7.闇の毒グモⅠ
楽園の薔薇
7.闇の毒グモ
<1>
「ま、そのクモを見てたら分かると思うけど。」
少年は顔を少し真剣にしていった。
「名前は…」
(薔薇姫様。彼の名前はイダです。毒グモを操ることが出来る闇の――。)
「そうだよ。僕は闇の部官の1人。リラノ・イダっていうんだ。よろしくね、薔薇姫様。」
イスフィールは驚いて言葉をなくした。
「イダ…。あなた、カリスの言葉が聞こえるの?」
「カリス?ああ、最初の薔薇姫様ね。ペンダントの中にいたんだぁ…。すごいね。」
琥珀色の目を細めたまま歩き出す。
イダはイスフィールの前に立った。
「…君は、まだ芽のままか…。でも、カリスに気付いたってことは本物だね…。」
言いながらペンダントに手を伸ばしてきた。
イスフィールは逃げようとするが、足が鉄の塊になったように動かない。
「逃げれないよ。僕の術で君は動けない。」
「なに、それ…っ!」
イダの手がペンダントを掴み、力を込めた。
赤い光がペンダントから放たれ、辺りが夕方のようになった。
「久しぶり、カリス。君は僕らを封印したけど、また戻った。…サポートって邪魔なんだよね。」
さらに力を込めるイダ。
(いやぁあああ!!)
薔薇が赤から茶に変わっていく。
カリスの悲鳴がイスフィールの頭に響いた。
「…やめて…」
イスフィールの声がかすれた。
聞き取れなかったのか、イダが不思議そうな顔をする。
「やめて…!カリスを離して、イダ!」
イスフィールは思うまま命じた。
従うわけがないのに――イダの手はぎこちなく離れていく。
(カリス、大丈夫?」
(はい…。ありがとうございます、薔薇姫様。)
「君は…何なんだ…。まるで、あのお方のような…。」
イダが呆然と呟く。
そんなイダをイスフィールはにらみつけて言った。
「あのお方が誰だかしらないけど。私は薔薇姫。エプスタイン・イスフィール!」
イスフィールは高らかに宣言した。
「必ず――あなたを、倒す。」