6.心の闇、浄化します!Ⅳ
楽園の薔薇
6.心の闇、浄化します!
<4>
『ねえ、どこ行くの?』
『お母さんに会いに行くんだよ。』
古びた廊下を男の人に手をひかれて歩いていく。
時折転びそうになったが、なんとかある部屋の前に来た。
その扉を男の人が開ける。
『お母さん…?』
部屋に置いてあるベッドには、女の人が寝ていた。
『…あら、マリーナ…来てくれたの?』
目を細めてこっちを見る。
やせた指からは、自分に向けての優しさでいっぱいだった。
『ねえマリーナ…。大切な人は見つかった?』
『…ううん…まだ。』
『そう。…早く見つけて、守るのよ。』
何回も言われてきた言葉。
大切な人が何のことだか、分からなかった。
急に頭に乗せていた手が重くなる。
『母さん?…ねえ、お母さんってば!』
それきり、母の体は動くことがなかった。
* * *
カサ、と音がして、マリーナのローブから何かが落ちた。
イスフィールは手を下ろす。
マリーナはその場に倒れた。
(薔薇姫様。浄化、成功ですよ。)
ペンダントからカリスの意思が送られてきた。
(うん…。)
疲れて、それしか返せない。
さっきローブから落ちた物を見ていたセイレーンが、「うわっ」と声を上げる。
「どしたの?」
「…これクモだ。」
赤ちゃんのこぶしぐらいはある。
イスフィールは思わず後ずさった。
「しかも、毒グモじゃねぇか。」
レイアースも覗き込む。
ふいに後ろから声がかかった。
「あ、君、薔薇姫さんなんだぁ。なるほどねー。」
聞いたことのある声に振り向くと、少年が1人立っている。
暗闇なのに、少年の銀髪が光っていた。
「約束だよね。僕の事、教えてあげるよ。」
その少年はにっこりと微笑した。