8.事件解決(?)!Ⅱ
楽園の薔薇
8.事件解決(?)!
<2>
「そっかぁ…。」
トライドが残念そうに言った。
「今まで、ありがとな。トライド。」
戦いから2日後。イスフィール達はエプスタイン家に帰ることになった。
「ううん。闇の人を助けてって言ったのは、僕だし。」
トライドは笑ったが、寂しがっているのは丸わかり。
イスフィールもすこし寂しかった。
「行くぞ、イール。」
レイアースが声をかける。
頷こうとした時、ふと思い出した。
(結局、私とトライドの関係って何だろ?)
「おーい!」
「あ、はいはい。今行くー!」
そのうち分かるだろうと思って振り向いた、その時。
「ちょっと待って!」
トライドがイスフィールを止めた。
「?」
「君――イスフィール、でしょ?」
そう言って、トライドがイスフィールの髪をほどく。
癖のない髪がさらさらと流れた。
(あ――)
記憶がよみがえった。
* * *
『君、名前は?』
人懐っこい声に、私は顔を上げた。
自分と同じくらいの少年が、自分を覗き込んでいる。
『イスフィール』
『綺麗な名前だねぇ。僕はライ。こんな短い名前しかないんだ。』
捨て子だったから。
――少年はそう付け足した。
ここ、下町は捨てられた子供や家のない者など、崖っぷちな生活をしている人たちの集団だ。
物心ついた時にはもうここにいた私。
このライという少年も同じだろう。
『ーって、何やってんの?』
ライはいつの間にか私の髪で遊んでいた。
『ね、イスフィール。遊ぼうよ!』
ライの目は、今まで見たことのないくらい明るかった。
* * *
「ライ…?」
「今はトライド。」
「イールー!」
向こうでレイアースが呼んでいる。
トライドがイスフィールの背中を押した。
「じゃあね、イスフィール!」
後ろで大きい声で言っている。
幸い人が少ないからいいけれど。
「どうしたんだ?」
「――ううん。じゃあね、ライ。」
イスフィールは、友達に向かって小声で言った。