ以上もなく不快な声で嘲笑う

「な、何で...この子は痛がるんだ!自分が傷ついた訳でもないのに!」

「んあー?お前使役者(ファミリア)見えてんのに知らねーの?使役者(ファミリア)っても、自分の分身と変わらねー、傷つけば痛がっても当然だろ?キャッハッハッハ!」

それを知っていながら、この男は

この子を殺そうとしたのか

「俺も殺されソーになってたからよ、正当防衛だよ、正当防衛...キャハハハッ!」

こいつは一般人殺して捕まえにきたこの子まで殺すのか

好きな事好きなだけやって自分だけ助かろうとしている

この感情がわからない

自分の意思と行動が正しいかわからない

だが、公暁が気が付けばその拳を握りしめて安羅河の元に殴りかかっていた

「ふ、ざけるなアアアァァァッツ!!」

「あーん?ヤンのか?」

ゴッと、鈍い音が響く

安羅河の顔面でなく、公暁の腹部から

安羅河の使役者(ファミリア)の蹴りが公暁の腹部に当たっていた

「グハッ...!」

「悪りぃなオマエ、届かねぇわ」

グッと、使役者(ファミリア)の脚に力が入る

ブンッ!と脚を振るわれる

それだけの動作で公暁の身体は10メートル程吹き飛ぶ

いともたやすく吹き飛んだ公暁は近くの遊具に背中を叩きつけて止まった

「ぐっ...ハッ...」

手加減された、本気なら身体が残らず肉塊になってるはずだ

「オマエさんは後に喰ってやる、せいぜい走馬灯でも見て待ってな」

そう言うと安羅河は視線を久遠へ向ける

久遠もまだ身体が痛むようだが意識を取り戻したようだ

だが、使役者(ファミリア)の操作もままならないようだ

安羅河へ銃も撃てていない

「お目覚めカナー?お嬢様っと、どうだい?これから食べられちゃう気分って...キャハハハッ!」

安羅河の使役者(ファミリア)が久遠の首を掴んで持ち上げる

足が地面につかないぐらいに

「んっ...ああっ!」

「暴れんなよ、強者は弱者を虐げる義務があるんだからよ!」

腕の力が強くなる

久遠の首が徐々に閉まっていく

顔から苦しみの念が溢れる

だが、意思は死んでいない

「あ、なた...なんか、に....」

「あーん?」

苦しみながら口を開く

必死に言葉を紡ぐ

「貴方みたいな狂人に...殺されて...たまるもんですか!」

「...あー」

最後の悪あがき

不適に笑ってやった久遠

勝負に負けても人間として負けたくない

「この女でちょっくら性欲でも解消しようと思ったけどやっぱ変更、そっこー殺すわ」

パッと腕の力を緩める、と同時に

ゴッ!と蹴りをその腹に打ち込んだ

「ガッ...!」

久遠の身体は植えられた木をへし折って地面に倒れこむ

今度こそ、動かない

今まで動いたのが不思議なぐらいだ

「罵ってくれる女は好きだが、こいつは論外だ...惜しいねぇ〜、胸もそこそこあるし、顔も合格点レベルだったのによ、キャハハハッ」

笑いながら久遠の元へ歩いて行く

あの子が殺されてしまう

助けなきゃ、と本能で思えた

行っても時間稼ぎにもならない、今度は蹴られるだけじゃ済まないし手加減もされないだろう

だけど、あんなもの放っておけない


公暁は動かない身体を動かそうとする

何とか立とうとするが、倒れる

脚が動けない

這ってしか動けない

服が汚れる?それがなんだ

助けなきゃ、見殺しにできるか

もっと速く、もっと遠くへ

何で、何でこんなに

「何で!こんなに弱いんだ!」

公暁は思い切り地面を殴った

こんなにも自分が役に立たないなんて

自分を救ってくれた女の子一人も助けれないのかと

不思議と頬を伝うものがあった

一雫の波だが


助けたい

あの子を助けたい

この身を捧げても、あの子を助ける

何を犠牲にしても、全てを犠牲にしても

あの子をーー、


「...!」

頭痛が走る

まるで頭の内部から針が飛び出すような痛み

痛みは頭では飽き足らず全身を暴れ周り神経をメチャメチャにしていく

体内が原型を留めていないような

ーー、構わない

「...それで...あの子を助けることができるなら」

後は解き放つのみ

この工程を行えば、後戻りはできない

自分もバケモノと同類だ

迷いは、なかった


「...来い」


解放された、藍色の光

公暁の身体から浮かび上がる藍色のシルエット

その両手に鋭い剣を携えた、藍色の騎士


使役者(ファミリア)


