11.側仕えの少女Ⅱ
楽園の薔薇
11.側仕えの少女
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「レイアース、様?何でここに?」
先に言ったのはサラティ。
頬がかすかに赤くなっている。
サラティはレイアースに憧れているということをイザベラが知ったのは、ほんの3日前だ。
「いや、家の事情で。イザベラ、帰るぞ。」
「え、でも…。」
今はちょうど仕事で呼ばれたのに。
「いいよ、イザベラ。仕事は何とかするから。」
「人手不足なんでしょ?だったら…。」
「いいって!イザベラの家の事情なら仕方ないもん。今日はいいから、明日。ね?」
こういう時のサラティは、妙に説得力がある気がする。
イザベラは仕方なく、帰ることにした。
「そんなにがっかりすることかよ。」
レイアースが苦笑する。
イザベラは思わずため息をついてしまった。
「だって、兄様…。」
やっぱり行きたくないなぁと思ったイザベラだが、サラティに背をぐいぐい押された。
「はいはい。イザベラはレイアース兄様と帰った帰った!そんなに残りたいなら、話が終わり次第こっちに来ればいいじゃない。」
「う、それは面倒…」
「じゃー明日!それではレイアース様。イザベラをどーぞ。」
サラティが笑顔で言う。
レイアースも笑顔で返した。
「おう。サラティ、仕事あんだろ?頑張れよ。」
「はいっ!」
元気に返事をして、サラティは仕事場へと走っていった。
「――それで?家の事情って何、レイアース兄様。」
イザベラは、サラティがいなくなったとたんに冷たい目でレイアースに問いかける。
「やめろよ、兄様なんて。サラティがいるから顔には出さなかったけど。鳥肌立って仕方なかったんだからな!」
レイアースがわざとらしく腕をさするのを横目に、イザベラはふーっと息を吐き出す。
「レイアースがここまで来るってことは、相当重要なことね。闇の人物に関係してる?」
レイアースは、にっと笑った。
サラティに向けていた笑みとは違う。
「そこまでわかってんなら、話は早い。行くぞ、イスフィール。」
イザベラ――薔薇姫・イスフィールは、すっと目を細めた。