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最初の勝負
足音は、早歩きをしながら、僕たちへと近寄ってくる。
「最初は誰なんだ…」
がらりとドアを開けて入ってきたのは、高屋だった。
だが、本人はずっと僕たちと一緒にいたから、この高屋は高屋本人ではない。
「…ケンカはできればしたくないんだけどなぁ」
偽高屋はそう言って、頭を軽くかいた。
「別に君の存在が消えても、こちらとしては困ることはない。もともとあやふやな存在だしね。でも、君かこっちか、何らかの方法で戦う必要がある」
「なら、これでいいかな」
高屋を指さしていた偽高屋に、高屋はどこから取り出したか分からない、オセロを見せた。
「オセロか」
僕がつぶやいたのが聞こえたのか、高屋が僕を見て、偽高屋を見て言った。
「これでも、学年大会で優勝したことがあるから、きっと勝てる」
「なら、勝負といこう」
偽高屋が空中から机と椅子2脚を取り出し、二人が座ると同時に、オセロ勝負が始まった。