「んー?なんだよ...一体...ってスゲぇ!使役者(ファミリア)じゃん!オマエやっぱり使えるじゃん!キャッハッハッハ!」

安羅河は心底嬉しそうに笑う

きっと相手が欲しかったのだろうと公暁は思う

自分と対等に渡り合う相手が

久遠では相手にならなかったのだ


脚が動く、立ち上がれる

公暁はその場から立ち上がった

己の使役者(ファミリア)の補助で立っていられた

これで、対等だ


「おもしれぇ!オンナはやっぱり後回し!こっちに方が!」

「悪いけど」

安羅河の言葉が止まり、公暁は続ける

「お前の相手をしてる暇はない」

公暁とその使役者(ファミリア)は既に安羅河の後ろにいた

安羅河の後ろに倒れていた久遠を抱きかかえていた

「な、ナニガ...?」

「なあ、アンタ...その使役者(ファミリア)のダメージは本体にもくるんだよな...」

公暁はたんたんと続け

安羅河は何が起きたか気付いていない

ただ何が起きていたのか考えた

「じゃあせいぜい我慢しろ、四肢を切られた痛みって相当だろうし」

「な、何を...グッ!」

安羅河の使役者(ファミリア)が、ビクンッと動く

その拍子に両腕と両脚が無残にも崩れ落ちた

「ぐ、ギャアアアアアアアアアッ!!」

膝から倒れこみ、唾液を吐き散らしながら安羅河凍夜はその場に倒れこんだ




「...さて、と」

久遠をベンチに寝かせて濡らしたハンカチを額にのっけて何とかこちらは大丈夫そうだ

久遠を見たが外傷はない

使役者(ファミリア)のダメージはあくまで痛覚だけのようだ

時間が経てば治るだろう

「....、と」

急に脚の力が抜けて座り込む

使役者(ファミリア)の補助で何とか立っていられたもののダメージはでかい

脚の神経がおかしくなった様な気がした

ここで、公暁は振り返る

そこに倒れていたのは未だに痙攣を起こして苦しんでいる安羅河凍夜だ

公暁はこの男の処分に迷っていた

自分の使役者(ファミリア)を使えば楽に命を断てるだろう

しかし、殺せばこの男とやってることは同じだ

警察も信じてくれるとは思えない

じゃあ、どうしようと思っていると

そこへ、別の声が響いた

「誰だ!」

「怪しいものではない、そこのクソガキのお守だ」

ガタイのいい大男だった

色黒の肌が威圧感を増大させている

クソガキとはこの安羅河凍夜の事だろう

「こいつは一人で先走ることが多いからな、迎えにきたらこのザマだ」

安羅河凍夜の仲間か

こちらはボロボロでもう誰かと戦うチカラはない

「(どうする...!どうすれば...!)」

まだ久遠は目覚めておらず、公暁も先程どうやってあの藍色の騎士を操ったか覚えていない

無意識の内にやってのけた事だ

もう一度、できる気はしない

「ここでは暴れんさ、俺はこのクソガキを迎えに来ただけだ」

そう言うと、大男は安羅河を腕で持ち上げてそのまま去ろうとする

公暁はこんなにあっさり引いてくれるのかと少し的が外れた気がした

「だが、新参者が増えたとだけ覚えておくぞ」

大男は去り際にニコリと笑い暗闇の中へ消えていった



久遠が目覚めたのはその5分後だった

「んっ...あ....あれ?」

「やっと目覚めたか?身体は大丈夫か?」

公暁は近くの自販機で買ったコーヒーを久遠に渡す

久遠はまだ事態が理解できていないらしく、辺りをキョロキョロとしたりする

「あの...安羅河凍夜は...?」

「変な大男が連れ去った、お迎えにきたんだと」

「お迎えって黄泉の国から?」

さらっと怖い事言うな

とりあえず、公暁は久遠が気を失ってからの出来事を全部話した

と言っても、公暁が使役者(ファミリア)に目覚めた事ぐらいか

「貴方もやっぱり使えるんだ...ビックリしたよ、普通の人に見えたら私、人前に出れないよ!」

久遠は笑いながらそう言った

出会った時から今に至るまでずっとバトル展開だったから気づかなかったけど

この子笑った顔可愛いなと、公暁の脳裏に変な思考が走ったので頭をブンブン振ってそれを消す

「ありがとうね、知ってるかもしれないけど私は久遠由莉奈よ、よろしく」

手を差し出された

白く綺麗な肌...じゃなく、握手を求められている

こんな細い手に握手なんてしていいのか

というか年頃の女子と握手なんてした経験はないが、ここで断るのも無礼だろう

「...公暁結生...です」

ぎゅっとその手を握り返した

その手は暖かく、優しい手だった

「よろしく!公暁くん!」

久遠は笑顔でその名前を呼んでくれた



公暁が寮の自室に帰った頃には既に時計は午前2時になっていた

もう寝よう、今頃になって疲労と睡魔に襲われる

課題とか残ってた気がするが、健康な明日のは変えられない

すぐに寝巻きに着替えて寝ようとした時に

トントン、とノック音がした

「...?」

こんな時間に誰だろう

友人も寝てるようだし、管理室のおっさんもいなかった

じゃあ、誰かと思って扉を開けると

「あ、良かったー!まだ起きてた!」

銀色の髪に白い肌、赤い瞳

言うまでもない久遠由莉奈だった

「は?」

「君、使役者(ファミリア)を使えるなら間違いなく彼等たちにマークされてるわ、せっかく助けたのに見殺しにはできないもん」

久遠は手に持った重そうな鞄を持って部屋に入ってくる

「ちょ、ちょっと待て意味がよくわからないんだが...」

勝手に入ってくる久遠の前に立ち塞がって公暁は事情を聞く

公暁の眠気はこの次の久遠のセリフで完全に消し飛んだ

「公暁くんを守るためにここで一緒に暮らさせてもらうわ、貴方を殺させる訳にはいかないもの?」



それはあまりに唐突な同棲宣言だった



第二話、完


はてさて、やってまいりました第2話いかがでしたでしょうか

当初の予定では1話と同じ約3500文字を目標に書いてたら2倍以上の7000文字でした

それでいて、まだ説明不足な気がしますから

どうやら自分は文字が多いだけの駄文を書くのが得意みたいです

...現在進行形で


さて、物語もよくあるラノベ的展開になりました、しかしどーも自分はハーレムものの小説は苦手なのでそんなラノベチックにはならないと思います

男女もいいぐらいの比率で出してきて〜のバトルもので行きますので

もし読んでくれる方がいて下さればまた続きを見てやってください


それでは、次回「破綻者」お楽しみに

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