8.事件解決(?)!Ⅲ
楽園の薔薇
8.事件解決(?)!
<3>
「で、マリーナは?」
髪を結い直し裏通りを歩いていたイスフィールは、ふと思い出してレイアース達に聞いた。
「あー、うん。まあ…。」
レイアースの歯切れ悪い言い方は意味が分からない。
セイレーンが空を見ながら言った。
「いるよ。僕達――っていうかイスフィールについてきてる。」
イスフィールは少し感心した。
こういうところはセイレーンが兄なんだなぁと納得できる。
少し論点がずれている気もするが。
「て、空?」
「うん。あの黒い点。」
澄み切った空にある1つの点。
確かに動いている。
「すごいよねー。風の精霊らしいよ。」
「風の精霊…。プロキオンか。」
イスフィールはつらつらと記憶をたぐり寄せて言った。
「知ってんのか?」
「うん。父様のレポート用紙に書いてたわ。ふっるいやつだけど。」
城に閉じこめられていたイスフィールは、昔薔薇の護衛をしていたユニゾンの調べたことを紙で学習していた。
そのせいか知識はある。
「城までは遠いんだから、乗せてくれればいいのに。お、イスフィール。マリーナのこと呼んでみろ。」
「は?何で私?」
「だってマリーナはイスフィールを守りし者と決定したんだろ?」
「まぁ、ね。じゃ……マリーナー!!」
動いていた点がとまり、こっちに向かってくる。
「お呼びですかー?イスフィール様♪」
「うん。私も…っていうか私達もプロキオンに乗せて。」
イスフィールが目を向けた先には大きな白いトラがいる。
こいつが風の精霊プロキオン。
「…いいんですけど…。遅いですよ?」
「それでもいいから!」
歩くのは疲れたのをアピールしてみると、簡単に乗せてくれた。
(あなたが、我が主の守りし者か?)
少し眠そうな意思。
どうやらプロキオンかららしい。
(そうよ。よろしくね、プロキオン)
イスフィールの意思に、プロキオンは返事をしなかった。
こうして、歩けば30分かかる所を10分に縮めたのだ。