1.二分咲きの薔薇Ⅱ
楽園の薔薇
1.二分咲きの薔薇
<2>
「え、セイレーン…?」
その少年は、とてもセイレーンに似ていた。
イスフィールは自分の隣を見てみたが、そこにはちゃんとセイレーンがいた。
驚いた顔で。
天の助けとばかりに、ユニゾンは話を始めた。
「ああ、彼はレイアースと言ってね。セイレーン君と同じく、未来のここ――地球から来たんだ。ここの執事になってもら――」
「なんですってぇ!!」
ユニゾンが最後まで言い終わる前に、イスフィールが立ち上がった。
「あのねぇ、父様。私、執事とかいらないんだけど。」
「違うんだ、イスフィール。彼は、君の母さん――ソフィアが呼んだ人なんだよ。」
「…母様が?」
意外なユニゾンの言葉に、イスフィールは驚く。
「君は薔薇だろう?だから、その護衛もかねている。」
「それならセイレーンがいるじゃない。」
「…セイレーン君は確かにいい護衛なんだが、イスフィールが、その~、元気すぎるんだ。」
「…あ、そ。」
「で、どうして、その、レイアース、だっけ?」
セイレーンはレイアース自身に確認した。
レイアースは小さく頷く。
「どうしてお前に似ているか、だろう?」
レイアースが自分でセイレーンの質問を口にした。
イスフィールは、そんな2人を見比べることしかできない。
「ああ、それはね。」
ユニゾンが口を開く。
「2人は双子だったんだよ。」
「「「ええ――!!!」」」
レイアースも含めて、3人で驚きの声を口にする。
「確かにそっくりだけど、双子って…。」
「ユニゾン。どっちが上だ?」
レイアースが聞く。
「上?」
「どっちが兄かってこと。」
セイレーンも同じようで、ユニゾンが分からなくなったところを説明した。
「そういうことか。それは…確かセイレーン君じゃないか?」
その言葉を聞くと、レイアースは嫌そうな瞳をセイレーンに向ける。
「何だよ、その目は!」
セイレーンは、レイアースが向けた瞳に、少し引き気味になりながら、反抗する。
「いや。」
レイアースは首を振る。
ふと、イスフィールが挙手した。
「あ、私も分かる、その気持ち。これが兄だったら、すごーく嫌。」
イスフィールに『これ』扱いされたセイレーンは、頭が真っ白になる。
そんなことも全然分からないレイアースは、頷きながらイスフィールの頭をくしゃくしゃとなでた。
(お、大きい…。)
レイアースを見上げて、思わず感じてしまう。
2人の身長差、約10cm。
「まあ、そういうわけだから。レイアース君、君はイスフィールのそばについていてくれないか?薔薇は命を狙われることも少なくない。」
真剣になったユニゾンの言葉に、イスフィールは反抗するのをあきらめた。