9.風邪!?なのか?Ⅲ
楽園の薔薇
9.風邪!?なのか?
<3>
そう思った時、イスフィールを頭痛が襲った。
少しふらつき、寝台に手をつく。
「イスフィール、少し寝なさい。風邪引きってこと、忘れちゃだめよ。」
リカティアの手がイスフィールの髪をなでた。
小さい頃も、こんなことがあった気がする。
ラクリーン・トライドとの事件が終わって別れる時、小さい頃の記憶がすべて頭に戻ったのだ。
その記憶の中の1つ。
リカティアやラウディー、ラディアが、いないソフィアの代わりにそばにいた。
昔からのことで、イスフィールは逆らえない。
反抗でもしようものなら、ユニゾン、セイレーンまでやってきてしまう。
「うん…。」
「よし。話は後でしてあげるから。」
もう、体がだるくてよく分からない。
誰かにぽんと頭をなでられ、その心地よさにイスフィールは眠りの世界へ落ちていった。
* * *
夢だ…。
イスフィールは、目の前にいるものを見てそう思った。
薄紫のショートヘア、翡翠の色とうすーい黄緑色のワンピース。
うーん、見事なまでに本人と服がぴったりだ。
…だが、注目すべき点はそこではない。
彼女の背にある、青みがかった鳥のような羽。
「天使…?」
イスフィールが思わず確認すると、彼女は紫色の目を和ませた。
「はい。私はレイディア。薔薇姫ミシディア様にお告げがあってきました。」
(ちょっと待て。いま、ミシディア様って…。これ、お祖母さまなの?)
考えているうちに、レイディアは話し始める。
「あなたは子を4人お産みになります。そのうち、2番目を薔薇姫にしてください。彼女には護衛が1人しかできません。ですから、ほかの3人を守護神にするのです。生まれてすぐの時、白・赤・青の布をそれぞれに見せ、一番反応しない色。それが、彼女たちの属性となるのです。属性の色は、知ってますよね?」
「ええ。その子達の名前は?」
やっとしゃべれた…。
レイディアは、ほっとしたように笑う。
「それは自由でいいですよ。そのうち、守護神から精霊が生まれるでしょう。」
そうしてレイディアは笑顔を浮かべながら消えてしまった。
そのとたん、目の前が真っ暗になる。
「…フィール!イスフィール!」
呼んでる声がして、イスフィールは目を見開いた。
そこにはリカティアの、見知った顔。
「リカティア姉様達は…母様の守護神だったんですね…?」
かすれた声で言うと、リカティアは苦笑を浮かべた。