6.心の闇、浄化します!Ⅱ
楽園の薔薇
6.心の闇、浄化します!
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声の発信源はイスフィールだった。
「人の心を持たない人なんていないわ!あなたのようなその感情も、人ならば必ずある心だもの!」
『必ず…ある心…?」
マリーナは復唱する。
イスフィールはさらに言いつのった。
「あなたがこっちに来て何があったか。私は全然知らないわ。でもね、嫌なことばっかりじゃないでしょう?」
タロットを混ぜるマリーナの手が止まった。
「そのタロットカードだって、そういう使い方じゃないはず。違う?」
『あの人達は、こっちにあった私達の家を燃やした。誰だか分からないから、そこらの貴族を捜した。―――それでも、見つからなかった…。』
声が恐ろしいものから、幼い少女の声に変わっていく。
『でも、村人達は優しい。私達をかくまってくれた。――それが間違いだったんだ。村を追い出されたんだ、やさしい、人なのに…。』
マリーナはいやいやと首を振った。
これ以上、迷惑をかけたくなかったことは、その場の全員分かりきっていた。
「誘いに乗ってしまったのね。闇の人からの誘いに。」
『もう、いいよ…。あのころにもどりたい!』
マリーナの手からタロットカードがバラバラと落ちた。
イスフィールは一枚拾う。
『法王』のカードだ。
意味は『良い忠告・人生の転機』などである。
「もどろう、マリーナ。」
自然にイスフィールはマリーナの頭をなでた。
その手の下でマリーナは泣きじゃくる。
「イスフィール!どうするつもり!?」
セイレーンが驚いて聞く。
それに、イスフィールは得意げに言った。
「もちろん!心の闇を浄化するのよ。」