7.闇の毒グモⅢ
楽園の薔薇
7.闇の毒グモ
<3>
「イスフィール様!大丈夫ですか!?」
本当に心配そうな声が聞こえる。
顔を上げると、そこにはマリーナの金色の目があった。
「うん…まあ、大丈夫っぽいけど。」
曖昧な返事だったのにもかかわらず、マリーナはすごく安心したようだ。
「…マリーナ、あなたは…どうしたの?」
「?」
イスフィールの質問にマリーナは首を傾げる。
「どうしたって…精霊を呼んで風を吹かせただけですけど?」
「…そうじゃなくて。」
「え、でもそうですよー?」
「今のことじゃないんだって。闇に――。」
「…そうですね。よく覚えてませんけど、イスフィール様が助けてくれたんでしょう?――だから私も、イスフィール様を守るんです。」
マリーナはそこまで言って立ち上がる。
金の光を鋭くして、イダを見た。
今までイスフィールと話していた穏やかな目とは明らかに違う。
「イスフィール様を傷つける者は、私が許さない。」
イダが小さくうめいた。
自分で操っていたのに、そのことがきっかけで敵の仲間になってしまったのだから。
「ふん…おもしろいじゃん。」
くやしまぎれとしか思えないが、つぶやくイダにイスフィールは向き直った。
「でもね、マリーナ。非力な君に何が出来んのさ?」
再びイダはクモの糸を使って攻撃を仕掛けてくる。
それに、アリーナは笑った。
「非力ですって?」
動こうとも何もしないで、ただ笑う。
マリーナは続けて言った。
「私達ステライト家は、守りし者と共にいることで力を得るんだって話、知ってる?で、私はステライト・マリーナ。守りし者は――イスフィール様。守りし者と一緒にいる私の、どこが非力なの?」
スーッとイダの顔が青ざめていく。
目の前に迫った糸を、マリーナは片手で掴んだ。
僅かな割れる音とともに、クモの糸は消えた。
「イダさん。覚悟は出来てますか?」
マリーナは微笑した。
そしてイスフィールの方を振り向く。
「イスフィール様。――反撃、といきますか。」